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battle!
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しおりを挟むもしかしたら優が今まで買った雑誌の中に先輩達が載っているのかもと思ったので今度みんなで探してみよう。
改めて有名人を探している気分が押し寄せてきて先輩達って凄いんだなとか漠然したイメージに拍車がかかるよね。
「はあ、目立つ人たちなのは当たり前だよなぁ」
「そりゃそうだ」
「それおれ達もちょこっとスナップで載ってるけど全く違うよね」
「は?ちょっと待て」
「ん?」
見せろと、言われ雑誌をおれの頭上で式に優が渡す。
「載ってんじゃねぇかお前らも……」
「ん?そう言ってるじゃん」
わなわなと不機嫌な声の式くんに優と目を合わせた。スナップは街角のコーディネート紹介コーナーだ。少しだけ知り合いが出来るくらいの回数は撮ってもらった。
「言わねぇのはどっちだよ……」
「え、ごめん。でもこれたまに載せてもらってるから。いつも優がコーディネートすると写真とって良いですか?って」
「唯もヘアメイクいつもしてくれてる」
「…………」
優が頷いたが式はついに何も言わなくなってしまった。優が前回のもあるよと、もう一冊雑誌を出すと無言で読み始める。そう言うとこ好きだよ。
「でも商品を背負って写真を取ってもらうのと、好きな服を着て写真を撮ってもらうことは事の大きさが違うよ。嬉しいけどね」
式があまりにも真剣にスナップを見ているからか、優が照れ臭そうに言った。自分なりの作品が認められるのは嬉しいよね。
ふいに風が強く吹き、前髪が視界を覆う。優がワイパーよろしく前髪をどかしてくれると、優の指にはめられた複数の指輪がキラキラと光る。だいたい両手の人差し指と親指にレギュラーの指輪、中指と薬指がコロコロと入れ替わる。中指についた太めゴールドは初見だった。
「あ、それ新しいやつ?可愛い!」
「うんそう。色違いもセットだったけどいる?」
「いる!」
お洒落大好き優は服は当たり前として、アクセサリーや靴、ファッション雑貨まで全部興味がある。おれや秋がつけている指輪もピアスも普段着も殆ど優のお下がりや、優に選んでもらったものだ。
秋が踊りながらも話を聞いていたのか、リズムが遅くなったところで話し出した。
「優~今度のダンスの大会の衣装選んでくんね?アメカジ」
「良いよ」
確かに今度の踊りは大きな振りに力を抜いたルーズな印象で、アメカジが似合いそうだ。
秋が一曲踊り終えると、最初に読んでいた雑誌の瑠衣先輩を眺め綺麗だなとつぶやく。そう、やっぱり綺麗なんだよなぁ。
ようやく雑誌を閉じた式はフェンスに寄りかかりながらため息を吐いて、どちらかと言えば嫌そうにこう言った。
「なんか目立つんだよお前ら」
「そうー?」
「唯のせいじゃない?」
「そろそろユイノセイっていうの言葉法律で禁止しよ?」
全く隙あらばユイノセイですよ。お母さん怒りますよ。
秋はそれに笑って無理、と告げた。きみ達おれの扱いひどいんだから。
おれ達のコントにいちいち呆れてくれる式はいいやつだ。
「お前ら全く気にしてないけど身につけてる物も会話も少し逸脱してる。いい意味でな。ただ俺はチームに入って裏方を手伝えたらって思ってたから目立つやつらと一緒にいないようにしてた」
そこまではっきり言われるとは思ってなかった。彼は真面目な様子で続ける。
「でも今回からはオモテに出て良いって言われたからな」
「それで護衛も了承してくれてんだ?」
まっすぐな瞳で頷かれた。こんなに真面目で良い人すら魅力する氷怜先輩たちはやはりすごいのだなと思う。そしてそれが自分の彼氏になろうとは人生の転び方はまだまだ予測できそうにない。
「式、かっこいいね。唯の言った通り俺も好きだな」
「でっしょーおれの推し!」
「俺の式なんだけどー」
「いや、秋、お前のでもないが……」
横から秋が入って茶化し始める。みんな式が早くも気に入っている証拠だ。真面目に返事をする式愛おしいな。
「……そんなんだからお前ら目ぇつけられんじゃねえの」
「そんなってなにがだ?おれは今日も明日も楽しく生きるよ」
おれの笑顔に式が心底めんどくさそうな顔をした。いつも真顔な彼の眉間に綺麗に一筋シワが寄るのだ。思わずそこをボタンのように押してしまった。
「え、どうしたの式くん綺麗なシワが!」
「お前らといると俺のペースが崩れる……」
項垂れた彼はなんだか可愛かった。
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