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ひとりっ子は思う
ひとりっ子は思う
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「は~~ツカレター」
「お疲れ様でーす」
顎がおれの頭に乗せられる。正座しているおれを後ろから抱きしめる瑠衣先輩はお疲れ気味だ。おそらくうなだれているはずの頭を撫でる。
「疲れたなんて言うのめずらしいですねぇ」
「唯ちん、オレはねこれでも繊細ナノよ」
瑠衣先輩は犬にも見えるし猫要素も強い。寝起きに背伸びする姿やじゃれたと思ったらひょいとどこかに行く。撮影に出ていたと言う瑠衣先輩がちょうど先にひとりでクラブに来ていた時に戻ってきた。
長丁場だったのかぐったりとしている。
「瑠衣先輩はどうしてモデル始めたんですか?」
「んー親がカメラマンだったから?」
「え、そうなんすか!」
瑠衣先輩の両親も驚くくらい美人なのだろう。
VIPルームの部屋にはついにおれ達の用のお菓子が常備され始めた。あとジュースとお茶が好きと言ったら紅茶に緑茶とソフトドリンクも増え天国がさらに進んでいく。
まさしく至れり尽くせり。
その1つのクッキーをつまんで口を開けて待つ瑠衣先輩にあげれば耳の横で噛み砕く音が響いてくすぐったい。
「オレさー」
「はいー?」
「アッキーいるからこうやって人とじゃれ合うことが無くなるって思ったんだけど」
「はい?」
「フツウってものにならないとって思ったんだけど、唯ちん達3人がフツウじゃなかったのか、オレがフツウじゃないのか」
「え?」
まったく話が読めない。
じゃれ合わない。フツウじゃない。誰がなにに。
独り言と間違えそうなトーンで瑠衣先輩は話を続ける。
「今こうしているところをアッキーに見られても唯ちんはなんとも思わない。アッキーもなにも思わない」
「なにを思うんですか?」
「エー……それ本気で言ってる?」
質問で質問が返ってきてしまった。つまりなんだろう、立場を変えて考えてみた。今みたいに氷怜先輩が秋を足の間に座らせて項垂れている。それをみておれは?
「可愛いって思う」
「は?」
「今みたいに氷怜先輩が秋に甘えてたら可愛いです。疲れてる先輩を励ます秋も可愛い。それにおれ、今の瑠衣先輩可愛いって思ってます。だから秋もそう思うと思います」
はじめておれは瑠衣先輩の眉間にシワがよるのをみた。嫌悪ではなく処理しきれないことを言ってしまったらしいそんな顔だった。首だけ瑠衣先輩に向けていたので体ごと向きやって体育座りに姿勢を変えた。
「瑠衣先輩はどう思います?」
「…………ひーは可愛くはない」
「ぷっ」
いつもユルーイノリでかわい~~とか言ってくる瑠衣先輩が嫌そうに話すので思わず吹き出した。そうか、なるほど言いたいことがわかった。
「瑠衣先輩がおれたちにじゃれても秋は気にしないから、あ、いいんだって思ったわけですね」
「そんなトコ」
背中に回された腕に力が入る。ふむ、そうか嫉妬いうやつがあるのか無いのかそういうところを気にしたと。
瑠衣先輩って本当はかなり真面目だ。
「先輩達って死ぬほど遊んでたのになんかめちゃくちゃギャップ萌がすごすぎるし先輩達そういうところ好きー!」
「……ソレ、他人に言ったらダメね」
「ええでも愛も友情も言わないと伝わらないですよ」
「うーん、まあいいカ~」
「ん?」
そいうのはひさとに任せるから~と深く話が進むことはなかった。
「マジメって言うけど、それなりに人に言えないアソビしてきたよーオレ」
「これだけ綺麗でかっこよかったら色々ありそうですよね」
「怒んないだ」
「遊ばれるの覚悟の人も多そう」
「まあね~」
瑠衣先輩は笑いながらおれの頬をつつく。とそのまま力を抜いておれに完全に寄りかかる。
「でもこうやってダラダラするのが嫌じゃないってことは瑠衣先輩も同じ部類ですよおれたちと。氷怜先輩と暮刃先輩とだって元々距離感近いですし」
「んーまあネ。でも知らないヤツがアッキーに抱きついてたら骨折るよ」
「うわあ、本当に骨折るんだろうなー。えーと、せめて悪意のある人だけにしましょ!」
なんとなく居たたまれなくなった。見知らぬ誰かアーメン。きっとオレの力では止められない。
この会話で想像したおれは登場人物がみんな犬になっていた。あのワンダラの犬に成り代わったみんな。
「あれですね。おれはこの関係はみんなが飼い主だったり愛犬だったりするなって思います」
「はあ?」
「みんな可愛くて、みんなかっこよくて、みんな大好きなんです。だからおれは安心してこうやって身を任せられるし誰が誰といたって幸せです」
かけられた体重はそのままに静かに聞いている瑠衣先輩の背中を撫でながらさらに続ける。
狼のような安心感のあるあの背中を想像した。
「その中でまた少し違った繋がりがおれにとって氷怜先輩だったりした。そんな感じですね」
なるほどねぇとだけ静かに言われたまま先輩が動かなくなった。おれも背中を撫で続けているとしばらくして眠くなってきた。感覚が沈み始めたらもう夢の中。
VIPルームに戻った秋と優がひそひそと話していたので暮刃と氷怜が首をかしげる。
「何してんだ?」
そんなに大きな声ではなかったが、秋と優が人差し指を立ててシーっとサイレントの意思表示。音を立てずに近づけば氷怜と暮刃が笑った。
「ブランケット掛けてやれよ」
返事をすれば下にいると出て行ってしまった。秋と優だけが残ると静かにスマホを取り出す。
「この2人って同じ可愛さがあるよね」
「それひとりっ子の特有の可愛さってやつ?」
パシャリと音がなってしまい2人が身じろいだ。
唯を抱き枕がわりに抱きしめたままソファで小さく眠っている瑠衣を秋が写真に納めると、そっとブランケットを掛けた。2人とも身じろいだのも一瞬、暖かさですぐに穏やかな寝息に変わる。
「ね、可愛い」
「お疲れ様でーす」
顎がおれの頭に乗せられる。正座しているおれを後ろから抱きしめる瑠衣先輩はお疲れ気味だ。おそらくうなだれているはずの頭を撫でる。
「疲れたなんて言うのめずらしいですねぇ」
「唯ちん、オレはねこれでも繊細ナノよ」
瑠衣先輩は犬にも見えるし猫要素も強い。寝起きに背伸びする姿やじゃれたと思ったらひょいとどこかに行く。撮影に出ていたと言う瑠衣先輩がちょうど先にひとりでクラブに来ていた時に戻ってきた。
長丁場だったのかぐったりとしている。
「瑠衣先輩はどうしてモデル始めたんですか?」
「んー親がカメラマンだったから?」
「え、そうなんすか!」
瑠衣先輩の両親も驚くくらい美人なのだろう。
VIPルームの部屋にはついにおれ達の用のお菓子が常備され始めた。あとジュースとお茶が好きと言ったら紅茶に緑茶とソフトドリンクも増え天国がさらに進んでいく。
まさしく至れり尽くせり。
その1つのクッキーをつまんで口を開けて待つ瑠衣先輩にあげれば耳の横で噛み砕く音が響いてくすぐったい。
「オレさー」
「はいー?」
「アッキーいるからこうやって人とじゃれ合うことが無くなるって思ったんだけど」
「はい?」
「フツウってものにならないとって思ったんだけど、唯ちん達3人がフツウじゃなかったのか、オレがフツウじゃないのか」
「え?」
まったく話が読めない。
じゃれ合わない。フツウじゃない。誰がなにに。
独り言と間違えそうなトーンで瑠衣先輩は話を続ける。
「今こうしているところをアッキーに見られても唯ちんはなんとも思わない。アッキーもなにも思わない」
「なにを思うんですか?」
「エー……それ本気で言ってる?」
質問で質問が返ってきてしまった。つまりなんだろう、立場を変えて考えてみた。今みたいに氷怜先輩が秋を足の間に座らせて項垂れている。それをみておれは?
