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dance!!
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「秋寝ちゃったの?」
「ちょーぐっすり」
微かな柔らかいランプを残して広いリビングは暗くなっていた。
スマホを片手でいじりながらもう片方の腕で秋を包み込む瑠衣に暮刃はゆっくりと近づいた。足の間に座っている秋は静かな寝息をたて、丸まるように瑠衣に体重を預けている。
「可愛いね、本当」
ゆるりと秋の顔にかかる髪の毛を払ってあげながら暮刃が苦笑する。
どうしてこうもこの子達の寝顔は可愛いのだろうか。2階で先に眠っている恋人だけでなくその親友までも気に入るどころか愛おしさがある。そんな自分にはいつまで経っても慣れず、それはとても温かい感情でやはりむず痒いのだ。
「優たんもひー達と寝てんのー?」
「そうだよ、瑠衣は眠れないの?珍しい」
暮刃がソファ横のカゴに入れていたブランケットを秋と瑠衣ごと包むようにかけるとアリガトと気の抜けた返事をする。
「これ、どー思うー?」
スマホの画面を見せた瑠衣は小さめの声で暮刃に聞く。画面にはキツネとのチャット欄が載っているが瑠衣はその中でも少し前のトーク履歴を指で示した。特に目立った会話は無い。
「なんか別人が返事してる気がするんだよネー」
「これだけじゃ分からないけど、瑠衣がそう言うならそうなんじゃない?」
瑠衣のこう言った勘の信頼は高い。
第六感とでも言いたくなるほど鋭さは暮刃には無いもので、時折り羨ましくもあった。
「何が望みなんだろうね、全く」
「さあ?でもそろそろ本格的に接触してくるから暮ちんも優たんに着いてよネー」
「そうするつもりだよ」
いつもの間伸びした言い方だが瑠衣がこうして他人を気にかける事に成長すら感じてしまう。暮刃は微笑み二階へ視線を向けた。
「氷怜もすでに唯と行動してるし、そこでたまたまか必然かヘッドイーターがいるんだから勘って怖いよ」
だからといって勘ばかりに頼るわけにはいけない。なぜ今ヘッドイーターが動きしたのか、今まで全く情報のなかった彼らがいきなり目の前に現れる事に意味があるのか。
そこに巻き込んだのだ。無関係のこの子達を。
「……もし」
暮刃を見ることもせず瑠衣がつぶやいた。
「何……?」
「鶚ってやつがオレを狙うとして」
暮刃は黙って頷いた。
おそらく鶚が秋に近づく理由は、その先にある瑠衣を引きずり出すためだろう。偶然にしては出来すぎているし、双子が鶚を認知出来たということはバレてもいいと思った筈だからだ。
チームでは表で動く派手な双子をヘッドイーターが知らないはずがない。
わかった上で、瑠衣は行くと言った。
「アッキーの気に入った相手を……鶚を殴ったオレを、アッキーが見るかもしれない」
瑠衣の声に感情が乗っていない。
見ていたのはスマホではなかった、握った手をただ眺めいた。その手は綺麗だ。嘘のように傷もなく、清潔だ。
それでも時折り、自分達には違うように見える。
「瑠衣がそんな事話すなんて不吉な感じがするよ」
瑠衣はもうスマホに視線を移していた。
これは相談でも不安を吐き出したわけでもない。ここまで吐露するのは珍しいが、答えなんて出ている。
「暮ちんにも同じ事おこらないといいネ」
元に戻った瑠衣の声色を聞いて暮刃は妖艶に微笑んでみせた。
「優はちょっと、最近性格の悪い奴のひきが特に強い気がするから。殴ってもいいでしょう」
「それ自分のこと言ってるー?」
嫌われたくらいで、失望されたくらいで、あの子を離すなど笑えてしまう。
そんな可愛い愛など、生憎持ち合わせていない。
「ちょーぐっすり」
微かな柔らかいランプを残して広いリビングは暗くなっていた。
スマホを片手でいじりながらもう片方の腕で秋を包み込む瑠衣に暮刃はゆっくりと近づいた。足の間に座っている秋は静かな寝息をたて、丸まるように瑠衣に体重を預けている。
「可愛いね、本当」
ゆるりと秋の顔にかかる髪の毛を払ってあげながら暮刃が苦笑する。
どうしてこうもこの子達の寝顔は可愛いのだろうか。2階で先に眠っている恋人だけでなくその親友までも気に入るどころか愛おしさがある。そんな自分にはいつまで経っても慣れず、それはとても温かい感情でやはりむず痒いのだ。
「優たんもひー達と寝てんのー?」
「そうだよ、瑠衣は眠れないの?珍しい」
暮刃がソファ横のカゴに入れていたブランケットを秋と瑠衣ごと包むようにかけるとアリガトと気の抜けた返事をする。
「これ、どー思うー?」
スマホの画面を見せた瑠衣は小さめの声で暮刃に聞く。画面にはキツネとのチャット欄が載っているが瑠衣はその中でも少し前のトーク履歴を指で示した。特に目立った会話は無い。
「なんか別人が返事してる気がするんだよネー」
「これだけじゃ分からないけど、瑠衣がそう言うならそうなんじゃない?」
瑠衣のこう言った勘の信頼は高い。
第六感とでも言いたくなるほど鋭さは暮刃には無いもので、時折り羨ましくもあった。
「何が望みなんだろうね、全く」
「さあ?でもそろそろ本格的に接触してくるから暮ちんも優たんに着いてよネー」
「そうするつもりだよ」
いつもの間伸びした言い方だが瑠衣がこうして他人を気にかける事に成長すら感じてしまう。暮刃は微笑み二階へ視線を向けた。
「氷怜もすでに唯と行動してるし、そこでたまたまか必然かヘッドイーターがいるんだから勘って怖いよ」
だからといって勘ばかりに頼るわけにはいけない。なぜ今ヘッドイーターが動きしたのか、今まで全く情報のなかった彼らがいきなり目の前に現れる事に意味があるのか。
そこに巻き込んだのだ。無関係のこの子達を。
「……もし」
暮刃を見ることもせず瑠衣がつぶやいた。
「何……?」
「鶚ってやつがオレを狙うとして」
暮刃は黙って頷いた。
おそらく鶚が秋に近づく理由は、その先にある瑠衣を引きずり出すためだろう。偶然にしては出来すぎているし、双子が鶚を認知出来たということはバレてもいいと思った筈だからだ。
チームでは表で動く派手な双子をヘッドイーターが知らないはずがない。
わかった上で、瑠衣は行くと言った。
「アッキーの気に入った相手を……鶚を殴ったオレを、アッキーが見るかもしれない」
瑠衣の声に感情が乗っていない。
見ていたのはスマホではなかった、握った手をただ眺めいた。その手は綺麗だ。嘘のように傷もなく、清潔だ。
それでも時折り、自分達には違うように見える。
「瑠衣がそんな事話すなんて不吉な感じがするよ」
瑠衣はもうスマホに視線を移していた。
これは相談でも不安を吐き出したわけでもない。ここまで吐露するのは珍しいが、答えなんて出ている。
「暮ちんにも同じ事おこらないといいネ」
元に戻った瑠衣の声色を聞いて暮刃は妖艶に微笑んでみせた。
「優はちょっと、最近性格の悪い奴のひきが特に強い気がするから。殴ってもいいでしょう」
「それ自分のこと言ってるー?」
嫌われたくらいで、失望されたくらいで、あの子を離すなど笑えてしまう。
そんな可愛い愛など、生憎持ち合わせていない。
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