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異常事態

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足枷は意外にもサラッと外してくれた。
もしかしたら二人がいるから良いってことなのかもしれない。

部屋から出ると大理石のなっがい廊下にいくつもドアがあって、全て通り抜けた先に壁一面ガラスの広い空間に突き当たる。右側に大きな海外ドラマでしか見ないようなキッチンの横にテーブル。すでに料理が並べられていた。ここがダイニングらしい。

すっげーとかひっろーとかそんな感想しか出ない俺をやはり2人は眉を寄せながら観察するように着いてくる。

席に座るとどちらが横に座るかで喧嘩をし出したので2人とも前に座らせる。そしたらどちらが前かで喧嘩を始めたので2人の前の尚且つ真ん中に座る事にした。相変わらずだ。

テーブルの料理はやっぱり肉で、しかもホテルの豪華フルコースみたいなやつでもう最高だった。とにかく頬張っていくとやっぱり驚いた顔というか困惑の顔の二人がいる。それでも一通り食べ終わり腹が満たされてから、落ち着いて質問をスタートさせた。

正直何を聞いても何を言っても2人は怪訝な顔をするのでそこはスルーする。まず確かめたいことから全て聞いていく。

「えーと、だな。まずここは何?」

「......何言ってんだ?」

「あーごめん。なんか俺さっきから二人にとって変なこと言ってるみたいな顔してるけど、話進まないからいったん質問に答えてほしいな」

笑ってそういうと来夏が先に俺の質問に答えた。

「……ここは僕とコイツが持っている家」

「ふーん、良いとこ住んでんだな。都心?」

「……うん」

「どこ?」

「……赤田区」


赤田区といえば超お金持ちの億ションしか存在しない高級区域だ。この2人顔に見合うだけの出世をしたのだろう。


「二人で住んでんの」

俺の言葉の何かが癇に障ったようで今度は知秋が眉を寄せながら食い気味に答える。顔に言いたいことが山ほどあると書いてあるが何とか我慢してくれているようだ。低い声がさらに低くなった。

「ここは……お前のための家だろ……」

「……え?待った、何?お前ら俺を監禁するためにここ借りてんの?もったいな」


あ、やばい直接的過ぎただろうか。2人が固まったので慌てて適当な言葉を付け足した。

「どっちかの家とかで良いんじゃないかなって、てゆか借りなくても遊びにいくのに……あーいや」

うん、監禁のフォローなんて無理だわ。難しいな言葉選び。
でもそんなの気にしてもられない、失うものは何もないのだから回りくどく聞くのはよそう。


「俺は監禁されていたのだろうか……?」


二人は答えなかった。
無言だが瞳が逸らされることはない。二人の目は俺の記憶の中で嘘をついたことがないのだ。
怒りも喜びも悲しみも全部まっすぐに答えてくれる。

つまり、これはイエスだ。


「......なんで?」


この質問には答えやすかったのか返事はすぐに来た。何を当たり前のことを、なんて付きそうな態度で。

「なんでって、そんなの」

「英羅は俺の物のだからだ」

「……はあ?」


俺モノ扱い?高校から会ってないのに突然の物欲でも湧いたのかよ。
ペットみたいな?だから服着てなかったのかな。いやでも持ってきてくれたから服は関係ないか。いやどっちにしろやばいが。

知秋の言葉に俺よりも反応したのは来夏だった。


「僕のなんだけど」

「お前は黙っとけ」

「お前が黙れ」

「あー!はい!ストップ喧嘩は後!だいたいお前らの物って、何。俺は俺の物なんだけど」

気を抜くとすぐ喧嘩しようとするんだよな。久しぶりの豪華な飯を前に俺は喧嘩なんてする気絶対起きないけど。


「こんなうまい肉を前にして二人して何言ってんだよ。笑えねえから。つーかお前らのものって思ってたとしても監禁はやばいだろ……てかひさしぶりに肉食ったなぁ」


俺こそこんな時に肉の話なんて呑気なものだがほんとにさっき食った肉は肉汁がじゅわりと流れ出るしその上に脂っこくなくて口の中で溶けるのだからぺろりと平らげてしまった。
感動を思い出してしまうのは仕方がない。

「……ひさしぶり」


俺の発言でまた2人が固まった。
だからさっきからなんなんだ。何がお前たちに引っかかってるのか俺には分からない。

引き攣った表情で知秋が言う。


「……お前やっぱり、変だ」
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