天使のローブ

茉莉花 香乃

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第四章

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「一時間目は担任のバーンズ先生の魔法学だったんだ。盾はその教室に飾ってあった。イーノックは動かしてないって言うから、じゃあ盗まれたってことになったんだ」

ダレルが兄上たちに必死に説明する。

「イーノックが黙っててって言うからさ、バーンズ先生から学園長と宰相さまには連絡するということでクラスで黙っとこうってなって…でも、放課後には学園中に広がってた」
「他に盗まれたのを知ってるのは犯人だけだよな?もし、ほんとうにニコラスが犯人だとして、みんなが黙っててくれるんだったら、こんな都合の良いことはないだろう?何故か盾が盗まれたことをおおっぴらにしたい真犯人は騒ぎにならないことに焦ったんだな。あの盾自体に価値はない。宝石が付いてるとかなら売れば金儲けできるけど、栄誉を与えられただけだ。イーノックがねたまれたか?ニコラスの名前を出したのは偶然か?幼稚だな」

クラレンス兄上が冷静に答えを出していく。

『ジュリ…どこにいるの?』
『クラレンス兄さまの部屋だよ』

すると直ぐに、ノックが聞こえた。近くまで来ていたようだ。

「アシュリー、ニコラスはどうなった?」

ダレルが、アシュリーが入ってくるなり質問する。

「イーノックはニコラスが犯人じゃないと言うけど、外野はそうはいかない。誰か犯人がいないと収まらないかもな…実際盾は行方不明なんだし。イーノックがニコラスに話を聞くってことで一応その場は収まったけど、また何か言ってくるかもな…関係ないのにさ…」
「アシュリーはニコラスが犯人だと思うのか?」
「そんな訳ないだろ?クラスの奴らも誰もニコラスが犯人だなんて思ってないさ…ただ、五年生が出張って来てさ…参るよ」
「真犯人がいれば良いんだな。ニコラスの無実を証明したい」
「盗んだ犯人と嘘の噂を流した犯人だな。おそらく同一人物だと思うけど、もしかしたら違う奴かもしれない。五年生がキーワードだな」
「どう言うこと?ルシアン兄さま」
「ロドニーも俺も五年生から話を聞いた。それが同じ奴かどうかはわからないけど噂を流してるのが五年生の可能性は高い。そして、問題をぐちゃぐちゃにしてニコラスを犯人に仕立てたい」
「…!やっぱり、ニコラスは嵌められたのか?
「まだ、わからないよ。落ち着いて、ダレル」

いつの間にか興奮して立ち上がったダレルをルシアン兄上が座るように促した。

「どうしたら無実が証明できる?」
「無罪の証明は要らないんだ。盗んだ証拠がない限り有罪にはならない。ただ、今回アシュリーが言った通り、それで納得しない奴がいる。有罪の照明は盗んだものが犯人の持ち物の中から出てきたとか、目撃者がいるとか考えられるけど、一度疑われた人間の窃盗の無実を証明するのはな…。本当はイーノックが問題にしない限り議論される話題でもない。だから、噂を流した奴、納得しなかった奴が怪しいな」

誰が噂を流したのか、誰が納得しなかったのか?少し様子を見ることにして一旦解散した。

夜の食堂でも、その噂をしている人はいるけど一部の人だけで、そのまま収束するかもしれないなと楽観的に思っていた。

ところが翌朝校舎のいたるところに「ニコラス・グレンは卑怯な奴だ」「ニコラスは泥棒」と誹謗中傷する張り紙があちこちに貼られていた。

これではっきりした。
イーノックの盾が道具として使われただけで犯人はニコラスに恨みがあったようだ。ニコラスは辛いだろう。盗んでないのに盗んだと言われ、あんな張り紙まで貼られたら、ことの詳細を知らない人たちは信じてしまうかもしれない。

再びクラレンス兄上の部屋に集まった。今日はイーノックと渦中のニコラスが一緒だ。

「ニコラス、五年生と揉めてた?」

今日もルシアン兄上がこの場を仕切る。綺麗な顔の兄上が、嫌悪の表情で眉間に皺を寄せるからニコラスはビビってる。

「…いや…ないな。そもそも五年生に親しい人はいない」
「アシュリー…口出しした五年生、誰かわかる?」
「確か…ジミー・スネルとか言ったと思うけど…剣術大会でニコラスの一回戦の相手だったろ?そいつ」
「どっちが勝ったの?」
「そりゃ、ニコラスさ」

ダレルが自分の事のように自慢する。

「一瞬で決まったよ。弱っちかったな。よくあんなんで代表になれたよな。おまけに判定に文句つけてさ。魔法の鎧がおかしいとか訳わかんないこと言って…往生際…わる、い…あっ!その時の恨み?まさか…」
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