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第五章
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高度な魔法はやはり、なかなかできない。
その一つが移転魔法だ。
普通は七年生で習う。だから、ロドニー兄上も今年から。食堂で会った時に苦戦していると苦笑いを漏らしていた。
優秀な兄上でも難しいのなら僕たち五年生が簡単にできるわけがなかった。
僕たちが移転魔法に挑戦する…それは、無謀なことなのかもしれない。
初めは僕の些細な一言だった。
「移転魔法って便利だよね」
どんな魔法を習いたいかとクラスメイトと話していた時だった。国王陛下や王太子殿下が家に来られた時のことをふと思い出してボソッと呟いた。
王宮と貴族の家を結ぶものではなく、行きたい所に一瞬で行ける魔法。それは、行ったことがある場所にしか使えないけれど、便利なことに変わりない。五年生になったら習いたいな…そんなことを思っていたけれど、本当に習えるかどうかは別の問題だ。
バーンズ先生が許して下さらなければ教えてもらえないんだから。
「ん~…じゃあ、ダレルが去年食堂で披露したあの鳥ができたら…そうだな…全員だよ?全員ができたら、移転魔法の前段階の手紙を届ける魔法を教えてあげよう。そして、それが全員できたら…それからだ。いいね?」
声を届けるのではなく、クラレンス兄上の部屋で見せてくれた小さな紙の鳥を自分に返すことが試験になる。
そして、手紙を渡したい相手に一瞬で送る魔法。これは移転魔法を習う前に必ず習得しなければならない。
来年は普通にカリキュラムに組まれているけれど、今年はまだ習う予定ではなかった。
建物の中は、防御が施されているから不躾な手紙が直接誰かの目の前に届くということはない。けれど、例えば僕の家には執事の部屋に手紙が届くようになっていて、危険なものとそうでないものを分けるのだ。危険なものなどほとんどないそうだけど、たまに差出人不明の不審な手紙が紛れているそうだ。今回、残留思念を頼りに紙の鳥を送る。けれど、その残留思念を消し去り送ってくる…それは正に怪しい手紙ということになる。
バーンズ先生は次の授業の時に紙をみんなに配った。
「これはある人たちに書いてもらったメモだよ。複数の人に書いてもらったから、わたしも一枚一枚を誰が書いたかはわからない。そのメモに自分の名前を書いて、誰の紙の鳥が相手に届いたのかを、わたしがわかるようにする。そして、届いたことを知らせる鳥が戻ってくる…両方ができれば合格。
メモは何枚もある。面白がって何枚も書いてくれたからね。ただし、他の授業を疎かにしないようにね」
そして、バーンズ先生は授業の初めにダレルを呼び、耳元で何かを囁いた。
「やってみる?」
「はい!」
ダレルが勢いよく返事をするから、何事かとみんな驚いた。
「じゃあ、隣のわたしの部屋に行ってごらん?特別に許可をもらったんだよ」
「はい!」
ダレルが空間に渦を巻くように消え、次の瞬間、ダンッ、ガタンと盛大な音がして「痛!」とダレルの声が隣の部屋から聞こえた。
魔法学の教室の隣にはバーンズ先生の部屋がある。
何度か入ったことがあるけれど、机と椅子の他に簡易なベッドが置いてあった。研究に没頭して寮に帰るのがめんどくさい時があるんだと以前仰ってた。
本棚には難しい本や魔法の道具が所狭しと並んでいて、とても楽しい部屋だ。
ふわふわと浮いているティーセットがあったり、先生が使役している使い魔が寝ていたり、いつも箒が勝手に掃除をしている。
ある時、先生に用事があり部屋に入ると、使い魔が箒と戯れていた。箒に遊ぶ気はないらしく、仕事を邪魔されて嫌がっているみたいだった。
その部屋から呻き声が聞こえる。
「せ、んせい…」
先生が急いで部屋の戸を開けると、みんなが続いた。机にもたれ掛かり箒の上に尻もちをついたダレルが肘をさすってる。床には机にあったのだろう先生の研究途中のメモや道具が散らばってる。
「よくやったね!」
「「「凄い!」」」
「もしかして、移転魔法?」
「どうやったの?」
先生は部屋を荒らされたことを怒ることはなく、初めてで高度な移転魔法を成功させたダレルを褒めた。
クラスメイトも興奮してダレルに質問攻めにする。
ただ箒だけは部屋が散らかったことと、上に乗られたことが嫌だったらしく、ダレルがみんなに手を引っ張られて立ち上がるとまるで部屋から追い出すようにみんなのお尻に攻撃を仕掛けた。
その一つが移転魔法だ。
普通は七年生で習う。だから、ロドニー兄上も今年から。食堂で会った時に苦戦していると苦笑いを漏らしていた。
優秀な兄上でも難しいのなら僕たち五年生が簡単にできるわけがなかった。
僕たちが移転魔法に挑戦する…それは、無謀なことなのかもしれない。
初めは僕の些細な一言だった。
「移転魔法って便利だよね」
どんな魔法を習いたいかとクラスメイトと話していた時だった。国王陛下や王太子殿下が家に来られた時のことをふと思い出してボソッと呟いた。
王宮と貴族の家を結ぶものではなく、行きたい所に一瞬で行ける魔法。それは、行ったことがある場所にしか使えないけれど、便利なことに変わりない。五年生になったら習いたいな…そんなことを思っていたけれど、本当に習えるかどうかは別の問題だ。
バーンズ先生が許して下さらなければ教えてもらえないんだから。
「ん~…じゃあ、ダレルが去年食堂で披露したあの鳥ができたら…そうだな…全員だよ?全員ができたら、移転魔法の前段階の手紙を届ける魔法を教えてあげよう。そして、それが全員できたら…それからだ。いいね?」
声を届けるのではなく、クラレンス兄上の部屋で見せてくれた小さな紙の鳥を自分に返すことが試験になる。
そして、手紙を渡したい相手に一瞬で送る魔法。これは移転魔法を習う前に必ず習得しなければならない。
来年は普通にカリキュラムに組まれているけれど、今年はまだ習う予定ではなかった。
建物の中は、防御が施されているから不躾な手紙が直接誰かの目の前に届くということはない。けれど、例えば僕の家には執事の部屋に手紙が届くようになっていて、危険なものとそうでないものを分けるのだ。危険なものなどほとんどないそうだけど、たまに差出人不明の不審な手紙が紛れているそうだ。今回、残留思念を頼りに紙の鳥を送る。けれど、その残留思念を消し去り送ってくる…それは正に怪しい手紙ということになる。
バーンズ先生は次の授業の時に紙をみんなに配った。
「これはある人たちに書いてもらったメモだよ。複数の人に書いてもらったから、わたしも一枚一枚を誰が書いたかはわからない。そのメモに自分の名前を書いて、誰の紙の鳥が相手に届いたのかを、わたしがわかるようにする。そして、届いたことを知らせる鳥が戻ってくる…両方ができれば合格。
メモは何枚もある。面白がって何枚も書いてくれたからね。ただし、他の授業を疎かにしないようにね」
そして、バーンズ先生は授業の初めにダレルを呼び、耳元で何かを囁いた。
「やってみる?」
「はい!」
ダレルが勢いよく返事をするから、何事かとみんな驚いた。
「じゃあ、隣のわたしの部屋に行ってごらん?特別に許可をもらったんだよ」
「はい!」
ダレルが空間に渦を巻くように消え、次の瞬間、ダンッ、ガタンと盛大な音がして「痛!」とダレルの声が隣の部屋から聞こえた。
魔法学の教室の隣にはバーンズ先生の部屋がある。
何度か入ったことがあるけれど、机と椅子の他に簡易なベッドが置いてあった。研究に没頭して寮に帰るのがめんどくさい時があるんだと以前仰ってた。
本棚には難しい本や魔法の道具が所狭しと並んでいて、とても楽しい部屋だ。
ふわふわと浮いているティーセットがあったり、先生が使役している使い魔が寝ていたり、いつも箒が勝手に掃除をしている。
ある時、先生に用事があり部屋に入ると、使い魔が箒と戯れていた。箒に遊ぶ気はないらしく、仕事を邪魔されて嫌がっているみたいだった。
その部屋から呻き声が聞こえる。
「せ、んせい…」
先生が急いで部屋の戸を開けると、みんなが続いた。机にもたれ掛かり箒の上に尻もちをついたダレルが肘をさすってる。床には机にあったのだろう先生の研究途中のメモや道具が散らばってる。
「よくやったね!」
「「「凄い!」」」
「もしかして、移転魔法?」
「どうやったの?」
先生は部屋を荒らされたことを怒ることはなく、初めてで高度な移転魔法を成功させたダレルを褒めた。
クラスメイトも興奮してダレルに質問攻めにする。
ただ箒だけは部屋が散らかったことと、上に乗られたことが嫌だったらしく、ダレルがみんなに手を引っ張られて立ち上がるとまるで部屋から追い出すようにみんなのお尻に攻撃を仕掛けた。
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