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光芒一線
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「久しぶりだなぁ、知秋。相変わらず良い部屋!」
「あんまりうろちょろすんじゃねえよ……」
「はいはい、来夏は?」
「あいつは仕事」
ぶっきらぼうな知秋の声。
あと誰かの声。ここに来てから初めての人間だ。
そう、あの電話は来訪者からの電話だったのだ。しかも知秋は何にも話してくれなかったけど異様な焦り具合からして俺が会ったことがある人間なのだと悟る。
さらに数分後には初めてこの家のインターホンがなったのだ。知秋があの野郎と呟いた途端俺はいつもの部屋に投げ入れられた。
「大人しくしてろ」
手錠は外してくれたけど初めて知秋が監禁犯人らしい言葉を吐いてドアを閉めた。
しかし来夏が怒っている時に心が痛いが、これはチャンスだ。
「来夏、ごめん。でも俺2人のこと大切だからこそやるしか無いわ」
この状況でこのタイミング。チャンスは逃したくない。
どうやら仕事の話でもあるらしく邪魔は悪いかと思ったけどなんだか親しげだし、いけるのでは。まあ、もう後で怒られてもいいや。
流石に叫んでは監禁してるとか大騒ぎになって知秋の社会的地位を脅かしかねない。
取り敢えず、全力でドアに体当たりする。開くわけはないが、これはアピールだと思って窓の辺りから助走をつけて走り込んだ。
ガンッと脳まで響く衝撃でドアから跳ね返される。馬鹿みたいに痛くて思わず叫んでしまった。
「いったあああぁ」
ああ、俺やっぱり馬鹿だなぁ。こんな事しても開けてもらえるわけないんだけどやる価値はあるよなとか思いながら当たった肩をさすっているとドタドタと足音が聞こえて来る。
「英羅!!」
「うお?!」
勢いよく開いたドアから知秋が駆け込んできた。俺を抱きしめて、すぐにだめだと嘆き珍しく焦ったような顔で俺の頭をそっと押さえた。
「頭打ちつけたのか?!」
「……へ?」
なんで頭?さすってんの肩ですが。
あの知秋が泣きそうで、こんなに動揺してるのは最初にタバコ吸うって言った時以来かも知れない。
俺が慌ててもしょうがないので知秋の腕をポンポンとさする。
「ぶつけたのは肩。落ち着けって、てか良いの?ドア開けちゃって、人が……」
俺が指さした先にすでに人が立っていた。またこの真っ白な部屋でこんなに懐かしい顔に出会うことになるとは。
「は、初早希……?」
こいつは俺たち3人が同じクラスだった時、同じくクラスメートの初早希だ。
彼だけは俺の両側にいた2人の態度にも気にすることなく普通に話しかけにくる強者だった。元々高校一年の時から同じクラスで特に俺とは仲が良い。俺の家庭環境とかもなんとなく知ってるしとても話しやすい奴だった。
その彼が嬉しそうに手をあげる。
「よー英羅!久しぶり!てか知秋、英羅出て行ったってさっきお前言わなかった?」
「今話しかけんな……」
俺を会わせてしまった事が相当なダメージだったのか知秋が段々と苦悩の表情になってきた。初早希は知秋に冷たくあしらわれようが関係ない。にこにこと笑って質問を続ける。
「結局、英羅まだここに住んでんの?」
「まあ」
この飄々とした感じ、高校から変わらない。俺はちゃんと分け隔てなく色んな人と話してたけど、2人は俺以外とほぼ喋らないのにこの初早希だけはめげないというかマイペースに話しかけてくれるから2人もなんやかんや会話をしていた。
「え、てか何で初早希が」
「何でって、忘れた?俺はこいつらの仕事担当してんの。ちなみに広告会社」
「え、あ、そうか!すっげえ偶然だよなあ」
「そんな偶然忘れんなよー」
「悪い悪い」
うお、そうだよな。前会ったことあるんだから多少はコイツのことをメイラは知ってるのか。下手なこと言わないようにしないと。
それでも久しぶりの再開が嬉しくてテンションも上がってしまう。
同窓会みたいな気分だ。一度も行った事ないけどこんな感じだろう。初早希が知秋としゃがんだままの俺に立ち上がらせようと手を伸ばした。
「触んな」
知秋が俺を腕の中に閉じ込める。
この反応も懐かしすぎる。ぶっきら棒通り越して警戒心マックスになるのだ。これがまた、他人には超怖いので俺はぺしんと知秋の頭を叩く。
「知秋!まーだお前元クラスメートにそんな反応してんのかよ!」
「うわ、お前らやっぱ何もかわんねぇな……」
初早希は当時からこれに慣れっこで、しまいには軽快に笑ってくれた。本当に出会ったのがこいつで良かった。
俺は取り敢えず立ち上がりお茶を淹れることにした。知秋がくっついて離れないけど、目を瞑ってもらおう。
リビングのソファにようやく座ると、初早希は楽しげに話し出す。
高校の時はサッカー少年だったけど今はブラウンの短髪にスーツ姿がビシッと決まっている。もともと人当たりもいいから仕事もできそうだ。
「で?結局3人でルームシェア続いてんだ。本当に仲良いなあ」
「あーまあね」
監禁なのかルームシェアなのかは不明だが、それよりも俺がニートなのを同級生にはなんだか知られたくないと言うプライドが出てくる。
お茶を渡すと初早希のありがとうとにこやかな返事。俺も同時にコップに口をつけた。
「で、今何してんの?」
「グフっ……き、聞いてくれるな……」
い、痛え。視線が辛い。平日の昼間っから部屋着の俺を見て察してくれ。
「んー、あー今は何もやってない感じね。俺の周りでも結構この年齢だと転職のために辞めてるやつ多いよ~」
「あ、そう!それ!そんな感じ!」
さすが初早希、ニートへのフォローがバッチリだ。そう言えば昔から気の利くやつだった。
「あんまりうろちょろすんじゃねえよ……」
「はいはい、来夏は?」
「あいつは仕事」
ぶっきらぼうな知秋の声。
あと誰かの声。ここに来てから初めての人間だ。
そう、あの電話は来訪者からの電話だったのだ。しかも知秋は何にも話してくれなかったけど異様な焦り具合からして俺が会ったことがある人間なのだと悟る。
さらに数分後には初めてこの家のインターホンがなったのだ。知秋があの野郎と呟いた途端俺はいつもの部屋に投げ入れられた。
「大人しくしてろ」
手錠は外してくれたけど初めて知秋が監禁犯人らしい言葉を吐いてドアを閉めた。
しかし来夏が怒っている時に心が痛いが、これはチャンスだ。
「来夏、ごめん。でも俺2人のこと大切だからこそやるしか無いわ」
この状況でこのタイミング。チャンスは逃したくない。
どうやら仕事の話でもあるらしく邪魔は悪いかと思ったけどなんだか親しげだし、いけるのでは。まあ、もう後で怒られてもいいや。
流石に叫んでは監禁してるとか大騒ぎになって知秋の社会的地位を脅かしかねない。
取り敢えず、全力でドアに体当たりする。開くわけはないが、これはアピールだと思って窓の辺りから助走をつけて走り込んだ。
ガンッと脳まで響く衝撃でドアから跳ね返される。馬鹿みたいに痛くて思わず叫んでしまった。
「いったあああぁ」
ああ、俺やっぱり馬鹿だなぁ。こんな事しても開けてもらえるわけないんだけどやる価値はあるよなとか思いながら当たった肩をさすっているとドタドタと足音が聞こえて来る。
「英羅!!」
「うお?!」
勢いよく開いたドアから知秋が駆け込んできた。俺を抱きしめて、すぐにだめだと嘆き珍しく焦ったような顔で俺の頭をそっと押さえた。
「頭打ちつけたのか?!」
「……へ?」
