天使のローブ

茉莉花 香乃

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第七章

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みんなで揃って勇者の館に入る。ジョナスと僕の手を握り緊張している。

「大丈夫?」
「うん…。こんなふうになってるんだね」
「二階だよ」
「二階?」
「ああ、わからない?この階段を上がって上に行くんだ。そうしたら、寝室がある」

ジョナスの腕に抱きつき、恐る恐る階段を上る。アレースの部屋に入り驚いている。

「これ!プレゼントしてくれたのと同じだね?家の中に置くものだったの?」

ああ…やっぱり、わかってなかったんだ。

「これはベッドで、ここで寝るんだ」
「そうなんだ」
「後で、洞窟に入れようか?」
「うわぁ、ありがとう」

ベッドに座りその手触りを確かめる。

「これは、無かったね?」

掛け布団を指差して首を傾げる。

「ああ、ドラゴンなら必要ないと思ったんだ」
「要るなら、俺がなんとかしてやる」

ジョナスとダレルの言葉を聞いて嬉しそうだ。

「僕、この姿のままで寝る」
「じゃあ、一緒に行こうか?」

ジョナスが手を差し出すとピョンとベッドから降りて、飛びついた。ジョナスが羊皮紙を開けるとたちまち二人は消える。そして、直ぐに戻ってきた。

「どうだった?」
「ありがとう……。アレースがよく来たねって…大きくなったなって」

涙を一筋流し、笑顔を見せる。

「じゃあ、次はマールクに会いに行くか?」

ダレルの言葉に素直に従い、マールクとプレートが掛かる部屋に入る。戻ると先ほどよりもはしゃいでる。

「みんな、可愛いって言ってくれた」

嬉しそうな顔で、イーノックに付いてメリクに会いに行く。

「あのね、メリクが遊んでくれたの」

無邪気にイーノックに抱きついている。残るはミネルヴァとミシェルだ。

「先にどっちと会いたい?」
「……ミ…ミ、ミネルヴァ」

そう言って、アシュリーの手を握る。上目遣いにアシュリーを見て反応を確かめている。アシュリーは驚きながらも行くかとアルシャントの手をしっかり握り返した。

『行ってくる』

僕に向けた言葉はアルシャントにも聞こえてる。アシュリーはアルシャントの白銀の髪をひと撫でして、歴代ミネルヴァに会いに羊皮紙に消えた。





「次で最後だね。行こうか?」
「うん…」
「会いたくない?」
「ミシェルは怒らない?」
「怒らないよ。ミネルヴァにも怒られなかったでしょ?」
「うん。よく来たなって言ってくれた。ようやく謝れたから…」
「良かったね」
「うん。怒ってるって言われたけど、もう良いよって笑ってくれた」
「そうなんだ。ミシェルも許してくれるよ」

二人で手を繋ぎ、羊皮紙を開ける。すると直ぐに実家の庭に立っていた。

「待っていたわ、久しぶりね」
「私の時はドラゴンのままだったわよね?すごく可愛いわ」

次々に話される歓迎の言葉にアルシャントはニコニコしている。

「よく来たな」

ミシェルが声を掛けると途端に俯く。

「おいで」

ミシェルが両手を広げ待っている。アルシャントが泣きながら飛び込んだ。

「ごめんね、わがまま言って…素直じゃなくて。…ありがとう」
「大きくなったな。赤ん坊だったのに」
「アルシャントは生まれて直ぐは人型にはなれなかったのですか?」
「ドラゴンのままだったな。俺が死ぬ前に、ようやく人型になれたかな。でも、ヨチヨチ歩きだったから…可愛かったな」

懐かしむように抱きしめる。

「あのね…また、来てもいい?」
「そうだな…ここは過去だから…あまり頻繁に来るのは良くない」

ミシェルはやはり厳しいことを言うんだな。アルシャントは下を向いてしまった。

「でも、寂しくなったらおいで。お前もいつでも会えると思えば、そんなに具合が悪くなるくらい我慢しなくてもいいだろ?」
「うん!ありがとう。また来るね」

全員と挨拶して再会を誓い、お別れを言う。呪文を唱えると勇者の館のミシェルの部屋に戻った。

「あのね、アルシャント。ミシェルもあまり来るなって言ってたけど、この羊皮紙に入ってる間はこっちの時間は止まっちゃうんだ。この精霊の森と僕たちの世界とは時間の流れが違うらしいから、よくわからないけど気をつけてね」
「うん。わかってる」

そうか、この森の中のことは全てがアルシャントの意思なのだ。それでも、館に入れなかったり、ミシェルを気にしてたんだな。なんか健気!思わず抱きしめる。
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