67 / 173
第五章
04
しおりを挟む
☆★☆ ★☆★ ☆★☆
五年生になった。
五年生からは一部を除いて専攻した教科を習う。四年生の後期から、担任のレスター・バーンズ先生とそれぞれ面談して決めていった。なかなか決まらない子や一回の面談で決める子まで様々だ。
時には親まで出てきて、ワイワイ言いながら決めている。
僕はアシュリーと一緒に面談してもらった。父上は僕には何も言わなかった。
「先生とよく相談するように」
それだけ言って僕に委ねてくれた。
覚醒したことを伝え、ミシェルとして身に付けなくてはいけない教科を相談して決めた。
バーンズ先生は驚いておられたけれど「ああ…」とどこか納得しておられるようだった。
アシュリーが覚醒していたことも知っておられたし、その報告をした時も驚きながらもその事実は知っておられたようで僕の事も何者であるのかは知っておられた。
僕たちが入学した時、担任がバーンズ先生になったのも僕たち…勇者の生まれ変わりが入学したからだよと笑顔で言われた。それは自分が優秀だからだよと言っておられるようで、自信家の先生らしい。そんな先生なので、相談しやすかった。
しかし、バーンズ先生が仰るには必ず修めなければならないのは魔法薬学と魔法学だけで、あとは満遍なく応用を習えば良いと言われた。
「ジュリアンには潜在能力があるからね。今までも習わなくてもできることがあっただろう?それは、ジュリアンの内にある…初代さまから脈々と受け継がれた能力だ。俺は晩年のミシェルさまにお会いする機会があったんだ。その時はまさかこんなふうに今世のミシェルやミネルヴァに関わるなんて思ってなかったけど…素晴らしいお方だったよ」
先生は懐かしむように話してくださった。剣術と魔法学は必須で逆に興味のあることは何か聞かれた。
「魔法薬には興味はあります。ミシェルとしてしなければならないことがあるなら…それは頑張りたいと思います。けれど…まだ、わからないんです。ただ、この癒しの力はこの先も高めていきたいと思っています。先日、国王陛下と王太子殿下がお見えになって…」
「えっ?陛下と殿下に会ったの?」
「はい……」
「バーンズ先生はジュリアンの妹のセシリアの事はご存知ですか?」
僕がどう説明すれば良いか迷っていたらアシュリーが代わりに話を振ってくれた。
「ああ、魔法薬学のキサック先生が仰っていた。そうか、そうなのだな…だから…」
顎に手を当て何やら考え込んで、うん、うん頷いておられる。
「セシリアの時も身体の仕組みを知らなかったので原因となるとさっぱりわからなくて…、それがもどかしかったのです。特に陛下のお身体に関しては、御典医さまに『どこが悪くて、どう治したのだ?』と聞かれた時も的確な返事が出来なくて、困ってしまいました。だから、医学の基礎を学びたいと…。それにはこの学園を卒業の後、上に進まなければ学べないと思うので、今は図書室で本を借りたりしながら学んでいきたいと思ってます」
「それで良いよ。焦る必要はない。本来ならまだ何も知らないんだから」
「はい。ありがとうございます」
隣国の言葉も今年から習う。これも必須だ。スローン国とシャンクリー国はアルシャント国と国境を接していて今は穏やかな関係を保っている。けれど、どちらも軍事力はそれなりにあって、国境付近の街では小競り合いが起こる時もある。
テニエル家の領地はスローン国と接している。だから、ケントやガイは先生とも対等に話せるくらいスローン語が堪能で、僕は文法とかわからない時、ケントに聞く時もある。家にいる時から少しは習ってきたけど文法や発音は難しいよね。
スローン国とは交易があり、実家にいる時に珍しい異国の品を商人が売りに来ていた。僕たちはその場に入れてもらえなかったけど買い上げた絨毯や肌触りが良い布はアルシャントにはない柄で、珍しい物だった。メイド長のドナは母上とどんなドレスを作ろうかと早速相談して、端切をくださいねなんて言って、いつもの落ち着いたドナじゃなかったのを覚えている。
五年生になった。
五年生からは一部を除いて専攻した教科を習う。四年生の後期から、担任のレスター・バーンズ先生とそれぞれ面談して決めていった。なかなか決まらない子や一回の面談で決める子まで様々だ。
時には親まで出てきて、ワイワイ言いながら決めている。
僕はアシュリーと一緒に面談してもらった。父上は僕には何も言わなかった。
「先生とよく相談するように」
それだけ言って僕に委ねてくれた。
覚醒したことを伝え、ミシェルとして身に付けなくてはいけない教科を相談して決めた。
バーンズ先生は驚いておられたけれど「ああ…」とどこか納得しておられるようだった。
アシュリーが覚醒していたことも知っておられたし、その報告をした時も驚きながらもその事実は知っておられたようで僕の事も何者であるのかは知っておられた。
僕たちが入学した時、担任がバーンズ先生になったのも僕たち…勇者の生まれ変わりが入学したからだよと笑顔で言われた。それは自分が優秀だからだよと言っておられるようで、自信家の先生らしい。そんな先生なので、相談しやすかった。
しかし、バーンズ先生が仰るには必ず修めなければならないのは魔法薬学と魔法学だけで、あとは満遍なく応用を習えば良いと言われた。
「ジュリアンには潜在能力があるからね。今までも習わなくてもできることがあっただろう?それは、ジュリアンの内にある…初代さまから脈々と受け継がれた能力だ。俺は晩年のミシェルさまにお会いする機会があったんだ。その時はまさかこんなふうに今世のミシェルやミネルヴァに関わるなんて思ってなかったけど…素晴らしいお方だったよ」
先生は懐かしむように話してくださった。剣術と魔法学は必須で逆に興味のあることは何か聞かれた。
「魔法薬には興味はあります。ミシェルとしてしなければならないことがあるなら…それは頑張りたいと思います。けれど…まだ、わからないんです。ただ、この癒しの力はこの先も高めていきたいと思っています。先日、国王陛下と王太子殿下がお見えになって…」
「えっ?陛下と殿下に会ったの?」
「はい……」
「バーンズ先生はジュリアンの妹のセシリアの事はご存知ですか?」
僕がどう説明すれば良いか迷っていたらアシュリーが代わりに話を振ってくれた。
「ああ、魔法薬学のキサック先生が仰っていた。そうか、そうなのだな…だから…」
顎に手を当て何やら考え込んで、うん、うん頷いておられる。
「セシリアの時も身体の仕組みを知らなかったので原因となるとさっぱりわからなくて…、それがもどかしかったのです。特に陛下のお身体に関しては、御典医さまに『どこが悪くて、どう治したのだ?』と聞かれた時も的確な返事が出来なくて、困ってしまいました。だから、医学の基礎を学びたいと…。それにはこの学園を卒業の後、上に進まなければ学べないと思うので、今は図書室で本を借りたりしながら学んでいきたいと思ってます」
「それで良いよ。焦る必要はない。本来ならまだ何も知らないんだから」
「はい。ありがとうございます」
隣国の言葉も今年から習う。これも必須だ。スローン国とシャンクリー国はアルシャント国と国境を接していて今は穏やかな関係を保っている。けれど、どちらも軍事力はそれなりにあって、国境付近の街では小競り合いが起こる時もある。
テニエル家の領地はスローン国と接している。だから、ケントやガイは先生とも対等に話せるくらいスローン語が堪能で、僕は文法とかわからない時、ケントに聞く時もある。家にいる時から少しは習ってきたけど文法や発音は難しいよね。
スローン国とは交易があり、実家にいる時に珍しい異国の品を商人が売りに来ていた。僕たちはその場に入れてもらえなかったけど買い上げた絨毯や肌触りが良い布はアルシャントにはない柄で、珍しい物だった。メイド長のドナは母上とどんなドレスを作ろうかと早速相談して、端切をくださいねなんて言って、いつもの落ち着いたドナじゃなかったのを覚えている。
0
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
<番外編>政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
< 嫁ぎ先の王国を崩壊させたヒロインと仲間たちの始まりとその後の物語 >
前作のヒロイン、レベッカは大暴れして嫁ぎ先の国を崩壊させた後、結婚相手のクズ皇子に別れを告げた。そして生き別れとなった母を探す為の旅に出ることを決意する。そんな彼女のお供をするのが侍女でドラゴンのミラージュ。皇子でありながら国を捨ててレベッカたちについてきたサミュエル皇子。これはそんな3人の始まりと、その後の物語―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる