sweet!!

仔犬

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rival!!

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床に座っていたおれは寝室のドアが吹き飛んだことが一瞬理解できなかった。なんだか大きなものがおじさんと麗央さんの横辺りに飛んでいくと、驚いているおれの横で李恩がすでに駆け出していた。

相手が同じく驚いている隙をついて麗央さんに向けられていた包丁を蹴り上げる。腕を掴み見事に李恩がおじさんを捕らえた。


麗央さんがおじさんから離れる頃にようやくドアの前に立ちつくす秋と優そして何故か大好きな春さんがいる事に気が付いた。


「は、春さん……?」

「大丈夫?」


出かけてきた時と同じようにおれの身なりを整えてくれる春さん。なんで春さんがいるんだろうか、それにしても変わらないマイナスイオンの笑顔がこういう状況に恐ろしく似合わない。

ボケッとするおれとは対照的に麗央さんと李恩の言い合いが聞こえ始めた。おじさんを掴んだままの李恩と、捕まえられていた首を摩りながら麗央さんが信じられないと不機嫌そうだ。

「李恩!なんでそもそも念の為でも用意してこなかったの」

「あ?お前まで甘えたこと言ってんなよ。そんなひょいひょい金配ってたら俺の仕事が増えんだろ!だいたい渡したところで保証がねえ」

「だとしても!しかもなんで高瀬唯斗まで連れてきてるの!!」

麗央さんにビシッと指を刺され思わず頭をガバッと下げる。

「ごめんなさい!!」

「うるせえ!こいつの機嫌悪くなるから着いてくんなって言ったわ!」

「い、言われてないような……」


まあ無理やり乗ったのは自分だけど。
一斉に睨まれるがまたすぐに言い合いを始める2人。多分2人のいつものやりとりなので一旦会話から外れていまだに放心している優と秋に近づく。目の前で手を振ったらようやく意識を取り戻したようだ。

「2人ともきてくれてありがとね、春さんまでごめんなさい!」

「い、いやいつもの事だから良いんだけど……え、何、まぼろし?」

「何が?それにしても凄いね!秋いつの間にあんなにパワーアップしたの、ずるい!何が飛んできたのかと思ったよ、ドア蹴り破るなんてさ」

「や、それは……」

秋と優の視線が隣にいる春さんに移った。へ、なんで春さんをみるんだ。当の春さんはにっこり笑って足をさすった。

「筋力落ちたかなあ」

「……んん?!」


え、つまり春さんが開けたの?
固まるおれをよそに春さんはさてと、と微笑む。


「何はともあれ、みんな一旦ゆっくりしたほうがいいよね」

「は、春さん……?」

カフェでトラブルがあった時も春さんのこの雰囲気と優しさでどれほど助かったことか。細かいところにまで配慮がきくしお客様だけでなくおれたちのこともいつだって暖かく見守ってくれていた。

「バイトの時間外だけど、3人とも手伝ってくれるかな」

「え、あ、もちろん!」

にっこり微笑んで彼は言い合う2人の元に行く。

「麗央くん……だね?怪我はない?」

春さんを知らない麗央さんが訝しげに見つめるけど、そのうち緩く頷けば春さんは微笑んだ。そして意気消沈し涙を流すおじさんの肩に手を置く。

「李恩」

あれ、春さん李恩の事知っていたのだろうか。
春さんの声がかかると途端に李恩が固まる。

「この人離してあげて」

優しい声にゆるりとおじさんの拘束を解いた李恩にお礼を言うと春さんはおじさんにも目線を合わせるように微笑む。もう何もかもおしまいだ、そんな瞳の彼がぼんやりと春さんを捉えた。


「お茶にしませんか」


おれが憧れている春さんは最初からずっとこう。
彼の笑顔には心を癒す特別な何かがあるのだ。






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