sweet!!

仔犬

文字の大きさ
上 下
36 / 379
battle!

2

しおりを挟む


もしかしたら優が今まで買った雑誌の中に先輩達が載っているのかもと思ったので今度みんなで探してみよう。
改めて有名人を探している気分が押し寄せてきて先輩達って凄いんだなとか漠然したイメージに拍車がかかるよね。

「はあ、目立つ人たちなのは当たり前だよなぁ」

「そりゃそうだ」

「それおれ達もちょこっとスナップで載ってるけど全く違うよね」

「は?ちょっと待て」

「ん?」

見せろと、言われ雑誌をおれの頭上で式に優が渡す。

「載ってんじゃねぇかお前らも……」

「ん?そう言ってるじゃん」


わなわなと不機嫌な声の式くんに優と目を合わせた。スナップは街角のコーディネート紹介コーナーだ。少しだけ知り合いが出来るくらいの回数は撮ってもらった。

「言わねぇのはどっちだよ……」

「え、ごめん。でもこれたまに載せてもらってるから。いつも優がコーディネートすると写真とって良いですか?って」

「唯もヘアメイクいつもしてくれてる」

「…………」


優が頷いたが式はついに何も言わなくなってしまった。優が前回のもあるよと、もう一冊雑誌を出すと無言で読み始める。そう言うとこ好きだよ。

「でも商品を背負って写真を取ってもらうのと、好きな服を着て写真を撮ってもらうことは事の大きさが違うよ。嬉しいけどね」

式があまりにも真剣にスナップを見ているからか、優が照れ臭そうに言った。自分なりの作品が認められるのは嬉しいよね。


ふいに風が強く吹き、前髪が視界を覆う。優がワイパーよろしく前髪をどかしてくれると、優の指にはめられた複数の指輪がキラキラと光る。だいたい両手の人差し指と親指にレギュラーの指輪、中指と薬指がコロコロと入れ替わる。中指についた太めゴールドは初見だった。

「あ、それ新しいやつ?可愛い!」

「うんそう。色違いもセットだったけどいる?」

「いる!」

お洒落大好き優は服は当たり前として、アクセサリーや靴、ファッション雑貨まで全部興味がある。おれや秋がつけている指輪もピアスも普段着も殆ど優のお下がりや、優に選んでもらったものだ。

秋が踊りながらも話を聞いていたのか、リズムが遅くなったところで話し出した。

「優~今度のダンスの大会の衣装選んでくんね?アメカジ」

「良いよ」


確かに今度の踊りは大きな振りに力を抜いたルーズな印象で、アメカジが似合いそうだ。

秋が一曲踊り終えると、最初に読んでいた雑誌の瑠衣先輩を眺め綺麗だなとつぶやく。そう、やっぱり綺麗なんだよなぁ。


ようやく雑誌を閉じた式はフェンスに寄りかかりながらため息を吐いて、どちらかと言えば嫌そうにこう言った。

「なんか目立つんだよお前ら」

「そうー?」

「唯のせいじゃない?」

「そろそろユイノセイっていうの言葉法律で禁止しよ?」


全く隙あらばユイノセイですよ。お母さん怒りますよ。
秋はそれに笑って無理、と告げた。きみ達おれの扱いひどいんだから。

おれ達のコントにいちいち呆れてくれる式はいいやつだ。

「お前ら全く気にしてないけど身につけてる物も会話も少し逸脱してる。いい意味でな。ただ俺はチームに入って裏方を手伝えたらって思ってたから目立つやつらと一緒にいないようにしてた」

そこまではっきり言われるとは思ってなかった。彼は真面目な様子で続ける。

「でも今回からはオモテに出て良いって言われたからな」

「それで護衛も了承してくれてんだ?」


まっすぐな瞳で頷かれた。こんなに真面目で良い人すら魅力する氷怜先輩たちはやはりすごいのだなと思う。そしてそれが自分の彼氏になろうとは人生の転び方はまだまだ予測できそうにない。


「式、かっこいいね。唯の言った通り俺も好きだな」

「でっしょーおれの推し!」

「俺の式なんだけどー」

「いや、秋、お前のでもないが……」


横から秋が入って茶化し始める。みんな式が早くも気に入っている証拠だ。真面目に返事をする式愛おしいな。


「……そんなんだからお前ら目ぇつけられんじゃねえの」

「そんなってなにがだ?おれは今日も明日も楽しく生きるよ」


おれの笑顔に式が心底めんどくさそうな顔をした。いつも真顔な彼の眉間に綺麗に一筋シワが寄るのだ。思わずそこをボタンのように押してしまった。

「え、どうしたの式くん綺麗なシワが!」

「お前らといると俺のペースが崩れる……」

項垂れた彼はなんだか可愛かった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!

しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎 高校2年生のちょっと激しめの甘党 顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい 身長は170、、、行ってる、、、し ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ! そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、 それは、、、 俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!! 容姿端麗、文武両道 金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい) 一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏! 名前を堂坂レオンくん! 俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで (自己肯定感が高すぎるって? 実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して 結局レオンからわからせという名のおしお、(re 、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!) ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど なんとある日空から人が降って来て! ※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ 信じられるか?いや、信じろ 腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生! 、、、ってなんだ? 兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる? いやなんだよ平凡巻き込まれ役って! あーもう!そんな睨むな!牽制するな! 俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!! ※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません ※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です ※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇‍♀️ ※シリアスは皆無です 終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします

漢方薬局「泡影堂」調剤録

珈琲屋
BL
母子家庭苦労人真面目長男(17)× 生活力0放浪癖漢方医(32)の体格差&年の差恋愛(予定)。じりじり片恋。 キヨフミには最近悩みがあった。3歳児と5歳児を抱えての家事と諸々、加えて勉強。父はとうになく、母はいっさい頼りにならず、妹は受験真っ最中だ。この先俺が生き残るには…そうだ、「泡影堂」にいこう。 高校生×漢方医の先生の話をメインに、二人に関わる人々の話を閑話で書いていく予定です。 メイン2章、閑話1章の順で進めていきます。恋愛は非常にゆっくりです。

チャラ男は愛されたい

梅茶
BL
幼い頃優等生としてもてはやされていた主人公。しかし、母が浮気をしたことで親は離婚となり、父について行き入った中学校は世紀末かと思うほどの不良校だった。浮かないためにチャラ男として過ごす日々にストレスが溜まった主人公は、高校はこの学校にいる奴らが絶対に入れないような所にしようと決意し、山奥にひっそりとたつ超一流学校への入学を決める…。 きまぐれ更新ですし頭のおかしいキャラ率高めです…寛容な心で見て頂けたら…

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️ 第12回BL小説大賞に参加中! よろしくお願いします🙇‍♀️

処理中です...