sweet!!

仔犬

文字の大きさ
上 下
361 / 379
family!

2

しおりを挟む
家に着いたら可愛いエプロンをした椎名が嬉しそうにおれたちを招き入れる。ちなみにエプロンは昔から椎名のお手製でおれのもある。

椎名のフルコースがテーブルにあって、綺麗に盛り付けられたディナー。
まだ春さんは来ていなくてカフェがひと段落付いたらこっちに向かってきてくれるみたい。ああ、楽しみすぎる。


そう言えば瑠衣先輩が花束と言っていたけど春さんとの事で何かいい報告ならお祝いだしおれが買っても良いくらいだと思ってミニブーケを用意。しかも氷怜先輩は元からプレゼントを用意してくれていたらしい。優しさにまたもやキュン。


「えええ、本当にこれもらっていいの??」


椎名が宝石でも見るくらいキラキラに目を輝かせている先には招待状と書いてあるチケットだった。

「使ってください。お友達でも、春さんとでも」


氷怜先輩がそう言うと椎名は驚きながらも恥ずかしそうに笑った。


「氷怜くんにもバレバレとは……」

「おれが全部伝えてるからね~」

「唯斗ったらもう……でもありがとう、大切に使うわ」


嬉しそうに胸にチケットをあてる椎名。なんか、おれまで嬉しくなっちゃうじゃないか!

「良かったねぇ」

「どこかの可愛い息子は最近家に居ないことが多いしねぇ。外泊はちょうど良いかも」

「い、痛いところを……ごめんね?」


バイト行ってクラブ行ってのルーティンでシェアハウスにも行くとなれば家に帰る日が少なくなってしまっていた。特に最近は稽古つけてもらってるから疲れて眠っちゃったりなんてあるあるだ。

「私もそろそろ息子離れの時かしら」

「え、しい……」


珍しく本当に寂しそうに言うから驚いて声を掛けようとすると、ちょうどインターホンの音が聞こえ椎名はすぐに反応して来訪者を迎えに行ってしまう。

「春さん来た~」

嬉しそうな顔、おれの環境が変わるように椎名だって少しずついろんなことが変わるんだ。なんだか不思議な気持ちがふわっと上昇してきた。寂しいような、嬉しいような。

それでも春さんがドアから顔を出したら吹き飛んでしまう。

「春さんだ春さんだー!春さんがうちにいるーーー!!!」

「そして氷怜くんもうちにいるー!!ばんざーい!!」


親子2人が盛り上がりすぎても春さんはいつも通りにこにこだし氷怜先輩も変わらずかっこいいわけで、この家の幸福度は今全世界のどこよりも高い。

さあさあとテーブルまで春さんを招き入れると春さんが嬉しそうに微笑んだ。

「すごいご馳走だ。嬉しいなぁ」

「って言っても私より唯斗の方が料理うまいのよねぇ」

「椎名さんも上手だよ」

「それは食べてから言うセリフ!」


椎名と春さんの掛け合いがもうすでに自然でおれはその度にニヤついてしまうではないか。そしてそのおれ見て氷怜先輩がからかってくる。

「顔」

「だってこれはもう、あれじゃないですかもう!」

「なんなんだよ」


くつくつと笑われてもにやけが止められんです。


ようやく食べ始めた椎名のご飯は当然美味しいわけで、春さんはやっぱり上手だって褒めたら椎名もようやく素直にありがとうとか言うのだ。何ここ天国?


「ちょっと唯斗、私よりにやけるのやめてよ。私は氷怜くんが来てくれた事も嬉しいんだから、私もニヤニヤしたいくらいなのよ!」

「だから余計にニヤニヤしちゃうの!」

キャーキャーと言い合うおれと椎名を他所に春さんと氷怜先輩は落ち着いた雰囲気だ。

「氷怜くん、本当はお酒飲みたいよね」

「まあ……春さんも結構呑みそうですが」

「あはは、ばれてる。でも唯斗だけ飲めないの可哀想でしょう?」

「……俺は対象外ですか?」

「嗜むって良い言葉だよね」


なんだか通じるものがあるようで2人して良い笑顔だ。春さんって本当に誰とでも仲良くなるなぁ。あとおれたちにはパパって感じなんだけど氷怜先輩といる時はさらに大人の魅力が上がると言うかなんかもう好きです春さん。もう2人の姿にスマホの連写が止まらない。

