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第七章
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ギルバートとアルシャントの洞窟の前に立つ。アシュリーには何かあったら必ず助けに行くから、直ぐに呼ぶように言い含められた。うんって返事をしなければ、到底僕だけで行くことを許してくれそうになかった。
何かがあるはずないと思うけれど、それは気持ちの問題だから。僕を心配するアシュリーは真剣そのもので、それだけで心強い。心はいつも一緒。一人で立っていても肩を抱かれているような安心感がある。
「アルシャント、具合はどう?」
「ミシェル…来てくれたんだね」
「あのね、僕はジュリアンって言うんだ」
昨日もした訂正を今日もする。
「昨日はありがとう。随分良くなったよ……ジュリアン」
「そう、良かった」
「あのね、僕は…ずっとひとりでここにいるんだ」
「うん」
「可哀想だと思わない?」
「そうだね」
「そうでしょ?なら…、一緒に…」
居心地の良さそうな寝床で横になっている。伝わる気は昨日より良くなっている。けれど、全快してはいないようだ。
「ジュリアン、一緒に遊ぼって約束したよね?」
その一緒は“遊ぼ”ではなく“残って共に生きて”って言いたいのかな?洞窟に来る前にシルベスターに聞いた。
「随分素っ気ない態度だったと思うんだけど、アルシャントは何考えてるの?」
「わたしにもわかりません」
困惑した様子は本当にわからないのだろう。
「ただ、ミネルヴァの気が強いので怖気づいてるのかもしれませんね。アシュリーが一緒にいる時は何も言えないのかもしれません」
アシュリーが守ってくれてるんだ。だから、大丈夫。
「僕の夢の中でしょ?」
「ああ、あれは夢の中なんだね」
「そうだよ。それに、次の日には忘れていたから…ごめんね」
「ううん、ここと下界は違うからね…。仕方ないよ」
寂しそうなアルシャントは僕にここに残れとは言わない。思っているけれど…、言えないってことなのかな?
言えない言葉を、言えないのならそれが全てと終わらせてはいけない。
あと百年、そして、その先の国を護らなければならないんだから。
「僕たちが来たから寂しくないね」
「でも、直ぐに帰っちゃうんだろ?ジュリアンだけは残ってくれる?」
やっと言った。
グッとお腹に力を入れる。そうしないと立っていられない。やはり、直接言われると自分から言うように仕向けたのに…わかっててもくるものがある。深く息をして魔力が落ち着くのを待つ。
「アシュリーを呼べ」
ギルバートの大きな身体に凭れながら深呼吸する。
「うん『アシュ…』」
『直ぐに行く』
それだけで、ふわっと安心感に包まれる。
「ミネルヴァを呼んだら…僕…」
「アシュリーはね、ミネルヴァじゃないんだよ?」
「だって、凄く怒ってて…僕…僕…怖い。いつものミネルヴァじゃないんだ。あの時より強い。あの時はミシェルが自分から残るって言ってくれたから…」
「あのね、アシュリーは怒ってないよ?」
「ジュリ!」
「アシュ!ありがとう」
「お礼なんていらない」
スーッと魔力が満ちるのを感じる。
「アルシャント・カーラ・ドランスフィード・セネティル=カノファム、今のでわかったか?」
「う、うん」
「今のって何?ギル、アシュリーが何かした?」
「何もしていないさ。でも、何もしなくても、ジュリアンの魔力が回復した。それは二人の結びつきだ。前に言っただろ?ミネルヴァがいくらここにミシェルを残したくないと思ったところで、ジュリアンはミシェルじゃない。勿論アシュリーもミネルヴァじゃない。でも、この結びつきはミネルヴァが望んだことだ。ハーマンからアシュリーに、それは歴代のミネルヴァが受け継いだ力だ。そうだろマクシミリアン」
いつの間にかここに全員が揃っていた。
「ハーマンはメイヴィスと結ばれなかったから…余計にミネルヴァの思いが違う意味で受け継がれたんだろ。それはアルシャントとは関係ないけどな」
五人で昨日と同じようにアルシャントの周りを囲む。
アルシャントの気持ちが昨日と違うからか、溢れる五色の光はその輝きが違う。アルシャントの体色が漆黒、黄金、翡翠、瑠璃と次々と変わり、白銀に光り輝いた。
綺麗だ。
正に神…北の山の神だ。
何かがあるはずないと思うけれど、それは気持ちの問題だから。僕を心配するアシュリーは真剣そのもので、それだけで心強い。心はいつも一緒。一人で立っていても肩を抱かれているような安心感がある。
「アルシャント、具合はどう?」
「ミシェル…来てくれたんだね」
「あのね、僕はジュリアンって言うんだ」
昨日もした訂正を今日もする。
「昨日はありがとう。随分良くなったよ……ジュリアン」
「そう、良かった」
「あのね、僕は…ずっとひとりでここにいるんだ」
「うん」
「可哀想だと思わない?」
「そうだね」
「そうでしょ?なら…、一緒に…」
居心地の良さそうな寝床で横になっている。伝わる気は昨日より良くなっている。けれど、全快してはいないようだ。
「ジュリアン、一緒に遊ぼって約束したよね?」
その一緒は“遊ぼ”ではなく“残って共に生きて”って言いたいのかな?洞窟に来る前にシルベスターに聞いた。
「随分素っ気ない態度だったと思うんだけど、アルシャントは何考えてるの?」
「わたしにもわかりません」
困惑した様子は本当にわからないのだろう。
「ただ、ミネルヴァの気が強いので怖気づいてるのかもしれませんね。アシュリーが一緒にいる時は何も言えないのかもしれません」
アシュリーが守ってくれてるんだ。だから、大丈夫。
「僕の夢の中でしょ?」
「ああ、あれは夢の中なんだね」
「そうだよ。それに、次の日には忘れていたから…ごめんね」
「ううん、ここと下界は違うからね…。仕方ないよ」
寂しそうなアルシャントは僕にここに残れとは言わない。思っているけれど…、言えないってことなのかな?
言えない言葉を、言えないのならそれが全てと終わらせてはいけない。
あと百年、そして、その先の国を護らなければならないんだから。
「僕たちが来たから寂しくないね」
「でも、直ぐに帰っちゃうんだろ?ジュリアンだけは残ってくれる?」
やっと言った。
グッとお腹に力を入れる。そうしないと立っていられない。やはり、直接言われると自分から言うように仕向けたのに…わかっててもくるものがある。深く息をして魔力が落ち着くのを待つ。
「アシュリーを呼べ」
ギルバートの大きな身体に凭れながら深呼吸する。
「うん『アシュ…』」
『直ぐに行く』
それだけで、ふわっと安心感に包まれる。
「ミネルヴァを呼んだら…僕…」
「アシュリーはね、ミネルヴァじゃないんだよ?」
「だって、凄く怒ってて…僕…僕…怖い。いつものミネルヴァじゃないんだ。あの時より強い。あの時はミシェルが自分から残るって言ってくれたから…」
「あのね、アシュリーは怒ってないよ?」
「ジュリ!」
「アシュ!ありがとう」
「お礼なんていらない」
スーッと魔力が満ちるのを感じる。
「アルシャント・カーラ・ドランスフィード・セネティル=カノファム、今のでわかったか?」
「う、うん」
「今のって何?ギル、アシュリーが何かした?」
「何もしていないさ。でも、何もしなくても、ジュリアンの魔力が回復した。それは二人の結びつきだ。前に言っただろ?ミネルヴァがいくらここにミシェルを残したくないと思ったところで、ジュリアンはミシェルじゃない。勿論アシュリーもミネルヴァじゃない。でも、この結びつきはミネルヴァが望んだことだ。ハーマンからアシュリーに、それは歴代のミネルヴァが受け継いだ力だ。そうだろマクシミリアン」
いつの間にかここに全員が揃っていた。
「ハーマンはメイヴィスと結ばれなかったから…余計にミネルヴァの思いが違う意味で受け継がれたんだろ。それはアルシャントとは関係ないけどな」
五人で昨日と同じようにアルシャントの周りを囲む。
アルシャントの気持ちが昨日と違うからか、溢れる五色の光はその輝きが違う。アルシャントの体色が漆黒、黄金、翡翠、瑠璃と次々と変わり、白銀に光り輝いた。
綺麗だ。
正に神…北の山の神だ。
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