6 / 74
異常事態
6
しおりを挟む
「あー、笑った。本当に昔のまんまなんだもん」
「昔……?」
知秋の腕の中で涙の拭いながらそう言うと2人は訝しげに聞いてきた。
「高校の時から変わんないよなって」
「……高校……」
2人は目を合わせるとそやっぱり何とも言えない表情をする。
何か変な事を言ったのだろうか。しかし俺だって聞きたいことがある。この部屋、この場所、そして何故足枷が付き、裸なのか。
「……あーちょっと、いろいろ聞きたいことが山ほどあるんだけどさ」
「な、なんだ」
知秋の腕を解いて立ち上がる。流石にそろそろ何か着たいところだ。
「取りあえず、服ちょーだい?」
「え、服……?」
「だってこのままじゃ落ち着かないし、俺裸族じゃないし」
また顔を見合わせた2人はさらに怪訝な顔をする。だから俺何か変なこと言ったか?
この裸に足枷付きの状況の方がやばいが。
「何まさか、ここ服も着させてもらえないの?」
「い、いや…………取ってくる」
来夏は困惑の顔をしながらも部屋を出て行ってすぐに服を手にして戻ってきた。
なんかしかも随分と刺繍の凝った高そうな服だ。黒地に金の刺繍がびっしりと入っている。おしゃれだけどこれ普段着なのか?チャイナ服を連想させる上はロング丈で下も同じ刺繍が入っている長いパンツ、派手だしおしゃれすぎるが取りあえずそれを着る。
「……着るのかそれ」
知秋が眉を寄せた。いや持ってきた本人にそんな顔しなよ。
「き、着てくれるとは思わなかった……」
持ってきた本人もそれ言うのかよ。
まあ何でもいい。
泣いたら数年間分くらいスッキリした気がして気分は晴れやかだし。よく分かんない状況だけどこの部屋から顔出したのがよく知っている親友だったのだ。まだのんきでもいいだろう。しかも腹まで減ってきた。ぐうっとお腹が鳴る。
「……腹減った……」
「え?あ、ご飯出来てるよ……?」
何故か遠慮がちな来夏がそう言うと開けたままのドアから確かにいい匂いがする。しかもこの匂い、肉だ。肉なんていつぶりだろうか。栄養のないインスタントばかりの生活の俺にはそれはもう御馳走だ。
「んじゃあ……頂こうかなあ」
「た、食べるのか?」
「いやさっきから何?食べない方がいいの?」
「まさか、食べてくれた方が嬉しいに決まってるけどな……」
けど、なんなんだ。お前らが朝は食べない派だから遠慮がちなのか?
とにかく飯は食っていいってことだろう。
「じゃあ案内してくれると嬉しいんだけど」
「案内……?」
「いや、ずかずかと知らないとこ歩くのも……てゆかこの足枷ってどうしたら、あーーあとさ」
さっきから宇宙人でも見てるみたいな顔で2人が立ち尽くしている。せっかくのいい男が台無しだぞ。
俺は何が分からないのか検討もつかないし、この2人が拉致犯だとしてもとりあえず飯は食いたい。
こんな状況なのに溜め込んでたもん全部捨てたら無敵になった気がする。
いや元々いつ捨ててもいいと思ってた人生だから、この状況にもそこまで慌てていないのかも。ああその前に、俺の朝と言えば一服から始まるのだ。
「ところで、タバコって吸わせてもらえる?」
その時の2人の顔を俺は一生忘れる事は無いだろう。
「昔……?」
知秋の腕の中で涙の拭いながらそう言うと2人は訝しげに聞いてきた。
「高校の時から変わんないよなって」
「……高校……」
2人は目を合わせるとそやっぱり何とも言えない表情をする。
何か変な事を言ったのだろうか。しかし俺だって聞きたいことがある。この部屋、この場所、そして何故足枷が付き、裸なのか。
「……あーちょっと、いろいろ聞きたいことが山ほどあるんだけどさ」
「な、なんだ」
知秋の腕を解いて立ち上がる。流石にそろそろ何か着たいところだ。
「取りあえず、服ちょーだい?」
「え、服……?」
「だってこのままじゃ落ち着かないし、俺裸族じゃないし」
また顔を見合わせた2人はさらに怪訝な顔をする。だから俺何か変なこと言ったか?
