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笑って誤魔化したくなるほど
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しおりを挟む「あ、みて」
「あらら、まったく警戒心って言葉刺さらないよね、あの子達」
唯が自分の唇に指を当てて目の前の女の子に顔を近づける。女の子達はこぞって唯の唇を触った。唯はその子たちに可愛いとふんわり笑い、その手を取ってハンドクリームを塗り始めた。手で温めてから優しく掌、手の甲へ。指を一本ずつ丹念に撫でていく。塗り方まで完璧だ。
パッと両手を離して終了のポーズ。自分の手を触ってみてと促していた。
手を塗られている間、女が唯の顔を見つめていたなと暮刃は気づく。ハンドクリームのことなどもう頭にはなさそうだった。唯にとってこの一連になんの下心もないのだから氷怜はさぞ苦労するだろう。暮刃は少し眉を下げた。
「変に色気持ってるよね、唯くん」
「……そうネ~」
「今は可愛いが勝るけど、そのうち化けるんじゃないかな」
「あの子たち身長まだ伸びてるんだってよ」
「今のサイズ結構好きなんだけどなぁ」
抜かされることはなさそうだが、世間一般の女の子にとってはちょうど良い身長になるかもしれない。そう考えるとまた喜ばしくはない。
「うかうかしてられないってこう言う時に言うのかな」
「うーわ、暮ちんからそんなこと聞くなんて、ワタシビックリー!」
瑠衣はもともと会話に変な盛り上がりをつける男だったが最近それにあの子達の騒がしさがプラスされたように感じる。
「はいはい。ん、これで当面のお金は良いかな」
「んー、株?儲かった?」
「まあまあ」
カチカチとリズムの良いタイピングをして最後にパソコンを閉じる。
この世界もお金が必要だ。一介の高校生とは言えやろうと思えばいくらでも上に行ける。いろんなやり方で駒を動かし自分が動ける範囲が増えていく感覚がたまらなく楽しい。
「細かいことは暮ちんにお任せ~~」
「おまえだって頭使えるんだからやれば良いのに」
「俺は優先順位が違うから~~」
瑠衣の優先順位は基本的にケンカ、遊び、楽しさに繋がることである。暮刃とは全く真逆の性格だがバランスが取れるのは何故だろう。今更ながら不思議に思う。お互いが好きに出来る環境がたまたまできたのだろうが、それだけではないような気がする。腐れ縁とはそういうものか。
「あ、ほら3人で集まった」
「あんまり覗くのは良くないな……」
とは言いつつみてしまうのは、惚れた性だろう。
唯が女の子たちと別れた後、空いた席に座ろうと秋と優が寄ってきた。いつもあの子たちは並んで座る時に唯を真ん中に挟んで座る。無意識だと思うが安心する構図なのだろう。
クリームソーダを持ってきていた優に唯が口を開けてちょうだいと催促。なんの迷いもなく口に運んであげていた。秋はソーダが飲みたかったらしく、差し出されたグラスからストローを借りて飲んでいる。
「ほーんと仲良いよネェ」
「あれは癒されるよね」
動物の可愛い映像でも見ている気分に近い。愛する人はいるがあの3人はまとめて大切にしたいと思う。そんな風に人となりに惹かれているのだから、暮刃自身も驚いている。今まで体験したことのない感情だった。
「……ねぇ、下行ってくる~~」
「そう、行ってらっしゃい」
「暮ちんもあれいいのー?」
立ち上がった瑠衣が人差し指で窓を指す。その先には数人の男が唯たちを囲んでいた。チームのものではない。
過去のことを良く知らない客だろう。唯たちに飲み物を差し出しているがあれは酒だ。
今日は土日なので彼らは私服。いつもは可愛いが私服のセンスが抜群のおかげで今日は大人びた魅力が増す。
キョトンとした唯達だがお酒はいらないと手を振った。しかし無理やり持たされてしまう。
「手が焼けるほど可愛いな……」
「可愛いケド、オレはそろそろ首輪つけようかなぁ」
物騒なことを言い出す瑠衣が冗談半分に話す。それはつまり半分は本気だ。
「どうせつけるならわかりやすいものにしたら」
「いいヤツ考えとくよん~~」
ウィンクをゆるく決めて、瑠衣がドアに手をかける。その時、ふと窓を見れば今日他のグループとの話し合いで不在のチームのトップがちょっかいをかける男達を蹴散らしていた。
「瑠衣、待った。氷怜きた」
「ナイスタイミング~~」
氷怜の登場に男達はすぐさま逃げ消え唯がぴょんと氷怜に飛びつく。優も秋も立ち上がるとそのまま二階へあがる階段の方へと消えて行った。のちにこちらの部屋に来るだろう。
「ひー今日来ないつってたのに」
「話し合い早く終わったんじゃないの」
「早く終わらせたの間違いじゃなくて?」
瑠衣の言い直し思わず笑ってしまう。おそらくその方が確率が高い。あの子達がかなり予定を詰めていたり、こちらもタイミングが合わなかったりと今日ほとんど揃ったのも久しぶりだ。
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