「可愛いって思う」
「は?」
「今みたいに氷怜先輩が秋に甘えてたら可愛いです。疲れてる先輩を励ます秋も可愛い。それにおれ、今の瑠衣先輩可愛いって思ってます。だから秋もそう思うと思います」
はじめておれは瑠衣先輩の眉間にシワがよるのをみた。嫌悪ではなく処理しきれないことを言ってしまったらしいそんな顔だった。首だけ瑠衣先輩に向けていたので体ごと向きやって体育座りに姿勢を変えた。
「瑠衣先輩はどう思います?」
「…………ひーは可愛くはない」
「ぷっ」
いつもユルーイノリでかわい~~とか言ってくる瑠衣先輩が嫌そうに話すので思わず吹き出した。そうか、なるほど言いたいことがわかった。
「瑠衣先輩がおれたちにじゃれても秋は気にしないから、あ、いいんだって思ったわけですね」
「そんなトコ」
背中に回された腕に力が入る。ふむ、そうか嫉妬いうやつがあるのか無いのかそういうところを気にしたと。
瑠衣先輩って本当はかなり真面目だ。
「先輩達って死ぬほど遊んでたのになんかめちゃくちゃギャップ萌がすごすぎるし先輩達そういうところ好きー!」
「……ソレ、他人に言ったらダメね」
「ええでも愛も友情も言わないと伝わらないですよ」
「うーん、まあいいカ~」
「ん?」
そいうのはひさとに任せるから~と深く話が進むことはなかった。
「マジメって言うけど、それなりに人に言えないアソビしてきたよーオレ」
「これだけ綺麗でかっこよかったら色々ありそうですよね」
「怒んないだ」
「遊ばれるの覚悟の人も多そう」
「まあね~」
瑠衣先輩は笑いながらおれの頬をつつく。とそのまま力を抜いておれに完全に寄りかかる。
「でもこうやってダラダラするのが嫌じゃないってことは瑠衣先輩も同じ部類ですよおれたちと。氷怜先輩と暮刃先輩とだって元々距離感近いですし」
「んーまあネ。でも知らないヤツがアッキーに抱きついてたら骨折るよ」
「うわあ、本当に骨折るんだろうなー。えーと、せめて悪意のある人だけにしましょ!」
なんとなく居たたまれなくなった。見知らぬ誰かアーメン。きっとオレの力では止められない。
この会話で想像したおれは登場人物がみんな犬になっていた。あのワンダラの犬に成り代わったみんな。
「あれですね。おれはこの関係はみんなが飼い主だったり愛犬だったりするなって思います」
「はあ?」
「みんな可愛くて、みんなかっこよくて、みんな大好きなんです。だからおれは安心してこうやって身を任せられるし誰が誰といたって幸せです」
かけられた体重はそのままに静かに聞いている瑠衣先輩の背中を撫でながらさらに続ける。
狼のような安心感のあるあの背中を想像した。
「その中でまた少し違った繋がりがおれにとって氷怜先輩だったりした。そんな感じですね」
なるほどねぇとだけ静かに言われたまま先輩が動かなくなった。おれも背中を撫で続けているとしばらくして眠くなってきた。感覚が沈み始めたらもう夢の中。
VIPルームに戻った秋と優がひそひそと話していたので暮刃と氷怜が首をかしげる。
「何してんだ?」
そんなに大きな声ではなかったが、秋と優が人差し指を立ててシーっとサイレントの意思表示。音を立てずに近づけば氷怜と暮刃が笑った。
「ブランケット掛けてやれよ」
返事をすれば下にいると出て行ってしまった。秋と優だけが残ると静かにスマホを取り出す。
「この2人って同じ可愛さがあるよね」
「それひとりっ子の特有の可愛さってやつ?」
パシャリと音がなってしまい2人が身じろいだ。
唯を抱き枕がわりに抱きしめたままソファで小さく眠っている瑠衣を秋が写真に納めると、そっとブランケットを掛けた。2人とも身じろいだのも一瞬、暖かさですぐに穏やかな寝息に変わる。
「ね、可愛い」
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