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secret!!!
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しおりを挟む「……何で待ってるだけなのに怪我してるの」
丸い瞳が怪訝そうに歪んだ。
その言葉に榊はエンジンを掛けながらミラーを覗く。口の端が小さく切れて血が滲んでいた。舌で舐めとると、先ほどの出来事を思い出し鼻で笑う。
「猫に噛まれたんだよ」
「あっそ」
明らかな嘘でも麗央は興味も無いと、適当に返事をする。いくら顔が可愛くても震えていた美人の細い体の方がクるものがあったと思いながら、雇主が車に乗り込んできたのを確認し発車した。
助手席で頬杖をついた麗央は街のネオンに目を向けながらうっとりと話し出す。
「アゲハ可愛かったなぁ……やっぱり女の子のドレスは良いよね」
「色気があれば何でも良いけどな俺は」
「下品な話はやめて」
馬も合わなければ趣味も合わない。
だが麗央は榊のその腕と頭の良さだけは見込んでいた。地位と美貌を持って生まれた麗央にとって盾となれる人間は必要だった。なにかと危ない目に遭う彼に両親が紹介した榊は金次第で良いように動いてくれると噂だった。
そうしてボディーガードになったのはわりと最近の事だ。
「俺が暇潰してる間にお前はずいぶん楽しんだみたいだな」
「そりゃ親友の誕生日のお祝いだよ」
「ちげえよ。居ただろお前の大好きな獅之宮氷怜が」
瞬間丸い目が輝いた。それでもすぐに目尻がきつく上がり眉を潜める。これでモデルが出来るのだから不思議なものだといつも榊は感心していた。
「何言ってんの。そんな都合良く会えるなら俺だって会いたいよ、見たとでも言う訳?」
「……いや」
榊も確信はなかったが優と暮刃がいたと言う事はおそらくそうでは無いかと思ったのだ。でもあまり公に顔は出さないかもしれない、それに麗央にその話を続けさせたら煩くなる事はインプットされている。
「お仲間が居ただけだ」
「no nameの……?ああ、でも氷怜さんのお気に入りにそっくりな子がいたよ。似てるからって失礼な態度しちゃったけど無理なものは無理、だって、どれだけ……」
それは本人なのではと思ったが、それを伝えると2人きりのこの場では怒りが榊に向かう推測は容易かった。
「せめてもっと、可愛くならないと……」
やはりスイッチの入った彼に榊はスルーを決め込む。得意の音楽をかけその場は任せる事にした。
今宵は気分が良い。
そう思えたのはあの真っ直ぐな瞳に見透かされたからかもしれない。
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