162 / 173
第七章
31
しおりを挟む
みんなで揃って勇者の館に入る。ジョナスと僕の手を握り緊張している。
「大丈夫?」
「うん…。こんなふうになってるんだね」
「二階だよ」
「二階?」
「ああ、わからない?この階段を上がって上に行くんだ。そうしたら、寝室がある」
ジョナスの腕に抱きつき、恐る恐る階段を上る。アレースの部屋に入り驚いている。
「これ!プレゼントしてくれたのと同じだね?家の中に置くものだったの?」
ああ…やっぱり、わかってなかったんだ。
「これはベッドで、ここで寝るんだ」
「そうなんだ」
「後で、洞窟に入れようか?」
「うわぁ、ありがとう」
ベッドに座りその手触りを確かめる。
「これは、無かったね?」
掛け布団を指差して首を傾げる。
「ああ、ドラゴンなら必要ないと思ったんだ」
「要るなら、俺がなんとかしてやる」
ジョナスとダレルの言葉を聞いて嬉しそうだ。
「僕、この姿のままで寝る」
「じゃあ、一緒に行こうか?」
ジョナスが手を差し出すとピョンとベッドから降りて、飛びついた。ジョナスが羊皮紙を開けるとたちまち二人は消える。そして、直ぐに戻ってきた。
「どうだった?」
「ありがとう……。アレースがよく来たねって…大きくなったなって」
涙を一筋流し、笑顔を見せる。
「じゃあ、次はマールクに会いに行くか?」
ダレルの言葉に素直に従い、マールクとプレートが掛かる部屋に入る。戻ると先ほどよりもはしゃいでる。
「みんな、可愛いって言ってくれた」
嬉しそうな顔で、イーノックに付いてメリクに会いに行く。
「あのね、メリクが遊んでくれたの」
無邪気にイーノックに抱きついている。残るはミネルヴァとミシェルだ。
「先にどっちと会いたい?」
「……ミ…ミ、ミネルヴァ」
そう言って、アシュリーの手を握る。上目遣いにアシュリーを見て反応を確かめている。アシュリーは驚きながらも行くかとアルシャントの手をしっかり握り返した。
『行ってくる』
僕に向けた言葉はアルシャントにも聞こえてる。アシュリーはアルシャントの白銀の髪をひと撫でして、歴代ミネルヴァに会いに羊皮紙に消えた。
「次で最後だね。行こうか?」
「うん…」
「会いたくない?」
「ミシェルは怒らない?」
「怒らないよ。ミネルヴァにも怒られなかったでしょ?」
「うん。よく来たなって言ってくれた。ようやく謝れたから…」
「良かったね」
「うん。怒ってるって言われたけど、もう良いよって笑ってくれた」
「そうなんだ。ミシェルも許してくれるよ」
二人で手を繋ぎ、羊皮紙を開ける。すると直ぐに実家の庭に立っていた。
「待っていたわ、久しぶりね」
「私の時はドラゴンのままだったわよね?すごく可愛いわ」
次々に話される歓迎の言葉にアルシャントはニコニコしている。
「よく来たな」
ミシェルが声を掛けると途端に俯く。
「おいで」
ミシェルが両手を広げ待っている。アルシャントが泣きながら飛び込んだ。
「ごめんね、わがまま言って…素直じゃなくて。…ありがとう」
「大きくなったな。赤ん坊だったのに」
「アルシャントは生まれて直ぐは人型にはなれなかったのですか?」
「ドラゴンのままだったな。俺が死ぬ前に、ようやく人型になれたかな。でも、ヨチヨチ歩きだったから…可愛かったな」
懐かしむように抱きしめる。
「あのね…また、来てもいい?」
「そうだな…ここは過去だから…あまり頻繁に来るのは良くない」
ミシェルはやはり厳しいことを言うんだな。アルシャントは下を向いてしまった。
「でも、寂しくなったらおいで。お前もいつでも会えると思えば、そんなに具合が悪くなるくらい我慢しなくてもいいだろ?」
「うん!ありがとう。また来るね」
全員と挨拶して再会を誓い、お別れを言う。呪文を唱えると勇者の館のミシェルの部屋に戻った。
「あのね、アルシャント。ミシェルもあまり来るなって言ってたけど、この羊皮紙に入ってる間はこっちの時間は止まっちゃうんだ。この精霊の森と僕たちの世界とは時間の流れが違うらしいから、よくわからないけど気をつけてね」
「うん。わかってる」
そうか、この森の中のことは全てがアルシャントの意思なのだ。それでも、館に入れなかったり、ミシェルを気にしてたんだな。なんか健気!思わず抱きしめる。
「大丈夫?」
「うん…。こんなふうになってるんだね」
「二階だよ」
「二階?」
「ああ、わからない?この階段を上がって上に行くんだ。そうしたら、寝室がある」
ジョナスの腕に抱きつき、恐る恐る階段を上る。アレースの部屋に入り驚いている。
「これ!プレゼントしてくれたのと同じだね?家の中に置くものだったの?」
ああ…やっぱり、わかってなかったんだ。
「これはベッドで、ここで寝るんだ」
「そうなんだ」
「後で、洞窟に入れようか?」
「うわぁ、ありがとう」
ベッドに座りその手触りを確かめる。
「これは、無かったね?」
掛け布団を指差して首を傾げる。
「ああ、ドラゴンなら必要ないと思ったんだ」
「要るなら、俺がなんとかしてやる」
ジョナスとダレルの言葉を聞いて嬉しそうだ。
「僕、この姿のままで寝る」
「じゃあ、一緒に行こうか?」
ジョナスが手を差し出すとピョンとベッドから降りて、飛びついた。ジョナスが羊皮紙を開けるとたちまち二人は消える。そして、直ぐに戻ってきた。
「どうだった?」
「ありがとう……。アレースがよく来たねって…大きくなったなって」
涙を一筋流し、笑顔を見せる。
「じゃあ、次はマールクに会いに行くか?」
ダレルの言葉に素直に従い、マールクとプレートが掛かる部屋に入る。戻ると先ほどよりもはしゃいでる。
「みんな、可愛いって言ってくれた」
嬉しそうな顔で、イーノックに付いてメリクに会いに行く。
「あのね、メリクが遊んでくれたの」
無邪気にイーノックに抱きついている。残るはミネルヴァとミシェルだ。
「先にどっちと会いたい?」
「……ミ…ミ、ミネルヴァ」
そう言って、アシュリーの手を握る。上目遣いにアシュリーを見て反応を確かめている。アシュリーは驚きながらも行くかとアルシャントの手をしっかり握り返した。
『行ってくる』
僕に向けた言葉はアルシャントにも聞こえてる。アシュリーはアルシャントの白銀の髪をひと撫でして、歴代ミネルヴァに会いに羊皮紙に消えた。
「次で最後だね。行こうか?」
「うん…」
「会いたくない?」
「ミシェルは怒らない?」
「怒らないよ。ミネルヴァにも怒られなかったでしょ?」
「うん。よく来たなって言ってくれた。ようやく謝れたから…」
「良かったね」
「うん。怒ってるって言われたけど、もう良いよって笑ってくれた」
「そうなんだ。ミシェルも許してくれるよ」
二人で手を繋ぎ、羊皮紙を開ける。すると直ぐに実家の庭に立っていた。
「待っていたわ、久しぶりね」
「私の時はドラゴンのままだったわよね?すごく可愛いわ」
次々に話される歓迎の言葉にアルシャントはニコニコしている。
「よく来たな」
ミシェルが声を掛けると途端に俯く。
「おいで」
ミシェルが両手を広げ待っている。アルシャントが泣きながら飛び込んだ。
「ごめんね、わがまま言って…素直じゃなくて。…ありがとう」
「大きくなったな。赤ん坊だったのに」
「アルシャントは生まれて直ぐは人型にはなれなかったのですか?」
「ドラゴンのままだったな。俺が死ぬ前に、ようやく人型になれたかな。でも、ヨチヨチ歩きだったから…可愛かったな」
懐かしむように抱きしめる。
「あのね…また、来てもいい?」
「そうだな…ここは過去だから…あまり頻繁に来るのは良くない」
ミシェルはやはり厳しいことを言うんだな。アルシャントは下を向いてしまった。
「でも、寂しくなったらおいで。お前もいつでも会えると思えば、そんなに具合が悪くなるくらい我慢しなくてもいいだろ?」
「うん!ありがとう。また来るね」
全員と挨拶して再会を誓い、お別れを言う。呪文を唱えると勇者の館のミシェルの部屋に戻った。
「あのね、アルシャント。ミシェルもあまり来るなって言ってたけど、この羊皮紙に入ってる間はこっちの時間は止まっちゃうんだ。この精霊の森と僕たちの世界とは時間の流れが違うらしいから、よくわからないけど気をつけてね」
「うん。わかってる」
そうか、この森の中のことは全てがアルシャントの意思なのだ。それでも、館に入れなかったり、ミシェルを気にしてたんだな。なんか健気!思わず抱きしめる。
0
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる