72 / 74
真相究明
2
しおりを挟む
「初早希、お前何を知ってる。英羅と何を話した」
家に着いた途端強引にリビングまで連れて行かれた初早希はいきなり言われたこの質問にも予想をつけていた。
やっぱりだ。あの知秋が俺を自分から呼び出すなんて高校の時だって一度もない。人生で初めてだ。
もちろんその理由は他ならない英羅の事に決まっている。
「んーと、何がだ?」
当然初早希としてはとぼける他なかった。
3人の事はある程度の予想はつく関係だが、あくまで予想は予想でしかない。自分が何を発言したら地雷を踏み、はたまた好転するのかそこの予想は全くもって分からない。
ただとにかく英羅の辛そうな顔が引っかかってしまっただけでお節介をしてしまった。仁王立ちの知秋に睨まれても笑って首を振るしかない。
「なんの話?てゆか知秋から仕事以外で連絡、しかも家にご招待なんて嬉しい出来事があったからスキップで来たのに相変わらず怖い顔してんなー」
「うるせえ。良いから答えろ」
「……と言われてもねえ」
知秋は案外周りを見ている。
その分面倒見が良い、限られた人間だけだが。無理矢理踏み込んでみて完全拒絶を知秋がしないという事は、初早希の好き勝手は許されているのだろうと初早希はどこかでそれをボーダーラインにしていた。
だからこそ何度もこの家に押しかけていたのだ。初早希はイラついた様子の知秋を見ながら当たり障りのないように質問をした。
「何でそんなに俺が英羅と話したことが気になるんだよ?」
あの時、英羅が知秋に脅し文句を言う様な形で俺と2人きりになる時間を作った。渋々知秋はリビングから出て行ったがやはり気になっていたのだろうが、何故今になって?
「それも今更、だいぶ経つのに」
知秋はようやく座ると足を組んだ。男前の顔が初早希には何だか少し疲れて見えた。少し間を置いて頭をかいた知秋は仕方なさげに話し出す。
「……あいつが目を覚まさねえ」
「え、何。英羅が?」
思わず前のめりになる初早希。知秋は視線だけで英羅が居る部屋を示した。
「医者にも見せてる。身体には異常はねえ」
「身体には……じゃあ、英羅は自分で、起きようとしてないって事か」
初早希の言葉に知秋は一瞬怒りを見せた。自分になのか、英羅になのか初早希には分からなかった。
「さあな……もともと英羅が不安定で寝込むのは良くあった。けど最近のあいつのパターンは初めてだ。あの昔みたいな……」
初早希が驚いたのは知秋がそんなことをさらりと自分に言ってきたからだ。出会ってからと言うもの、こんなに英羅の事を話されたことがない。お前は知らなくていい、くらいのスタンスの男だったと言うのに。
「……そんな事俺に話すなんて、知秋的に俺ってどんなことをどこまで知ってるって思ってんの?」
こうなれば初早希も言動を改めとぼけることをやめた。英羅に盲目的だが来夏に比べて知秋はまだ周りが見える分取り乱す事が少ない。奥底の考えに見当がつかなくとも。
「知らねえから聞いてる。ただ英羅が自分から他人と話そうとしたのはお前が初めてだったし、思えばお前と会わせた次の日から英羅はいつもより様子が変だった……妙に塞ぎ込んだ日が続いて、それから……ある日突然昔の英羅みたいな明るい英羅になった」
知秋は眉間を揉む様な仕草をした。やはり疲れているのだろう。
「そしてお前は、初めてここで会った時の英羅と、今の英羅の代わりよう見ても驚かなかった」
「あら、お前俺のこと見てたりするんだなぁ知秋」
ちゃかすと当然鋭い睨みが返ってくる。初早希は笑顔を返しながら正解を探していた。
話しても良いのだろうか。
「初早希、俺が話すよ」
家に着いた途端強引にリビングまで連れて行かれた初早希はいきなり言われたこの質問にも予想をつけていた。
やっぱりだ。あの知秋が俺を自分から呼び出すなんて高校の時だって一度もない。人生で初めてだ。
もちろんその理由は他ならない英羅の事に決まっている。
「んーと、何がだ?」
当然初早希としてはとぼける他なかった。
3人の事はある程度の予想はつく関係だが、あくまで予想は予想でしかない。自分が何を発言したら地雷を踏み、はたまた好転するのかそこの予想は全くもって分からない。
ただとにかく英羅の辛そうな顔が引っかかってしまっただけでお節介をしてしまった。仁王立ちの知秋に睨まれても笑って首を振るしかない。
「なんの話?てゆか知秋から仕事以外で連絡、しかも家にご招待なんて嬉しい出来事があったからスキップで来たのに相変わらず怖い顔してんなー」
「うるせえ。良いから答えろ」
「……と言われてもねえ」
知秋は案外周りを見ている。
その分面倒見が良い、限られた人間だけだが。無理矢理踏み込んでみて完全拒絶を知秋がしないという事は、初早希の好き勝手は許されているのだろうと初早希はどこかでそれをボーダーラインにしていた。
だからこそ何度もこの家に押しかけていたのだ。初早希はイラついた様子の知秋を見ながら当たり障りのないように質問をした。
「何でそんなに俺が英羅と話したことが気になるんだよ?」
あの時、英羅が知秋に脅し文句を言う様な形で俺と2人きりになる時間を作った。渋々知秋はリビングから出て行ったがやはり気になっていたのだろうが、何故今になって?
「それも今更、だいぶ経つのに」
知秋はようやく座ると足を組んだ。男前の顔が初早希には何だか少し疲れて見えた。少し間を置いて頭をかいた知秋は仕方なさげに話し出す。
「……あいつが目を覚まさねえ」
「え、何。英羅が?」
思わず前のめりになる初早希。知秋は視線だけで英羅が居る部屋を示した。
「医者にも見せてる。身体には異常はねえ」
「身体には……じゃあ、英羅は自分で、起きようとしてないって事か」
初早希の言葉に知秋は一瞬怒りを見せた。自分になのか、英羅になのか初早希には分からなかった。
「さあな……もともと英羅が不安定で寝込むのは良くあった。けど最近のあいつのパターンは初めてだ。あの昔みたいな……」
初早希が驚いたのは知秋がそんなことをさらりと自分に言ってきたからだ。出会ってからと言うもの、こんなに英羅の事を話されたことがない。お前は知らなくていい、くらいのスタンスの男だったと言うのに。
「……そんな事俺に話すなんて、知秋的に俺ってどんなことをどこまで知ってるって思ってんの?」
こうなれば初早希も言動を改めとぼけることをやめた。英羅に盲目的だが来夏に比べて知秋はまだ周りが見える分取り乱す事が少ない。奥底の考えに見当がつかなくとも。
「知らねえから聞いてる。ただ英羅が自分から他人と話そうとしたのはお前が初めてだったし、思えばお前と会わせた次の日から英羅はいつもより様子が変だった……妙に塞ぎ込んだ日が続いて、それから……ある日突然昔の英羅みたいな明るい英羅になった」
知秋は眉間を揉む様な仕草をした。やはり疲れているのだろう。
「そしてお前は、初めてここで会った時の英羅と、今の英羅の代わりよう見ても驚かなかった」
「あら、お前俺のこと見てたりするんだなぁ知秋」
ちゃかすと当然鋭い睨みが返ってくる。初早希は笑顔を返しながら正解を探していた。
話しても良いのだろうか。
「初早希、俺が話すよ」
0
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
君が好き過ぎてレイプした
眠りん
BL
ぼくは大柄で力は強いけれど、かなりの小心者です。好きな人に告白なんて絶対出来ません。
放課後の教室で……ぼくの好きな湊也君が一人、席に座って眠っていました。
これはチャンスです。
目隠しをして、体を押え付ければ小柄な湊也君は抵抗出来ません。
どうせ恋人同士になんてなれません。
この先の長い人生、君の隣にいられないのなら、たった一度少しの時間でいい。君とセックスがしたいのです。
それで君への恋心は忘れます。
でも、翌日湊也君がぼくを呼び出しました。犯人がぼくだとバレてしまったのでしょうか?
不安に思いましたが、そんな事はありませんでした。
「犯人が誰か分からないんだ。ねぇ、柚月。しばらく俺と一緒にいて。俺の事守ってよ」
ぼくはガタイが良いだけで弱い人間です。小心者だし、人を守るなんて出来ません。
その時、湊也君が衝撃発言をしました。
「柚月の事……本当はずっと好きだったから」
なんと告白されたのです。
ぼくと湊也君は両思いだったのです。
このままレイプ事件の事はなかった事にしたいと思います。
※誤字脱字があったらすみません
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
幼馴染から離れたい。
June
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。
だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。
βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。
誤字脱字あるかも。
最後らへんグダグダ。下手だ。
ちんぷんかんぷんかも。
パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・
すいません。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる