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光芒一線
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しおりを挟む「何、してるの……」
「英羅が可愛いおねだりしてきた」
サラッと知秋が言うとどす黒いオーラがブワッと飛び出た気がする。ああ知秋何言ってくれるんだ。やべえ雰囲気の来夏に追い討ちをかけるなよ。
「ら、来夏ー、おいでー……?」
そっと両手を広げてみるも来夏は一歩も動かない。こ、怖い。下を向いたまま両手をぎゅっと握りしめどず黒いオーラで立ち尽くす来夏は何をするか分からない雰囲気だ。
そして何より、テーブルの前にタバコ。知秋に抱きついていた俺。どこから見ていたか分からないけどこれはとてもやばい。
沈黙の末、ようやく来夏は顔を上げた。
正直おしっこが漏れそうだった。笑顔に冷気を感じる。美人の微笑がまるで雪女なようだ。
「……おいで?」
いつもなら俺が手を広げると飛び込んでくるのにその俺を無視して来夏が俺を呼ぶ。
これはもう行くしか無い。恐る恐る立ち上がると知秋があーあせっかく可愛かったのにと呟いたおかげで来夏の眉がピクリと動く。刺激すんなよ馬鹿知秋?!
ようやく来夏の元まで行くと彼は俺の腕に自分の手を滑らせた。
「おはよう、英羅」
「お、おはよう、ございます……」
わざわざするいまさらの挨拶が余計に恐ろしくて、思わず顔ごと右に目を逸らすと左の頬に口づけされた。え、今?と思って視線戻すとそれが罠だとすぐに分かる。にっこり微笑んだ彼ははっきりとこう言った。
「臭い」
「ご、ごめんなさい」
「僕に隠れて吸うタバコは美味しい?」
スラスラと話す来夏はいつもとはまるで別人だ。これをメイラが作ったのだと思うと因果応報でもあるとある意味腹を括りだす。
「いや、関係なく、その喫煙者なもので欲求が……」
「それに僕には可愛くおねだりしてくれないんだ」
思わず後ろに振り向く。
「知秋のせいで根に持ってるんですが?!」
「俺が何も言わなくても根に持ってただろ、その陰険野郎は」
知秋の口の悪さも相変わらずでムカつくが今それよりも来夏をどうするかだ。ここまで怒った原因は他にもあるはず。多分あれだ。
でもこうなれば、この勢いでやってやる。
来夏の首に両手を回して擦り寄った。くそ、恥ずかしくて死にたい、後で誰かこの記憶を消してくれ。
「ごめんな寂しい思いさせて。どうしても俺が会ったことある人に会いたいんだけど、知秋にはダメって言われたんだ。なあ、来夏も……だめ?」
お前だって上目遣いしてくるんだから俺だってしていいだろう。この顔が通用するか分からないけどせっかく毎日セットして決めてんだからこう言う時に有効活用しないでどうする。怖さで震えるのを抑えて目を潤ませて来夏を覗き込む。
変わらず美しい微笑みが張り付いている。凍えるような寒さの中、赤い唇が薄く開いた。
「……英羅、これ付けようか」
腕からかちゃんと音がしたと思ったら見覚えのあるあのベルト。足枷だと思ってたけど手にもこれ付けられるんだ。
「へ……?」
「僕、仕事行くから」
そしてそのまま来夏は家を出て行ってしまった。
「あーあ、怒らせた」
立ち尽くす俺の後ろで知秋がタバコを吸っている。え、何これ。
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