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しおりを挟む氷怜先輩と待ち合わせをしている。
正確には後から来る秋と優も待ち合わせしているんだけど、春さんカフェのバイト交代のタイミングがおれだけスムーズに出来たため一足先に上がったのだ。
繁華街にできたお店に行こうと誘われ暮刃先輩と瑠衣先輩とはお店に合流の予定で、バイト先から氷怜先輩直々に送ってくれるらしい。
明らかに高級そうなスポーツカーが大通りに止まっていた。教えてもらったとおりの白地に黒の太いラインが真ん中に一本。
ガラス越しに手を振られ、助手席のドアが勝手に開いた。なんか違和感を感じると思ったら外車だから運転席が逆なのだ。
「ん、おつかれ」
乗り込んですぐに抱きつけば頭をポンポンされる。その瞬間にほわっとした気持ちになるって母さんの椎名に話したら黄色い悲鳴をあげていた。
「秋と優もすぐ来ると思うんですけど、次のシフトの子遅れてるみたいで」
「別に急いでねぇから大丈夫だ……それよりもあいつらが飲み過ぎてないといいけどな」
「え、もう始めてるんですか?」
「朝からやってる……俺は話し合いがあったから今どうなってるかも知らねぇ」
うわあ。絶対やばいやつだ。
でもみんなそこまで酔ってるとこなんて見た事がないし、朝からでも問題ない気もする。瑠衣先輩は多少よってもあのテンションがさらに高くなる程度だった。
「1番強いのって誰なんですか?」
「暮刃だな。淡々と飲む」
「わあお、さすが~」
あの品の良さは365日続くのだろう。
そのうちおれたちも飲むようになるのかな。そう考えるとそれもそれで楽しそう。いや絶対楽しいなぁみんなで飲み会。やりたいなぁ、こっそりちょっとだけ、家とかでなら……。
「お前はまだダメ……」
「あれ顔に出てました?」
デコピンをもらってしまう。
全然痛くないのが愛を感じてにやけるの許してほしい。
手の動きで風が起こったのか香水の香りが鼻をくすぐる。うなじに鼻を近づけ一呼吸。優しい花の香り、少し甘い。これはいつも氷怜先輩が付けている。
「この匂いすきです。ラビーの003番」
「あたり」
ラビーは今大人気の香水ブランド、パッケージはシンプルで男女ともに使える。
ポッケからポイと渡されたそれは数センチほどのカプセル型で持ち運びやすい。ちなみに普通の形は四角でもっと大きい。
「限定版だ!」
「香水そんな付けないのによくわかるもんだな唯斗」
「バイトの日は付けられないですからね。数は結構持ってますよ。あとはイイ匂いしてたら絶対聞いたり……先輩のクラブ行くようになってからは色んな人に教えてもらって特に知識が!」
嬉しくて拳を握ったおれをハンドルに寄りかかりながら見ていた氷怜先輩。
ふーんとニヒルに笑ったと思ったら、いきなり抱き寄せられた。びっくりして固まったところで首筋にあたりにプシュといつのまにか取り上げられた香水の音。
「へ」
よくわからない事態だが後ろからコツコツと音がして助手席の窓を振り返った。
「そういうのは見えないとこでやって下さーい」
「あれー居たなら声かけてよ」
ガラス越しに秋が手を添えてメガホンのように話しかけていた。優も腰に手を当てて呆れ顔。2人一緒に上がれたみたいだ。
氷怜先輩は来ていたのに気づいていたらしい。喉で転がすように笑いながら後ろのドアを開けた。
「お待たせしました氷怜先輩!」
「氷怜先輩の車カッコイイ……」
「お前らもおつかれ」
2人が綺麗にありがとうございますと返事をする。突然騒がしくなった気がするこの感じが好きだ。
「あれ」
突然秋がくんくんと鼻を効かせた。
「香水かけました?」
「ああ……」
静かに発車したスポーツカー。
後ろも見ずにおれだけしか見えない角度で色男が笑った。
「マーキング」
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