sweet!!

仔犬

文字の大きさ
上 下
162 / 379
next!

2

しおりを挟む


テストは午前で終了なので午後はゆったりできる。本当は今日もバイトだった秋と優だけど、他のメンバーが代わってくれたらしい。おれも手が治ったらみんなにお返ししないとなぁ。

しばらく教室に残って話していると、廊下がきゃーっとざわついた。開いたドアを見ていたら桃花がひょっとこりと顔を出す。数人の女の子がすぐに声をかけると困った顔で笑っていた。

あんまり女の子慣れしていない訳ではないが騒がれるのが苦手だと言っていたので少し大きな声で桃花を呼ぶ。その隙にありがとうとすぐに手を振って彼女達の輪から抜ける。


「桃花テストどうだった?」

「……あの人達の教えが7割以上出てきたのが恐ろしかった」

「何か裏があるとしか思えない的中率だったよね」

優が笑って桃花を誰も座っていない席に通すと秋が面白そうにこう言った。

「ところで、美少年はモテモテで大変だな」

「前の学校でもあんな感じ?」

「まあ……」

質問にちょっと困惑気味に答えたのは桃花がおそらく上手く立ち回れないんだろうと推測。あれ、もしかしてこういうのもおれの出番なのか?
それにしても桃花はいつまで付き人してくるんだろう。

リュックに筆記用具を詰め込んでいると桃花は何も言わずに手が大変だとろうと手伝ってくれる。ありがとうと答えれば桃花のちょっと呆れた声が聞こえた。

「半数くらいは唯の知り合いかどうかを聞かれたよ……あ」

ニヤリ。
おれはニヤつきが押されられなくてリュックから桃花に視線を動かした。やってしまったという顔。

「その調子だよ桃花」

「うう、俺としたことが……」


テスト終わりで気が抜けたのか分からないけど、桃花が完全に敬語を取ったのはいい傾向だ。そもそもそんなもの最初からいらないけど。

「………でも、実はあの3人がやられているところを見たら心が少し軽くなったというのもあります」

「気にしすぎだよお前は」

式が桃花の頭を小突くとこういう性格だからと、照れてたように笑う。

「あと少し、貴方に認められるようになったら自信がつくような気がするんです」

「へ?」


桃花の視線がまっすぐおれを見た。元々、不安のイメージを緩和するためにおれと一緒にいただけなのに目的が変わってきている。
まあでも、それで桃花がスッキリするなら良いのかも。


「じゅーぶん、カッコいいけど?」

「まだまだ」


律儀で責任感が強いこの桃花が早く自信を取り戻せるようにおれも頑張ろう。

そう決意し直した時、ポケットのスマホが震えた。秋と優もスマホに気づいたのでグループメッセージだ。氷怜先輩から上の教室に来い、とのことだった。

式がバックを持ち立ち上がると、何故か眉間にしわを寄せてこう言った。

「……じゃあ俺は部活あるから、先輩達のとこ行ってこいよ」

「うん?よく分かったね先輩達だって」

「こういう時のタイミングの良さはあの人達の特技だと思ってる」


思えば先輩達って見計らったように出てくるし、どこかで見ているのかというタイミングで連絡が来る。追加できたメッセージを優が読み上げた。

「桃花と式も暇ならこいだって」

「ほら集まってんのが何となくバレてるだろ……」

「た、確かに」

ただ、そういうのには赤羽さんが絡んでいそうだと全員が思ったが心の奥にしまった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

同室の奴が俺好みだったので喰おうと思ったら逆に俺が喰われた…泣

彩ノ華
BL
高校から寮生活をすることになった主人公(チャラ男)が同室の子(めちゃ美人)を喰べようとしたら逆に喰われた話。 主人公は見た目チャラ男で中身陰キャ童貞。 とにかくはやく童貞卒業したい ゲイではないけどこいつなら余裕で抱ける♡…ってなって手を出そうとします。 美人攻め×偽チャラ男受け *←エロいのにはこれをつけます

俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!

しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎 高校2年生のちょっと激しめの甘党 顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい 身長は170、、、行ってる、、、し ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ! そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、 それは、、、 俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!! 容姿端麗、文武両道 金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい) 一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏! 名前を堂坂レオンくん! 俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで (自己肯定感が高すぎるって? 実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して 結局レオンからわからせという名のおしお、(re 、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!) ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど なんとある日空から人が降って来て! ※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ 信じられるか?いや、信じろ 腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生! 、、、ってなんだ? 兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる? いやなんだよ平凡巻き込まれ役って! あーもう!そんな睨むな!牽制するな! 俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!! ※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません ※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です ※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇‍♀️ ※シリアスは皆無です 終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします

不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う

らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。 唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。 そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。 いったいどうなる!? [強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。 ※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。 ※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。

音楽の神と呼ばれた俺。なんか殺されて気づいたら転生してたんだけど⁉(完)

柿の妖精
BL
俺、牧原甲はもうすぐ二年生になる予定の大学一年生。牧原家は代々超音楽家系で、小さいころからずっと音楽をさせられ、今まで音楽の道を進んできた。そのおかげで楽器でも歌でも音楽に関することは何でもできるようになり、まわりからは、音楽の神と呼ばれていた。そんなある日、大学の友達からバンドのスケットを頼まれてライブハウスへとつながる階段を下りていたら後ろから背中を思いっきり押されて死んでしまった。そして気づいたら代々超芸術家系のメローディア公爵家のリトモに転生していた!?まぁ音楽が出来るなら別にいっか! そんな音楽の神リトモと呪いにかけられた第二王子クオレの恋のお話。 完全処女作です。温かく見守っていただけると嬉しいです。<(_ _)>

異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo
BL
俺がゲイだと自覚したのは、高校生の時だった。中学生までは女性と付き合っていたのだが、高校生になると、「なんか違うな」と感じ始めた。ネットで調べた結果、自分がいわゆるゲイなのではないかとの結論に至った。同級生や友人のことを好きになるも、それを伝える勇気が出なかった。 そうこうしているうちに、俺にはカミングアウトをする勇気がなく、こうして三十歳までゲイであることを隠しながら独身のままである。周りからはなぜ結婚しないのかと聞かれるが、その追及を気持ちを押し殺しながら躱していく日々。俺は幸せになれるのだろうか………。 そんな日々の中、襲われている女性を助けようとして、腹部を刺されてしまった。そして、同性婚が認められる、そんな幸せな世界への転生を祈り静かに息を引き取った。 気が付くと、病弱だが高スペックな身体、アース・ジーマルの体に転生した。病弱が理由で思うような生活は送れなかった。しかし、それには理由があって………。 それから、偶然一人の少年の出会った。一目見た瞬間から恋に落ちてしまった。その少年は、この国王子でそして、俺は側近になることができて………。 魔法と剣、そして貴族院など王道ファンタジーの中にBL要素を詰め込んだ作品となっております。R指定は本当の最後に書く予定なので、純粋にファンタジーの世界のBL恋愛(両片思い)を楽しみたい方向けの作品となっております。この様な作品でよければ、少しだけでも目を通していただければ幸いです。 GW明けからは、週末に投稿予定です。よろしくお願いいたします。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと

糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。 前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!? 「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」 激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。 注※微エロ、エロエロ ・初めはそんなエロくないです。 ・初心者注意 ・ちょいちょい細かな訂正入ります。

BLゲームの脇役に転生した筈なのに

れい
BL
腐男子である牧野ひろはある日、コンビニに寄った際に不慮の事故で命を落としてしまう。 その朝、目を覚ますとなんと彼が生前ハマっていた学園物BLゲームの脇役に転生!? 脇役なのになんで攻略者達に口説かれてんの!? なんで主人公攻略対象者じゃなくて俺を攻略してこうとすんの!? 彼の運命や如何に。 脇役くんの総受け作品になっております。 地雷の方は回れ右、お願い致します(* . .)’’ 随時更新中。

処理中です...