この裸に足枷付きの状況の方がやばいが。
「何まさか、ここ服も着させてもらえないの?」
「い、いや…………取ってくる」
来夏は困惑の顔をしながらも部屋を出て行ってすぐに服を手にして戻ってきた。
なんかしかも随分と刺繍の凝った高そうな服だ。黒地に金の刺繍がびっしりと入っている。おしゃれだけどこれ普段着なのか?チャイナ服を連想させる上はロング丈で下も同じ刺繍が入っている長いパンツ、派手だしおしゃれすぎるが取りあえずそれを着る。
「……着るのかそれ」
知秋が眉を寄せた。いや持ってきた本人にそんな顔しなよ。
「き、着てくれるとは思わなかった……」
持ってきた本人もそれ言うのかよ。
まあ何でもいい。
泣いたら数年間分くらいスッキリした気がして気分は晴れやかだし。よく分かんない状況だけどこの部屋から顔出したのがよく知っている親友だったのだ。まだのんきでもいいだろう。しかも腹まで減ってきた。ぐうっとお腹が鳴る。
「……腹減った……」
「え?あ、ご飯出来てるよ……?」
何故か遠慮がちな来夏がそう言うと開けたままのドアから確かにいい匂いがする。しかもこの匂い、肉だ。肉なんていつぶりだろうか。栄養のないインスタントばかりの生活の俺にはそれはもう御馳走だ。
「んじゃあ……頂こうかなあ」
「た、食べるのか?」
「いやさっきから何?食べない方がいいの?」
「まさか、食べてくれた方が嬉しいに決まってるけどな……」
けど、なんなんだ。お前らが朝は食べない派だから遠慮がちなのか?
とにかく飯は食っていいってことだろう。
「じゃあ案内してくれると嬉しいんだけど」
「案内……?」
「いや、ずかずかと知らないとこ歩くのも……てゆかこの足枷ってどうしたら、あーーあとさ」
さっきから宇宙人でも見てるみたいな顔で2人が立ち尽くしている。せっかくのいい男が台無しだぞ。
俺は何が分からないのか検討もつかないし、この2人が拉致犯だとしてもとりあえず飯は食いたい。
こんな状況なのに溜め込んでたもん全部捨てたら無敵になった気がする。
いや元々いつ捨ててもいいと思ってた人生だから、この状況にもそこまで慌てていないのかも。ああその前に、俺の朝と言えば一服から始まるのだ。
「ところで、タバコって吸わせてもらえる?」
その時の2人の顔を俺は一生忘れる事は無いだろう。
9
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
君が好き過ぎてレイプした
眠りん
BL
ぼくは大柄で力は強いけれど、かなりの小心者です。好きな人に告白なんて絶対出来ません。
放課後の教室で……ぼくの好きな湊也君が一人、席に座って眠っていました。
これはチャンスです。
目隠しをして、体を押え付ければ小柄な湊也君は抵抗出来ません。
どうせ恋人同士になんてなれません。
この先の長い人生、君の隣にいられないのなら、たった一度少しの時間でいい。君とセックスがしたいのです。
それで君への恋心は忘れます。
でも、翌日湊也君がぼくを呼び出しました。犯人がぼくだとバレてしまったのでしょうか?
不安に思いましたが、そんな事はありませんでした。
「犯人が誰か分からないんだ。ねぇ、柚月。しばらく俺と一緒にいて。俺の事守ってよ」
ぼくはガタイが良いだけで弱い人間です。小心者だし、人を守るなんて出来ません。
その時、湊也君が衝撃発言をしました。
「柚月の事……本当はずっと好きだったから」
なんと告白されたのです。
ぼくと湊也君は両思いだったのです。
このままレイプ事件の事はなかった事にしたいと思います。
※誤字脱字があったらすみません
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
幼馴染から離れたい。
June
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。
だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。
βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。
誤字脱字あるかも。
最後らへんグダグダ。下手だ。
ちんぷんかんぷんかも。
パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・
すいません。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる