sweet!!

仔犬

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christmas!!

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「わ!」

まだ入った事のない部屋に連れて行かれベットの上にばふりと置かれる。ふかふかで巨大なマットレスがおれを包み込むと頰を撫でられた。

「ほっといたら寝ないだろ」

ベッドサイドに置かれた小さなランプだけが頼りの中、氷怜先輩が上に着ていた黒のスウェットを脱いだ。鍛えられた身体が露わになりおれは驚く。

「もしや先輩裸族……?」

「ちげえわ」

彼はまだ立っているので顔がよく見えないけど、いつもの仕方なさそうな笑みで笑っているはず。

「普段寝るときは上脱ぐんだよ」

「おお、氷怜先輩の腹筋を毎日拝める訳ですね」

「唯斗、お前……」


呆れた声がするとベッドに膝から上がってくるのが見えた。手を伸ばせばすっぽり抱きしめられる。

「いまいち照れるポイントがわかんねえ」

腹筋は男のロマンだからかも知れない。シャンプーの匂いが流れてきて氷怜先輩の髪の毛を指に通す。


「……同じ匂いだ」

「お前の方がいい匂いする」


するりと頰をかすめた先輩の顔が首元にいくとそこにうずくまった。くすぐったくて身をよじる。

「なんだ、吹っ切れたから照れなくなったのか?」

「いやそういうわけでは」

実際今だって心臓は少し早くて氷怜先輩の熱が身体に移ってきている。でも、今は氷怜先輩もおれを煽っていないから。

「心がほんわかなんです。こうやってギューしてるのが幸せで」

「そんな中俺はマテを言い渡されてるわけか。それはクるな」

「え?!いや、あの!」

思わず抱きしめていた手を離すと、くくと笑いが漏れた。

「冗談だよ。風呂でも言った通りそれは俺の希望でもあるから」

「あうう……」

複雑な気持ちになってしまい手が戻せずにいると先輩によって再び抱きしめる体制にされた。低い声が耳元で響いて体温が流れ込む。

「抱きしめてろ」

噛みつかれそうな距離からついに唇が首を沿っていく。だんだんと耳が熱くなってその言葉とその動きを理解して固まったおれに小刻みに振動が伝わってきた。

「わ、笑ってますね……」

「だってお前……熱いし……はははっ」

耳を触った氷怜先輩が堪らないと吹き出した。おれはもう噴火寸前で抱きしめられながら叫ぶ。

「待てはどこに……!」

「煽り煽られってな」

からりと笑ってくれる氷怜先輩にむくれながらも抱きしめられる心地よさにだんだんとまどろんでいく。甘い匂いが、撫でる指が、目を閉じるための魔法のようだ。

ぼんやりする意識の中、その匂いに記憶が蘇った。あの言葉がずっとここの奥で引っかかって、その映像がループする。

「……氷怜先輩」

返事は無かったけど頰に唇の感触。気持ちよくて抱きしめる力を強めた。


「最初に……先輩が言っていた言葉を訂正したくて」

「最初……?」

あの奇跡みたいな、この人と出会ったあの日。
おぶられながら先輩が言っていたあの言葉を、この人への感情に驚くばかりで伝えられていなかった。

「おれが直感型人間なばっかりに、感謝から告白をオーケーしたとか……あの時氷怜先輩に言わせてしまったから」

「ああ、あんなもん。そのあとすぐにお前の反応で分かったからな。どれくらい俺に惚れてるのかは」

「うわ……は、恥ずかしい」

ぶわっとまた顔が熱くなる。

あの時こそ、この人への思いが初めての体験でうまく扱えなくて綺麗に並べて説明するなんて無理だった。

大抵のことはなんとか上手くできてもこれだけ振り回されている。それほどこの人の事が。


「……おれの弱点、唯一ありました」

「ん……?」


顔を上げた氷怜先輩の目が暗闇の中でも輝いて見えた。宝石のようなヘーゼルグリーンはおれしか写っていない。その美しさに自然と口角が上がる。



「あなたが好きすぎる事だ」



瞬間、首筋に痛みが走ったと思えば、ヘーゼルグリーンの瞳が暗闇でもギラギラ輝いていた。氷怜先輩の身体が完全におれを包み、頰に手を合わせれば今までとは比べ物にならない甘い口づけが降り注ぐ。柔らかな感触に酸素が足りなくて一瞬で意識が遠のいた。

かすかな意識の中で声がする。
 



「……早く」




早く、全てが1つに。
この家の誰もがそう思ってるのかも知れない。










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