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とある男子会
とある男子会
しおりを挟むその通り。
正直、タイプのドンピシャだった。
控え室にいる唯のあの手つきと表情を思い出す。加えて女性と話す唯が見せたギャップのある笑顔が胡蝶の心臓を貫いた。
「何にやけてんだよ胡蝶」
可愛い顔の割に気の強いイノがスマホを見て笑った胡蝶を怪訝そうに見る。
「いや、氷怜に唯の連絡先教えてって言ったらさ、お前の好みだし、好みじゃなくても教えないってきて思わず」
「あいつそんなキャラだったんだな……ていうか堂々と手ェ出すなよ」
「だって可愛いじゃない」
にっこりと笑った胡蝶にイノは顔を引きつらせた。なんでも器用にこなす胡蝶のこいうところだけは慣れない。むしろ器用過ぎて物事が上手くいきすぎる事が多いせいか見境がない。特に色恋においては。
「イノだって唯誘おうとしてる」
「俺はお仕事だよ」
とは言いつつも唯のあの笑顔と可愛い顔のギャップには少しやられた事は隠しきれない。その隣で鹿野がメガネを外し、あーでもとつぶやく。
「唯も気に入ったけど、俺は秋と優も面白かったな」
「さすが唯の友達って感じあるよな」
あんな騒ぎがあったと言うのに、最後には軽やかにまた遊びに来ますと笑うのだから大したものだとイノは思う。
胡蝶がそれはそれでと思案しだした。
「あの子達も可愛かったなぁ。暮刃と瑠衣が目をつけるのもよく分かるね」
「そこに手ェ出すのものやめろよな……」
イノにしてみればもし仮に唯達3人の誰かにちょっかいを出したとして、氷怜のようなストレートな人間はまだ想像はつくが、暮刃や瑠衣のような感情を前面に出さないタイプの怒りに触れたくはないから本気でも無い限りちょっかいなど出さないだろう。
ましてや瑠衣はあの日、秋が殴られた黒スーツを倒すだけでは飽き足らず、狂った男を今にも噛み砕きそうな勢いで睨んでいたのだから。初めて見た本気の怒りだ。暮刃が止めなかったらどうなっていたか分かったものではない。
その暮刃もブチ切れに近かったが。
そんな心配は微塵も感じないのか胡蝶は続ける。
「まあ、俺は可愛い子はみんな好きだよ……イノもかなりタイプ」
「それ言われるたびに寒気が走るわ」
「性格は可愛くないけど」
「これが売りなんだよ!」
可愛いの中の男らしいところが好き。そう言われることが多い。これがイノが突き詰めたアピールポイントである。もちろんそれだけではなく身につけた会話も、もてなし方も功を成したお陰で今のところNo. 1の座に輝いている。
No.2の男がため息をついた。
「あーあ、唯お店に来ないかなぁ。接客して落としたい」
「……胡蝶お前は一回、痛い目見たほうがいいな」
「実を言うと氷怜に聞く前に唯の連絡先はサクラさんに教えてもらってるんだよね」
「代表……」
あの人のことだから、胡蝶が唯の事タイプなのは知っているがお店に引き寄せるきっかけとなれば良いとでも思ったのだろう。
鹿野が苦笑した。
「まあ、流石に番犬が稼働するだろな」
「それはそれで楽しそうだよね」
飛んだ捻くれ方にイノは呆れた。しかし続いた鹿野の言葉に驚愕する。
「でも秋と優来るなら、俺も行くかな」
「え……鹿野まさか」
「ちょっと、面白そうだったから」
鹿野は1番合理的で丁寧に慎重に物事を進めるタイプだ。それなのに、そんな男が欲で動こうとしている。
「待て待て、鹿野お前はこっち側だろ」
「たまにはいいなと思うものに、素直に近づいても良いかなって」
「だからあいつらにはこわーい番犬が居るんだぞ!しかもこの街どころか全国的に有名なほどのヤバイ奴らが!」
焦ったイノが必死に叫ぶも胡蝶は優雅に微笑むだけだ。
「じゃあイノ俺とデート行く?」
「いかねぇよ……」
俺だけはしっかりしよう。
そう思ったイノだった。
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