見ぃつけた。

茉莉花 香乃

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番外編

05

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「大丈夫だよ?」
「いや、ダメだ」
「大丈夫だって」
「ダメだって…。どうしようか」
「碧空くん?」
「姫、一人はダメだよ。心配で何もできない」

明後日から夏休みが始まる。今は昼休みで、碧空くんは僕の前の席に座り後ろを向いて机に両肘を突いて頭を抱えてる。

今日、碧空くんは放課後直ぐに生徒会室に用事がある。明日、全校生徒の前で夏休み中の注意事項や部活動について話さなければならないからその話をまとめたり、細々とした用事があり時間に遅れるわけにはいかないらしい。美都瑠と智親くんは特別補習を受けるため教室に残らなくてはならない。僕はその教科を取っていないため一緒に残ることは叶わない。

「じゃあ、教室の外で美都瑠たちが終わるの待ってるよ」
「それはやめといた方がいいと思うよ」

美都瑠が隣に立ち危険だと僕をたしなめる。

「教室の隅に座らせてもらおうかな」
「高山がそんなこと許すわけないよ」

高山先生は厳格なおじいちゃん先生で、曲がったことが大嫌い。智親くんも僕の意見に良い返事はしてくれない。

「なに暗い顔で集まってるの?」

横田くんが暖気な声で碧空くんの髪をワシャワシャする。

「やめろ!」

碧空くんは直ぐにその手を払い退けたけど横田くんは笑顔で聞いてくる。智親くんが今日の放課後の話をすると呆れてる。

「碧空、過保護過ぎ。まあ、気持ちはわかるけどね。じゃあ、俺が送っていってやるよ」
「そんなの、良いよ」

横田くんと二人きりなんて僕が嫌だ。

ひでか…。姫、英に送ってもらうか?」
「「えっ?」」

僕の驚きの声に美都瑠の声も重なった。

「僕は反対!」
「あれ?筑紫くんには信用されてないんだな、俺は」

横田くんは美都瑠の言葉を気にしてないのかヘラヘラ笑ってる。碧空くんが好きな横田くんなら、僕が襲われることはない。時々碧空くんにちょっかいをかけて、それを見た僕に挑戦的な視線を送るだけで表立って意地悪されたことはない。

結局碧空くんの信用を勝ち取った横田くんに碧空くんの部屋まで送ってもらうことになった。

僕って頼りないんだな…。
一人で歩くこともできないなんて…。

軽く落ち込んでいると碧空くんが謝ってくれた。

「違うんだ。姫が一人でなにもできないとか思ってない。俺が心配してるだけで…。ごめん。でも、守らせて?」

そんなふうに言われたら怒ったり、落ち込んだりできないよ。

「嬉しい…」
「じゃあ、行ってくるからね」
「うん。行ってらっしゃい」

髪をひと撫でして名残惜しそうに教室を出て行った。

「俺たちも行こうか?」

横田くんが僕の肩をポンと叩いて促した。

「碧に何かあったら許さないからね!」

美都瑠が横田くんを威嚇する。

「筑紫くんは怖いな。大丈夫、なにもないさ。無事に碧空の部屋に送るだけだから」

二人並んで寮まで歩く。二人きりになったのはあの告白の時だけ。途中何人もの生徒に会うけれど、組み合わせがいつもと違うからかみんなに見られた。

「後で碧空の部屋まで送るからさ、俺の部屋に寄ってかない?」
「えっ?横田くんの部屋?」
「そう、俺の部屋」
「で、でも…」

真っ直ぐ碧空くんの部屋に送ってくれるものと思っていた。

「何か用事でもあったの?僕、一人で行けるから。ここまでで良いよ」

もう、寮の入り口まで来ていた。なんとなく横田くんの部屋には行きたくなくて、用事なんてないとわかっていてもそう言って離れようとした。

勘解由小路さんの所に寄って、おしゃべりしても良いなとも思った。勘解由小路さんは博識でしゃべっていて飽きない。生徒との交流も仕事の一つだからと嫌がらずに相手をしてくれる。碧空くんと同じようにあの事件のことを凄く気にしてくれていて、きっと碧空くんの部屋まで送ってくれるだろう。

「そんなこと言わずにさ。姫宮が転校してからの碧空の話、してあげるよ?」

ううっ…。
それは正直聞いてみたい。碧空くんからも聞いてはいるけど、他人から見た碧空くんの事は興味ある。中学からの話は時々美都瑠に聞いている。でも、小学生の碧空くんは横田くんに聞かなければわからない。
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