sweet!!

仔犬

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kick!!

8

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ビシッと言い放ったリョウに瑠衣先輩は一瞬ポカンとして、そして次に今日初めての大爆笑。

え、今笑うの?とそんな顔のリョウの目の前で、ものすごい速さで瑠衣先輩の頭が叩かれた。速すぎて目を疑ったけど犯人は微笑んでいる暮刃先輩だった。さらにその隣で氷怜先輩が低い声で言う。


「気にすんなよ。コイツのツボ浅いから、バカにしてるわけじゃなくて言われた事ないセリフに感動してるだけだ」

「え?!あ、そ、そうなんですね……?」


感動……?と首傾げそうになるがまさか氷怜先輩からフォローを入れてもらえるとは思わず、リョウはビックリしながらもお礼を言った。

「瑠衣先輩そろそろ落ち着いて。ほら、ヒーヒーフー」

「唯その呼吸なんかやっぱり違うと思う……」

優がツッコミを入れる中でようやく瑠衣先輩が息を整えた。たしかに瑠衣先輩は絶対に言われたこと無い言葉だろう。真っ向からこんなストレートと言うなんてなかなかの度胸。瑠衣先輩涙まで浮かべている。

「あーあ、アッキー。なんかーチョットリョウ犬気に入ったカモ」

「それは良かったです」

結構自慢の友達なので瑠衣先輩にそう言われるのは素直に嬉しい。


「まあ、安心しなよー。オレよりアッキー満足させる人間いないから」


うーわ、またあの笑顔出すわけね。
そして今度は親友がニヤニヤして見てくるのも気のせい気のせい。
リョウもそのセリフでスッキリしたのかいつもみたいな笑顔を見せてくれる。それを見た神さんと才さんが軽く頭を下げる。

「瑠衣さん、こいつなりに考えてるんで気に入ってもらえると俺も嬉しいです」

「はあ?なんで神がそんな事……」

「なので今日は本当に付き合ってくれてありがとうございます」

「おい、才まで……」

「ハイハイ」

瑠衣先輩が適当に手を振ると、こっそりと「秋、ちょっと場所変わって」と言われて交換すれば何故か神さんと才さんがリョウを挟むようにして座り込む。

あ、この流れちょっと予想がついてしまった。

「そして、ここまで来たら」

「後は俺たちが落とすんで安心してください」

「へ?」

リョウが素っ頓狂な声を上げるとその両頬に双子さんからまさかのキスが。唯がキャーと盛り上がる横で優はちょっと驚いて暮刃先輩はおやと一言。ちなみに氷怜先輩はあくびだ。

真っ赤になったリョウが自分の頬を守るようにガタッと立ち上がった。

「な、なに、なにしてくれてんだ……」

「何って」

「俺らお前のことずっと狙ってた訳」

「だけどお前気付いてないけど見るからに秋の事好きだったからさー」

一途バカに色気出しても気づいてもらえないから、とりあえず強烈な印象だけは残しとこうかなって思ってお前にずっとちょっかいだけ出してたんだよねー。と神さんか才さんがどっちかが言っている。リョウが神お前……と絶望したリョウが言うので神さんが正解らしい。

そうなのだ、こう言う事だったのだ。
クラブでこっそりリョウの事が好きだと言われ、しかもそのリョウが俺の事を好きだと言うから結構気まずかったのに、今日来てみたら知ってると言われてしまう。

興味なさそうにヘーと答えた瑠衣先輩は俺を突いた。

「でー?なんでアッキーがそれ隠したワケ」

「え?いや、2人が先輩達に言わないでね恥ずかぴーから♡って言うから……」

「え、まじで内緒にしてくれてたの?!」

「秋、お前いいやつ!!」

言ってよかったのかい!
今日3人見て分かりやすいからどうせすぐバレるだろうとは思ってたけど、キスまで目の前でされて内緒にしてはたしかに可笑しい話だ。

なんだか今回1番振り回されてんの俺だわと浸っているとドン!と物凄い音がした。店員さんの顔すら隠れるクレープが台に乗せられてテーブル上に聳え立っている。

「でけぇな……」

心底嫌そうな顔をした氷怜先輩を唯が激写している。

「氷怜先輩とクレープ可愛い~!」

「可愛いか……?」

クレープがデカすぎて正直圧巻の方が感想に出そうだけど唯はもうなんでも可愛いのかも。
暮刃先輩は頼んだ料理がお気に召したらしく、レシピを考察中。優が自分が食べているのも美味しいと報告するとじゃあそれも今度作るねと微笑んだ。

「フーン、こんくらいかあ余裕ジャン」

「早く食えよ、邪魔だ」

煙たがる氷怜先輩。瑠衣先輩はにやりと笑ってスプーンで掬ったおっきな一口以上のクレープを氷怜先輩の口に突っ込んだ。毒でも食べたみたいな嫌なそうな顔をすればやっぱり大爆笑の瑠衣先輩。

「ひ、氷怜先輩大丈夫ですか……」

「笑ってんなよ、お前」

唯まで釣られて肩を震わせて笑うとそのほっぺが引っ張られた。
ツインズに未だ弄られながらそれを見ていたリョウがこそっと俺に話しかける。

「な、なんか先輩達意外と……」

「分かってきた?知れば知るほど深みにハマるんだよなー」

「それ、ノロけ」


2人で笑いあえば、すっかり気分がいい。

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