sweet!!-short story-

仔犬

文字の大きさ
上 下
12 / 189
marking

marking

しおりを挟む

氷怜先輩と待ち合わせをしている。

正確には後から来る秋と優も待ち合わせしているんだけど、春さんカフェのバイト交代のタイミングがおれだけスムーズに出来たため一足先に上がったのだ。

繁華街にできたお店に行こうと誘われ暮刃先輩と瑠衣先輩とはお店に合流の予定で、バイト先から氷怜先輩直々に送ってくれるらしい。

明らかに高級そうなスポーツカーが大通りに止まっていた。教えてもらったとおりの白地に黒の太いラインが真ん中に一本。

ガラス越しに手を振られ、助手席のドアが勝手に開いた。なんか違和感を感じると思ったら外車だから運転席が逆なのだ。


「ん、おつかれ」


乗り込んですぐに抱きつけば頭をポンポンされる。その瞬間にほわっとした気持ちになるって母さんの椎名に話したら黄色い悲鳴をあげていた。

「秋と優もすぐ来ると思うんですけど、次のシフトの子遅れてるみたいで」

「別に急いでねぇから大丈夫だ……それよりもあいつらが飲み過ぎてないといいけどな」

「え、もう始めてるんですか?」

「朝からやってる……俺は話し合いがあったから今どうなってるかも知らねぇ」

うわあ。絶対やばいやつだ。
でもみんなそこまで酔ってるとこなんて見た事がないし、朝からでも問題ない気もする。瑠衣先輩は多少よってもあのテンションがさらに高くなる程度だった。


「1番強いのって誰なんですか?」

「暮刃だな。淡々と飲む」

「わあお、さすが~」

あの品の良さは365日続くのだろう。

そのうちおれたちも飲むようになるのかな。そう考えるとそれもそれで楽しそう。いや絶対楽しいなぁみんなで飲み会。やりたいなぁ、こっそりちょっとだけ、家とかでなら……。

「お前はまだダメ……」

「あれ顔に出てました?」


デコピンをもらってしまう。
全然痛くないのが愛を感じてにやけるの許してほしい。

手の動きで風が起こったのか香水の香りが鼻をくすぐる。うなじに鼻を近づけ一呼吸。優しい花の香り、少し甘い。これはいつも氷怜先輩が付けている。

「この匂いすきです。ラビーの003番」

「あたり」

ラビーは今大人気の香水ブランド、パッケージはシンプルで男女ともに使える。
ポッケからポイと渡されたそれは数センチほどのカプセル型で持ち運びやすい。ちなみに普通の形は四角でもっと大きい。


「限定版だ!」

「香水そんな付けないのによくわかるもんだな唯斗」

「バイトの日は付けられないですからね。数は結構持ってますよ。あとはイイ匂いしてたら絶対聞いたり……先輩のクラブ行くようになってからは色んな人に教えてもらって特に知識が!」

嬉しくて拳を握ったおれをハンドルに寄りかかりながら見ていた氷怜先輩。
ふーんとニヒルに笑ったと思ったら、いきなり抱き寄せられた。びっくりして固まったところで首筋にあたりにプシュといつのまにか取り上げられた香水の音。

「へ」

よくわからない事態だが後ろからコツコツと音がして助手席の窓を振り返った。

「そういうのは見えないとこでやって下さーい」

「あれー居たなら声かけてよ」

ガラス越しに秋が手を添えてメガホンのように話しかけていた。優も腰に手を当てて呆れ顔。2人一緒に上がれたみたいだ。

氷怜先輩は来ていたのに気づいていたらしい。喉で転がすように笑いながら後ろのドアを開けた。

「お待たせしました氷怜先輩!」

「氷怜先輩の車カッコイイ……」

「お前らもおつかれ」

2人が綺麗にありがとうございますと返事をする。突然騒がしくなった気がするこの感じが好きだ。

「あれ」

突然秋がくんくんと鼻を効かせた。

「香水かけました?」

「ああ……」

静かに発車したスポーツカー。
後ろも見ずにおれだけしか見えない角度で色男が笑った。


「マーキング」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

義兄に寝取られました

天災
BL
 義兄に寝取られるとは…

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川パナ
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

処理中です...