58 / 173
第四章
26
しおりを挟む
「一時間目は担任のバーンズ先生の魔法学だったんだ。盾はその教室に飾ってあった。イーノックは動かしてないって言うから、じゃあ盗まれたってことになったんだ」
ダレルが兄上たちに必死に説明する。
「イーノックが黙っててって言うからさ、バーンズ先生から学園長と宰相さまには連絡するということでクラスで黙っとこうってなって…でも、放課後には学園中に広がってた」
「他に盗まれたのを知ってるのは犯人だけだよな?もし、ほんとうにニコラスが犯人だとして、みんなが黙っててくれるんだったら、こんな都合の良いことはないだろう?何故か盾が盗まれたことをおおっぴらにしたい真犯人は騒ぎにならないことに焦ったんだな。あの盾自体に価値はない。宝石が付いてるとかなら売れば金儲けできるけど、栄誉を与えられただけだ。イーノックが妬まれたか?ニコラスの名前を出したのは偶然か?幼稚だな」
クラレンス兄上が冷静に答えを出していく。
『ジュリ…どこにいるの?』
『クラレンス兄さまの部屋だよ』
すると直ぐに、ノックが聞こえた。近くまで来ていたようだ。
「アシュリー、ニコラスはどうなった?」
ダレルが、アシュリーが入ってくるなり質問する。
「イーノックはニコラスが犯人じゃないと言うけど、外野はそうはいかない。誰か犯人がいないと収まらないかもな…実際盾は行方不明なんだし。イーノックがニコラスに話を聞くってことで一応その場は収まったけど、また何か言ってくるかもな…関係ないのにさ…」
「アシュリーはニコラスが犯人だと思うのか?」
「そんな訳ないだろ?クラスの奴らも誰もニコラスが犯人だなんて思ってないさ…ただ、五年生が出張って来てさ…参るよ」
「真犯人がいれば良いんだな。ニコラスの無実を証明したい」
「盗んだ犯人と嘘の噂を流した犯人だな。おそらく同一人物だと思うけど、もしかしたら違う奴かもしれない。五年生がキーワードだな」
「どう言うこと?ルシアン兄さま」
「ロドニーも俺も五年生から話を聞いた。それが同じ奴かどうかはわからないけど噂を流してるのが五年生の可能性は高い。そして、問題をぐちゃぐちゃにしてニコラスを犯人に仕立てたい」
「…!やっぱり、ニコラスは嵌められたのか?
「まだ、わからないよ。落ち着いて、ダレル」
いつの間にか興奮して立ち上がったダレルをルシアン兄上が座るように促した。
「どうしたら無実が証明できる?」
「無罪の証明は要らないんだ。盗んだ証拠がない限り有罪にはならない。ただ、今回アシュリーが言った通り、それで納得しない奴がいる。有罪の照明は盗んだものが犯人の持ち物の中から出てきたとか、目撃者がいるとか考えられるけど、一度疑われた人間の窃盗の無実を証明するのはな…。本当はイーノックが問題にしない限り議論される話題でもない。だから、噂を流した奴、納得しなかった奴が怪しいな」
誰が噂を流したのか、誰が納得しなかったのか?少し様子を見ることにして一旦解散した。
夜の食堂でも、その噂をしている人はいるけど一部の人だけで、そのまま収束するかもしれないなと楽観的に思っていた。
ところが翌朝校舎のいたるところに「ニコラス・グレンは卑怯な奴だ」「ニコラスは泥棒」と誹謗中傷する張り紙があちこちに貼られていた。
これではっきりした。
イーノックの盾が道具として使われただけで犯人はニコラスに恨みがあったようだ。ニコラスは辛いだろう。盗んでないのに盗んだと言われ、あんな張り紙まで貼られたら、ことの詳細を知らない人たちは信じてしまうかもしれない。
再びクラレンス兄上の部屋に集まった。今日はイーノックと渦中のニコラスが一緒だ。
「ニコラス、五年生と揉めてた?」
今日もルシアン兄上がこの場を仕切る。綺麗な顔の兄上が、嫌悪の表情で眉間に皺を寄せるからニコラスはビビってる。
「…いや…ないな。そもそも五年生に親しい人はいない」
「アシュリー…口出しした五年生、誰かわかる?」
「確か…ジミー・スネルとか言ったと思うけど…剣術大会でニコラスの一回戦の相手だったろ?そいつ」
「どっちが勝ったの?」
「そりゃ、ニコラスさ」
ダレルが自分の事のように自慢する。
「一瞬で決まったよ。弱っちかったな。よくあんなんで代表になれたよな。おまけに判定に文句つけてさ。魔法の鎧がおかしいとか訳わかんないこと言って…往生際…わる、い…あっ!その時の恨み?まさか…」