なんで頭?さすってんの肩ですが。
あの知秋が泣きそうで、こんなに動揺してるのは最初にタバコ吸うって言った時以来かも知れない。
俺が慌ててもしょうがないので知秋の腕をポンポンとさする。
「ぶつけたのは肩。落ち着けって、てか良いの?ドア開けちゃって、人が……」
俺が指さした先にすでに人が立っていた。またこの真っ白な部屋でこんなに懐かしい顔に出会うことになるとは。
「は、初早希……?」
こいつは俺たち3人が同じクラスだった時、同じくクラスメートの初早希だ。
彼だけは俺の両側にいた2人の態度にも気にすることなく普通に話しかけにくる強者だった。元々高校一年の時から同じクラスで特に俺とは仲が良い。俺の家庭環境とかもなんとなく知ってるしとても話しやすい奴だった。
その彼が嬉しそうに手をあげる。
「よー英羅!久しぶり!てか知秋、英羅出て行ったってさっきお前言わなかった?」
「今話しかけんな……」
俺を会わせてしまった事が相当なダメージだったのか知秋が段々と苦悩の表情になってきた。初早希は知秋に冷たくあしらわれようが関係ない。にこにこと笑って質問を続ける。
「結局、英羅まだここに住んでんの?」
「まあ」
この飄々とした感じ、高校から変わらない。俺はちゃんと分け隔てなく色んな人と話してたけど、2人は俺以外とほぼ喋らないのにこの初早希だけはめげないというかマイペースに話しかけてくれるから2人もなんやかんや会話をしていた。
「え、てか何で初早希が」
「何でって、忘れた?俺はこいつらの仕事担当してんの。ちなみに広告会社」
「え、あ、そうか!すっげえ偶然だよなあ」
「そんな偶然忘れんなよー」
「悪い悪い」
うお、そうだよな。前会ったことあるんだから多少はコイツのことをメイラは知ってるのか。下手なこと言わないようにしないと。
それでも久しぶりの再開が嬉しくてテンションも上がってしまう。
同窓会みたいな気分だ。一度も行った事ないけどこんな感じだろう。初早希が知秋としゃがんだままの俺に立ち上がらせようと手を伸ばした。
「触んな」
知秋が俺を腕の中に閉じ込める。
この反応も懐かしすぎる。ぶっきら棒通り越して警戒心マックスになるのだ。これがまた、他人には超怖いので俺はぺしんと知秋の頭を叩く。
「知秋!まーだお前元クラスメートにそんな反応してんのかよ!」
「うわ、お前らやっぱ何もかわんねぇな……」
初早希は当時からこれに慣れっこで、しまいには軽快に笑ってくれた。本当に出会ったのがこいつで良かった。
俺は取り敢えず立ち上がりお茶を淹れることにした。知秋がくっついて離れないけど、目を瞑ってもらおう。
リビングのソファにようやく座ると、初早希は楽しげに話し出す。
高校の時はサッカー少年だったけど今はブラウンの短髪にスーツ姿がビシッと決まっている。もともと人当たりもいいから仕事もできそうだ。
「で?結局3人でルームシェア続いてんだ。本当に仲良いなあ」
「あーまあね」
監禁なのかルームシェアなのかは不明だが、それよりも俺がニートなのを同級生にはなんだか知られたくないと言うプライドが出てくる。
お茶を渡すと初早希のありがとうとにこやかな返事。俺も同時にコップに口をつけた。
「で、今何してんの?」
「グフっ……き、聞いてくれるな……」
い、痛え。視線が辛い。平日の昼間っから部屋着の俺を見て察してくれ。
「んー、あー今は何もやってない感じね。俺の周りでも結構この年齢だと転職のために辞めてるやつ多いよ~」
「あ、そう!それ!そんな感じ!」
さすが初早希、ニートへのフォローがバッチリだ。そう言えば昔から気の利くやつだった。
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