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しおりを挟むテストは午前で終了なので午後はゆったりできる。本当は今日もバイトだった秋と優だけど、他のメンバーが代わってくれたらしい。おれも手が治ったらみんなにお返ししないとなぁ。
しばらく教室に残って話していると、廊下がきゃーっとざわついた。開いたドアを見ていたら桃花がひょっとこりと顔を出す。数人の女の子がすぐに声をかけると困った顔で笑っていた。
あんまり女の子慣れしていない訳ではないが騒がれるのが苦手だと言っていたので少し大きな声で桃花を呼ぶ。その隙にありがとうとすぐに手を振って彼女達の輪から抜ける。
「桃花テストどうだった?」
「……あの人達の教えが7割以上出てきたのが恐ろしかった」
「何か裏があるとしか思えない的中率だったよね」
優が笑って桃花を誰も座っていない席に通すと秋が面白そうにこう言った。
「ところで、美少年はモテモテで大変だな」
「前の学校でもあんな感じ?」
「まあ……」
質問にちょっと困惑気味に答えたのは桃花がおそらく上手く立ち回れないんだろうと推測。あれ、もしかしてこういうのもおれの出番なのか?
それにしても桃花はいつまで付き人してくるんだろう。
リュックに筆記用具を詰め込んでいると桃花は何も言わずに手が大変だとろうと手伝ってくれる。ありがとうと答えれば桃花のちょっと呆れた声が聞こえた。
「半数くらいは唯の知り合いかどうかを聞かれたよ……あ」
ニヤリ。
おれはニヤつきが押されられなくてリュックから桃花に視線を動かした。やってしまったという顔。
「その調子だよ桃花」
「うう、俺としたことが……」
テスト終わりで気が抜けたのか分からないけど、桃花が完全に敬語を取ったのはいい傾向だ。そもそもそんなもの最初からいらないけど。
「………でも、実はあの3人がやられているところを見たら心が少し軽くなったというのもあります」
「気にしすぎだよお前は」
式が桃花の頭を小突くとこういう性格だからと、照れてたように笑う。
「あと少し、貴方に認められるようになったら自信がつくような気がするんです」
「へ?」
桃花の視線がまっすぐおれを見た。元々、不安のイメージを緩和するためにおれと一緒にいただけなのに目的が変わってきている。
まあでも、それで桃花がスッキリするなら良いのかも。
「じゅーぶん、カッコいいけど?」
「まだまだ」
律儀で責任感が強いこの桃花が早く自信を取り戻せるようにおれも頑張ろう。
そう決意し直した時、ポケットのスマホが震えた。秋と優もスマホに気づいたのでグループメッセージだ。氷怜先輩から上の教室に来い、とのことだった。
式がバックを持ち立ち上がると、何故か眉間にしわを寄せてこう言った。
「……じゃあ俺は部活あるから、先輩達のとこ行ってこいよ」
「うん?よく分かったね先輩達だって」
「こういう時のタイミングの良さはあの人達の特技だと思ってる」
思えば先輩達って見計らったように出てくるし、どこかで見ているのかというタイミングで連絡が来る。追加できたメッセージを優が読み上げた。
「桃花と式も暇ならこいだって」
「ほら集まってんのが何となくバレてるだろ……」
「た、確かに」
ただ、そういうのには赤羽さんが絡んでいそうだと全員が思ったが心の奥にしまった。
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