ダレルが兄上たちに必死に説明する。
「イーノックが黙っててって言うからさ、バーンズ先生から学園長と宰相さまには連絡するということでクラスで黙っとこうってなって…でも、放課後には学園中に広がってた」
「他に盗まれたのを知ってるのは犯人だけだよな?もし、ほんとうにニコラスが犯人だとして、みんなが黙っててくれるんだったら、こんな都合の良いことはないだろう?何故か盾が盗まれたことをおおっぴらにしたい真犯人は騒ぎにならないことに焦ったんだな。あの盾自体に価値はない。宝石が付いてるとかなら売れば金儲けできるけど、栄誉を与えられただけだ。イーノックが妬まれたか?ニコラスの名前を出したのは偶然か?幼稚だな」
クラレンス兄上が冷静に答えを出していく。
『ジュリ…どこにいるの?』
『クラレンス兄さまの部屋だよ』
すると直ぐに、ノックが聞こえた。近くまで来ていたようだ。
「アシュリー、ニコラスはどうなった?」
ダレルが、アシュリーが入ってくるなり質問する。
「イーノックはニコラスが犯人じゃないと言うけど、外野はそうはいかない。誰か犯人がいないと収まらないかもな…実際盾は行方不明なんだし。イーノックがニコラスに話を聞くってことで一応その場は収まったけど、また何か言ってくるかもな…関係ないのにさ…」
「アシュリーはニコラスが犯人だと思うのか?」
「そんな訳ないだろ?クラスの奴らも誰もニコラスが犯人だなんて思ってないさ…ただ、五年生が出張って来てさ…参るよ」
「真犯人がいれば良いんだな。ニコラスの無実を証明したい」
「盗んだ犯人と嘘の噂を流した犯人だな。おそらく同一人物だと思うけど、もしかしたら違う奴かもしれない。五年生がキーワードだな」
「どう言うこと?ルシアン兄さま」
「ロドニーも俺も五年生から話を聞いた。それが同じ奴かどうかはわからないけど噂を流してるのが五年生の可能性は高い。そして、問題をぐちゃぐちゃにしてニコラスを犯人に仕立てたい」
「…!やっぱり、ニコラスは嵌められたのか?
「まだ、わからないよ。落ち着いて、ダレル」
いつの間にか興奮して立ち上がったダレルをルシアン兄上が座るように促した。
「どうしたら無実が証明できる?」
「無罪の証明は要らないんだ。盗んだ証拠がない限り有罪にはならない。ただ、今回アシュリーが言った通り、それで納得しない奴がいる。有罪の照明は盗んだものが犯人の持ち物の中から出てきたとか、目撃者がいるとか考えられるけど、一度疑われた人間の窃盗の無実を証明するのはな…。本当はイーノックが問題にしない限り議論される話題でもない。だから、噂を流した奴、納得しなかった奴が怪しいな」
誰が噂を流したのか、誰が納得しなかったのか?少し様子を見ることにして一旦解散した。
夜の食堂でも、その噂をしている人はいるけど一部の人だけで、そのまま収束するかもしれないなと楽観的に思っていた。
ところが翌朝校舎のいたるところに「ニコラス・グレンは卑怯な奴だ」「ニコラスは泥棒」と誹謗中傷する張り紙があちこちに貼られていた。
これではっきりした。
イーノックの盾が道具として使われただけで犯人はニコラスに恨みがあったようだ。ニコラスは辛いだろう。盗んでないのに盗んだと言われ、あんな張り紙まで貼られたら、ことの詳細を知らない人たちは信じてしまうかもしれない。
再びクラレンス兄上の部屋に集まった。今日はイーノックと渦中のニコラスが一緒だ。
「ニコラス、五年生と揉めてた?」
今日もルシアン兄上がこの場を仕切る。綺麗な顔の兄上が、嫌悪の表情で眉間に皺を寄せるからニコラスはビビってる。
「…いや…ないな。そもそも五年生に親しい人はいない」
「アシュリー…口出しした五年生、誰かわかる?」
「確か…ジミー・スネルとか言ったと思うけど…剣術大会でニコラスの一回戦の相手だったろ?そいつ」
「どっちが勝ったの?」
「そりゃ、ニコラスさ」
ダレルが自分の事のように自慢する。
「一瞬で決まったよ。弱っちかったな。よくあんなんで代表になれたよな。おまけに判定に文句つけてさ。魔法の鎧がおかしいとか訳わかんないこと言って…往生際…わる、い…あっ!その時の恨み?まさか…」
0
お気に入りに追加
146
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる