sweet!!

仔犬

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christmas!!!

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目が覚めたら朝だった。あれ、ソファじゃん。めちゃくちゃ抱き枕にされてるけどいつ寝たんだっけ。



覚えているのはゾンビに飽きて幽霊に手を出し始めたことだ。

別に苦手じゃないし、ゲームは楽しい。でもホラー映画見た後とかって1人で暗闇を行くのが気持ち悪くなる時があって。

あれは男だって女の子だって関係なく存在する心理だ。




「どうせなら真っ暗にシヨー!」


深夜のテンション、とは言わないがいつも通りおちゃらけた瑠衣先輩がこの広い家のリビングを真っ暗にしたのだ。
もともとプロジェクターをつけていたから暗めだったけど柔らかい光があったから真っ暗じゃない。それなのに完全に電気を消すもんだからプロジェクターの周り以外何にも見えなくなった。


「深夜に真っ暗にしなくても…………」

「だからこそでショ」


相変わらず極限を楽しむ人だな。
突っ込みながらも結局は俺だってノリノリでゲームを進めていくわけで驚いたりビクついたりしながらもどんどんのめり込んむ。幽霊を倒すのではなく、謎を解きながら進めていくタイプで、話も作り込まれているせいか感情移入しやすい。

それが少し、現実味のある怖い話だったから少し休憩にと辺りを見回した途端、暗闇が急に心細くなる。


「ああ……トイレ行くの嫌になるわ」

「えーアッキーそんな怖がりだっけ~」


目が疲れてヘッドセットを外し今はソファからまったりホラーをプレイ。俺が謎解きにつまずいて悩んでいたらコントローラーが取られ、さらっと解いていく。え、教えてよお兄さん。


「でもちょっと気味悪くなりません?」

「んーオレはー」



特にこちらを向くわけでもなく光る画面を見つめながら珍しく真顔で言うのだ。


「見えるから」


綺麗な顔が、いつも違う。


「…………そうやって、すぐ脅かしにかかるうううぅ!!」

「アハハハハ!」


爆笑し始める瑠衣先輩をジト目で睨んだところでさらに爆笑されるだけだ。嘘だとわかっていてもこの状況で言われるとちょっと怖いじゃん。瑠衣先輩がそういうとこあるのは知ってるがひどいもんだ。

脅かされるし、笑われるし、流石に目も疲れてきたのかしょぼしょぼしてきた。酸素も足りなくてあくびを連発。だからと言って二階に行くのも気が引けた。


「……誰かさんのせいで暗闇の中上に行きたくねぇ~」

「じゃあここで寝ればいいじゃん~?」

「うわ!!」


いつのまにか大きなふわふわのブランケットに身体が巻かれソファに転がされる。コントローラーをテーブルの上に置いた瑠衣先輩がどっこいしょとか言いながら抱き枕にし始めた。


「もしやこれを狙って真っ暗に……?!」

「えー?二階でもアッキーは抱き枕になるけど」


至極当然のように言うのでこちらもまあそうかと納得してしまった。いやそんな訳はないけど。いや、まあ、良いんだけどね。

ソファは広くてベットのようなもので窮屈さもない。沈み込む身体が丁度いい。なんだかんだ落ち着いてくると瑠衣先輩が俺の首元に潜り込む。俺だけもふもふにくるまって彼は無防備だ。

「抱き枕は分かりましたけど、瑠衣先輩もちゃんと毛布入ってください」

いくらこの家があったかいとはいえ掛け布団も無しに寝る季節ではない。抱きしめられて緩めてくれない動き辛さの中、なんとかブランケットを自分と瑠衣先輩に巻きつけた。

小さく笑いながら少し呆れ気味に瑠衣先輩が言う。


「お兄ちゃんだねぇ……」

「ええ、そうっすか?」


世話を焼くからお兄ちゃん。
面倒見がいいからお兄ちゃん。

じゃあこれはどうだろう。


「直接抱きしめて欲しいんですけ、ど!?」


本日2回目の全身の圧迫により酸素がついに薄くなった。本当に死にそうだ、抱きしめられて死ぬなんてある意味幸せなのかなと、とんでもない事を思い始めた頃にやっと力が緩む。

首に痛みが走り、またかと苦笑した。
この人、絶対に噛み癖がある。




「10秒以内に寝なきゃ、待ては反故にする」




いつもの緩い口調は消え去り、熱を帯びたエメラルドグリーンの目が赤に変わりそうで、流石に身の危険を感じた俺は5秒で寝ることになる。




「あとどれくらいで……」




聞こえてきた声は夢か幻か。
その言葉はカウントダウンの始まりだ。








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