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care!!
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しおりを挟む「懸賞金が俺たちにかかっています」
集会用の静かな部屋で幹部の報告に氷怜は片眉を上げた。
氷怜、暮刃、瑠衣とソファに並んで座った少し後ろに立つ式と桃花が不思議そうな顔でお互いを見る。
減らない奇襲の理由は何とも分かりやすいもので襲わせてきた人間に吐かせればメンバーに懸賞金をかけてるサイトがあり、それを見て金欲しさに狙ったと言う。
なんて愚かだろう。未だうちのメンバーは仕掛けられても、誰ひとりとして倒されてはいない。そんな一般人ごときに負けるような人間はチームに入れていないのだからこれを見て襲いにくるやつはここの事を何も知らないのだ。
「これまた随分と命知らずと言うか、世間知らずというか」
暮刃が困ったように笑った。
重厚な黒のテーブルに置かれた最新型の薄型ノートパソコンに映し出されたそのサイト。モノクロを基調としたシックなインテリアサイトのようなデザインだったが、それが人を襲わせるものだというのだから趣味が悪い。
それぞれの顔が映る隠し撮りのような写真や、表立って活動しているものはメディア紙の一部と思われるものを使われその下に名前、懸賞金と続く。
面白がった瑠衣がけらけら笑ってパソコンを暮刃に押し付けた。
「ナニナニ!いくら?オレいくら~?」
「それくらい自分で見なよ……」
そうため息をつくが暮刃は足を組み直すとそのノートパソコンを慣れた手つきで弄る。
すぐに暮刃はふっと笑って顎に手を置いた。
「大した事ないよ」
「笑ってないで、いくら~?」
「俺たち3人100万ずつ」
「え?!」
叫んだのは式と桃花で2人としてはゼロの数が予想と違う。他の幹部も騒めいている。
それでも当の本人達はなんの感情もなさそうで酒を煽り出してしまう。瑠衣に至っては不満そうに。
「…………やっすう」
「まあまあ」
「全然安くないですよ……」
感覚の違いに呆れ顔で桃花が思わず呟いた。ハッとして口を塞ぐが、氷怜がニヤリと笑った。
「お前が俺に一撃入れられるようになったらこの10倍くれてやる」
「いりません、しかも絶対無理じゃないですか……」
「そう遠くない未来だろ」
ふっと笑った男の認められている言葉に桃花は少なからず心を躍らせる。認められている事がようやく最近受け止められるようになってきた。
その横で暮刃はサイトをながしていく。
氷怜達がチームの顔なので懸賞金はもちろん1番高い。そこから赤羽や元々ネロの頭として有名だった桃花や古株のメンバーが順当に懸賞金が当て振られていた。
だが、どうにも見たこともない人間まで氷怜のチームの人間として映し出されている。
瑠衣があー!と指を指す。
「てゆーかコイツ、オレにファンだってちょろちょろついてきたやつジャン!しつこすぎて出禁にしたのに。いつのまにかウチにいたの?」
「んなわけねぇだろ。もうここに近づけもしねぇ筈だ」
「ダヨネェ……じゃあたまたまオレに引っ付いてたところみて勘違いしてここに書き込んだわけカ」
「随分ずさんな情報サイトだね……」
ことんと暮刃によってテーブルに戻されたパソコンに膝をついて式と桃花が覗き込む。
たしかに、見たこともないメンバーに懸賞金がついていた。しかも隣町の少し耳にした事がある暴れ屋や、唯斗達の高校の関係ない人間まで載っている。
「これじゃあ一般人巻き込んじゃいますね」
「ああ、赤羽に消させる……」
「あ」
頷いた氷怜がタバコを取り出したので幹部の1人がすぐに火をつけた。1番近くに居た式はどうにも、タバコを吸わないせいかそれが遅れてしまう。それでも氷怜はそれを気にしたことはない。
「すみません」
「誰もやれなんて言ってねぇよ、コイツらが勝手にやってんだ」
火をつけた幹部の1人、綺麗な顔が笑う。透き通るような金の髪の紫苑という名の彼はクラブのバーテンダーも務める式が憧れる幹部の1人だ。
紫苑が氷怜に言う。
「金欲しさに手を組んで大勢で、なんてのはあり得ますね」
「そうだねぇ、多分ウチのこと何にも知らない奴が狂ったようにくるかもしれないし」
「一応しばらくは2人以上の行動意識して動け、まあそんなやわな奴はウチにいないつもりだけどな」
その場の幹部メンバーが綺麗に揃った返事をした。
その中で何気なく、式がそのサイトを更新させた。何も意味もなかったが、懸賞金というものが更新されるのかと、頭の片隅で思っただけだったのだが、思わぬものが更新された。
見ていた桃花も息を呑む。
newという表記をつけられた3枚の写真。いつのまにか撮られたのか呑気に笑う制服の彼ら。
「なんで……」
「氷怜さ」
式の呼び声に気付いたものの、機械音によって遮られた。後での合図で手を挙げてスマホを耳に当てる。
赤羽から珍しい事に慌てた声。目を見張った氷怜だが、会話をする事に目から熱が消えていく。その目が据わった時には通話が終了した。
「……唯斗達が荷物置いたまま消えた」
低く重い声。何かを含んだ氷怜の言葉に部屋の空気が一気に冷え込んだ、今にも切りかかりそうなほど冷酷な目を自分の尊敬する人間がしているのだ。
式が静かに画面を氷怜たちに向けた。
「これのせいだ……」
見事に並んだ可愛くて愛おしい3人の名前の下に趣味の悪い懸賞金。
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