sweet！！-short story-

男の子とか女の子とか

2

「あ、スーパー寄ってもいい？」

帰り途中、唯がそう言うのでなにも予定がない俺たちは当然頷いた。こいつ料理とかするんだなとぼんやり考えながら蒸し暑い外から冷房の効いたスーパーに入り込む。半袖のシャツだとどちらかと言えば寒い。



「料理すんの？」

「うん、おれ家事担当」

結んだ髪の毛がピョコっと揺れるたびに妹を見ている気分になる。妹がやって可愛いものを目の前の中学男子がやっているのに似合っているのも変な話だった。
なんなら自分を俺と言っていることが違和感のある顔で唯はカートににカゴを乗っけて手慣れた様子で店内を進んで行いった。


マンションから近いこのスーパーはそれなりに広い。古そうでも新しそうでもないどこにでもあるスーパー。
中学男子だけでスーパーにいるなんて変な感じだ。

まずは近場の野菜コーナーでぽいぽいとカゴに入れていき、果物のあたりで悩んでいる。早口で何かブツブツ言っていた。

「りんごとバナナ……食物繊維ビタミンCカリウムポリフェノールと……」

「え、なに呪文？」

驚いた俺に唯が栄養の話と笑った。食べ物見て栄養素思い出すって凄いな。


「唯は健康オタク？」

優が顎に手を当てて首を傾げて推理のポーズ。優は最初の壁こそ乗り越えれば意外と物事をはっきり伝えるし、興味のあることはちゃんと聞く性格と言うのは割りとすぐに分かった。

唯はそれも間違いじゃないけどねと笑ってこう答えた。


「どちらかと言えば美容オタク！」

「うーん、なんか納得」


俺には全くわからなかったけど優は満足したようだ。

その間も唯は迷うことなくお目当てのものを探していく。カゴには白菜に豚バラ、えのき人参長ネギ……白菜の時点で、ん？と思っていたが最後に掴まれたコラーゲン鍋の素で決定打。

バーンとそれを俺たちに見せてくると小さな体が胸を張った。

「そんなおれは、椎名の美容のために今日はコラーゲン鍋！」

「この暑い中鍋？」

「いや待って、椎名ってだれ？」


それぞれが色んなところに突っ込めば、コラーゲン鍋には突っ込まないの？と唯がずれたことを言い始める。
俺は美容の知識が全くなので、正直コラーゲン鍋の価値がよくわからんがパッケージの写真はひどく美味しそうにみえた。


味が気にるおれ、椎名が気になる優。それを悟った唯。




「……ウチくる？」

「いく？」

「いく？」





控えめな番組になりそうだ。