「んん~……本当に椎名に春さん紹介してよかったあ。で?で、どうなんですかお二人さんは」

「唯斗ったら色気のない聞き方……」

椎名に呆れられたがおれの今日気になる事と言えばそれしかない。春さんは俺の言葉に持っていた箸を置いた。


「そうだね、ちゃんと言っておかないと。いいかな椎名さん」

椎名が頷いたので、春さんがおれの瞳を真っ直ぐに見つめる。出会った時から変わらない安心する優しげな瞳。

「椎名さんとね、お付き合いを始めようと思ってる。だから唯斗の気持ちを聞きたくて」

「え?」

まさかわざわざおれに確認が来るとは思わずキョトンとしてしまった。だっておれが春さんを紹介して、椎名だってもう応援してるのなんて分かってるのに。もはや付き合ってるかと思っていたくらいだ。

「んん?なんでおれに聞くんですか?おれ、2人の事もうずっと楽しみにしてて、そんなおれの許可なんて」

言いかけて椎名の手がおれの手に重なった。あれおれの手ってこんなに大きかったかな。唯斗、と椎名がおれを呼ぶ。

「あなたもあの人も私に好きにしていいなんて優しい事言ってくれるけど、私は何よりもまず唯斗の母親だからあなたの事一番に考えたいの。応援してくれてるのも充分伝わってるけど、ちゃんとこうして唯斗と話してからじゃないとわたしが嫌だったから」


おれにそっくりな椎名は姉のようで友達のようでいつも対等な気がしていた。でもこういう時はちゃんと母親なのだ。

おれに対してこんなふうに大切に想っていてくれる事が嬉しくて、なんだかいろんな事が込み上げてくる。

「おれ、春さんも椎名も大好き。それでね、父さんも大好き。春さんは椎名から父さんの話聞いた?」

「うん、すごく素敵な人だって」

春さんが微笑むからおれも嬉しくなる。2人に何があってもおれは変わらないし、父さんも春さんも椎名の事も何にも変わらず、本当に大切な人達だ。

「2人が幸せでいてくれたら大好きがもっと増えるんじゃないかなって思うくらい。だからさ、はやくおめでとうって言わせてよ」


こうして言葉にするとなんだか泣きそうになるではないか。2人がありがとうって嬉しそうに頷くから余計にだ。


「それで今日から付き合う?付き合う?!」

「感動を一瞬でぶち壊すわね……」

「今日が記念日だねぇ」

「勝手に話を進めない!!」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

【BL】男なのにNo.1ホストにほだされて付き合うことになりました

猫足
BL
「浮気したら殺すから!」 「できるわけがないだろ……」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その結果、恋人に昇格。 「僕、そのへんの女には負ける気がしないから。こんな可愛い子、ほかにいるわけないしな!」 「スバル、お前なにいってんの…?」 美形病みホスと平凡サラリーマンの、付き合いたてカップルの日常。 ※【男なのになぜかNo. 1ホストに懐かれて困ってます】の続編です。

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!

しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎 高校2年生のちょっと激しめの甘党 顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい 身長は170、、、行ってる、、、し ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ! そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、 それは、、、 俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!! 容姿端麗、文武両道 金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい) 一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏! 名前を堂坂レオンくん! 俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで (自己肯定感が高すぎるって? 実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して 結局レオンからわからせという名のおしお、(re 、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!) ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど なんとある日空から人が降って来て! ※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ 信じられるか?いや、信じろ 腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生! 、、、ってなんだ? 兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる? いやなんだよ平凡巻き込まれ役って! あーもう!そんな睨むな!牽制するな! 俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!! ※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません ※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です ※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇‍♀️ ※シリアスは皆無です 終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

最弱伝説俺

京香
BL
 元柔道家の父と元モデルの母から生まれた葵は、四兄弟の一番下。三人の兄からは「最弱」だと物理的愛のムチでしごかれる日々。その上、高校は寮に住めと一人放り込まれてしまった!  有名柔道道場の実家で鍛えられ、その辺のやんちゃな連中なんぞ片手で潰せる強さなのに、最弱だと思い込んでいる葵。兄作成のマニュアルにより高校で不良認定されるは不良のトップには求婚されるはで、はたして無事高校を卒業出来るのか!?

雨のナイフ

Me-ya
BL
雨の中、俺はアイツを待っていた…両手にナイフを握り締めて…。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

処理中です...