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例の
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秋も唯も気づいてないけど先輩達はこんな事を話していた。
「うーん、何というか見事な人間捕まえましたね。飲まれないと良いですねえ……結構良い勝負ですよ」
試すような口ぶりにして氷怜先輩が喉を鳴らした。けらけら笑う唯を見ながら愛おしそうに。
「知ってるよ、これでも必死だろ」
「とか言って余裕かましてるじゃないですか……今だって好きにさせてる」
菊先輩の言葉に氷怜先輩だけでなく瑠衣先輩も暮刃先輩までも笑った。赤羽さんは何も言わずにいつも通り微笑むだけだ。瑠衣先輩が椅子の上に両足を乗せ体育座りのまま菊を見上げ、ふーんと口を開いた。
「菊はさー、スキナコは閉じ込めておくタイプ?」
「え?」
突然の不穏な話に菊先輩が驚いたように瑠衣先輩を見る。こんな話をするのは珍しいのかもしれない。しかも耳に入ってきた情報がちょっと恥ずかしい。
「オレはー首輪つけて見せびらかしたいタイプー。暮ちんはー、んー、閉じ込めても良いけど3人とも気に入ってるからじゃれさせてるタイプでー……」
「ちょっと、瑠衣」
暮刃先輩見破られてますよ。
俺はまた新たに話しかけられた男の先輩とブランドの話をしながら耳だけをそちらに向けていた。
「ひーは?」
「お前らと同じで美味しくなるの待ってんだよ」
氷怜先輩の答えに瑠衣先輩が爆笑し、暮刃先輩が呆れている。そんな反応してるけど氷怜先輩の言う通り同じようにマテをしているのは明確だ。もちろん、そんな感情だけではなく優しさと大人の上で成り立っている。
それでも別に良いのに、と思ってしまうのは俺だけじゃ無いと思う。唯だって恥ずかしがるけどどうせ断らない筈だ。あんな可愛くても男らしさは誰よりもある。
例えが食べ物にされていても嫌な気分にならないのは惚れた弱みだろうか。
「まじですか、驚いたな。そんなベタ惚れなんですね」
「お前だってもう少し話したら分かる、どうせ」
俺たちはそんなに変わっているのだろうか。好きなことを突き通す、それに関しては譲れないものはあるけど。ぼんやりと考えていたら、いつのまにかブランドの話から暮刃先輩たちの話に移っていた。
「マジですごい気に入られてるよな、お前ら。俺あの人達が誰かを教室に連れてきたの初めて見たもん。いつも誰かが頭下げてお伺い立ててる」
「え?」
そうか、そうなんだ。いや、納得して良いのだろうか。誰も連れてこないの?今三年生なのに?あんなに人脈と憧れと全てを持った人たちが。もしかして一緒に教室に入るとしたら、女性達がその隣を歩くくらいなのだろうか。あとは赤羽さん達チームの人達が呼び出すわけにも行かないと会いに行くくらい……?
「どうした?」
「いや、あの……でもここのクラスの人達仲良いですよね」
「んー、でもやっぱりあの人たち格別だしなぁ」
そう答えられたらもう、俺の思考は1つの推論を導き出していた。いや、ちょっとふざけていたけど。
「先輩達ってもしかして友達いない……?」
ちょっとしたいたずら心のつぶやきのつもりが、何故かしんとした教室を作ってしまい、それはもちろん当の本人に届くことになる。瑠衣先輩と氷怜先輩が肩を震わせて笑いをこらえていたが窓際に寄りかかった暮刃先輩だけが腕を組み恐ろしいほど美しく笑っている。
それからはしばらくの間、帰り道は車の中を真っ暗にしてホラー映画会になってしまったので、唯と秋で横を固めて青い顔で見ている。2人はちなみに楽しんでいるから巻き添えでは無い。
そしてこの話はあの先輩達を友達いないと言った後輩として「例の」と言われる原因をプラスする。こうしてまた少し名前を広げることになったのであった。
「うーん、何というか見事な人間捕まえましたね。飲まれないと良いですねえ……結構良い勝負ですよ」
試すような口ぶりにして氷怜先輩が喉を鳴らした。けらけら笑う唯を見ながら愛おしそうに。
「知ってるよ、これでも必死だろ」
「とか言って余裕かましてるじゃないですか……今だって好きにさせてる」
菊先輩の言葉に氷怜先輩だけでなく瑠衣先輩も暮刃先輩までも笑った。赤羽さんは何も言わずにいつも通り微笑むだけだ。瑠衣先輩が椅子の上に両足を乗せ体育座りのまま菊を見上げ、ふーんと口を開いた。
「菊はさー、スキナコは閉じ込めておくタイプ?」
「え?」
突然の不穏な話に菊先輩が驚いたように瑠衣先輩を見る。こんな話をするのは珍しいのかもしれない。しかも耳に入ってきた情報がちょっと恥ずかしい。
「オレはー首輪つけて見せびらかしたいタイプー。暮ちんはー、んー、閉じ込めても良いけど3人とも気に入ってるからじゃれさせてるタイプでー……」
「ちょっと、瑠衣」
暮刃先輩見破られてますよ。
俺はまた新たに話しかけられた男の先輩とブランドの話をしながら耳だけをそちらに向けていた。
「ひーは?」
「お前らと同じで美味しくなるの待ってんだよ」
氷怜先輩の答えに瑠衣先輩が爆笑し、暮刃先輩が呆れている。そんな反応してるけど氷怜先輩の言う通り同じようにマテをしているのは明確だ。もちろん、そんな感情だけではなく優しさと大人の上で成り立っている。
それでも別に良いのに、と思ってしまうのは俺だけじゃ無いと思う。唯だって恥ずかしがるけどどうせ断らない筈だ。あんな可愛くても男らしさは誰よりもある。
例えが食べ物にされていても嫌な気分にならないのは惚れた弱みだろうか。
「まじですか、驚いたな。そんなベタ惚れなんですね」
「お前だってもう少し話したら分かる、どうせ」
俺たちはそんなに変わっているのだろうか。好きなことを突き通す、それに関しては譲れないものはあるけど。ぼんやりと考えていたら、いつのまにかブランドの話から暮刃先輩たちの話に移っていた。
「マジですごい気に入られてるよな、お前ら。俺あの人達が誰かを教室に連れてきたの初めて見たもん。いつも誰かが頭下げてお伺い立ててる」
「え?」
そうか、そうなんだ。いや、納得して良いのだろうか。誰も連れてこないの?今三年生なのに?あんなに人脈と憧れと全てを持った人たちが。もしかして一緒に教室に入るとしたら、女性達がその隣を歩くくらいなのだろうか。あとは赤羽さん達チームの人達が呼び出すわけにも行かないと会いに行くくらい……?
「どうした?」
「いや、あの……でもここのクラスの人達仲良いですよね」
「んー、でもやっぱりあの人たち格別だしなぁ」
そう答えられたらもう、俺の思考は1つの推論を導き出していた。いや、ちょっとふざけていたけど。
「先輩達ってもしかして友達いない……?」
ちょっとしたいたずら心のつぶやきのつもりが、何故かしんとした教室を作ってしまい、それはもちろん当の本人に届くことになる。瑠衣先輩と氷怜先輩が肩を震わせて笑いをこらえていたが窓際に寄りかかった暮刃先輩だけが腕を組み恐ろしいほど美しく笑っている。
それからはしばらくの間、帰り道は車の中を真っ暗にしてホラー映画会になってしまったので、唯と秋で横を固めて青い顔で見ている。2人はちなみに楽しんでいるから巻き添えでは無い。
そしてこの話はあの先輩達を友達いないと言った後輩として「例の」と言われる原因をプラスする。こうしてまた少し名前を広げることになったのであった。
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