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第二章
03
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ドアの向こうは真っ直ぐ廊下が伸びている。狭いし窓もないけれど、圧迫感はなかった。壁に沿って埋め込まれた照明が全体を明るく見せている。所々にあるフロアライトの灯りが仄かに煌めいて、壁には絵が飾られている。ここが学校だと言うことを忘れてしまいそう。
一つドアを通り過ぎて二つ目のドアを開け僕を招き入れた会長はゆっくりとドアを閉め……カチャっと鍵を掛けた。
えっ…鍵?
その部屋はベッドと三人掛けのカウチソファーとテーブルが置いてある。カーテンが半分閉まっていて少し暗いこの部屋は、鍵が掛けられ密室になったのだろうか?
「そんなに怖がらなくていい」
「はい、でも…」
未だに手を離してくれない会長はそのままベットに座った。ソファーにしようよ!どうせ隣に座るけど、ソファーがあるのにどうしてベッド?手を引かれて仕方なく隣に座る。
「ウィッグ取って?」
やっぱり…そんなことじゃないかなとは思ったんだ。
「あの…」
「何?」
「あと誰が知ってるのでしょうか?」
理事長は秘密を楽しむようにウインクして誰に教えたかは言ってくれなかった。僕にとっては切実な問題なのに…。
「校長と紺野先生と鴻志さんと俺かな」
「そうですか…」
「碧空には知られてないよな?」
「!……はい」
「何だよ今の驚きと間は?」
「いえ…何でもないです」
仕方ないので、眼鏡とウィッグとコンタクトを取った。最初怖かったコンタクトにもだいぶ慣れた。
「会長は…」
「八城篤人、篤人でいい」
「そんなの呼べません」
「呼んでくれよ。俺は碧って呼んでいいか?」
いつの間にか会長…やっぱり呼べないよね…の腕は僕の肩に回り、強く抱き寄せられていた。
「俺と付き合わない?」
「えっ?」
ウィッグを取れと言われるんじゃないかと思ったから、碧空くんの前ではできないと思いここまでついてきた。けれど、こんなことを言われるとは思わなかった。
「会長は…」
「……まあ、いいか」
「八城貿易の…」
「そうだよ」
「じゃあ僕たち、今日が初対面じゃないですよね?」
「まあ、そうだな…覚えてたのか?」
「はい。それはもう!しっかりと」
僕は三年経っても多分そんなに変わってない。けれど、会長は随分変わった。体育館で見たときは、直ぐに思い出せないくらい大人っぽくてわからなかった。
中学生の時だった。
僕には十歳離れた姉がいるんだけど、無理やりパーティに連れ出された。華やかな所が大好きな姉は、僕にエスコート役を言いつけた。嫌だったけど、当時欲しかったゲームか何かで釣られてしまったんだ。
勿論、中学生の僕はお酒も飲めないし、知り合いもいない。姉は僕をほっぽらかして男友だちを見つけ話に夢中だ。
そんな時に声を掛けてくれたのが会長…八城さんだった。一つしか違わないのに落ち着いてて、とても頼りになるお兄さんって感じで凄く安心したのを覚えてる。その時に恋人を紹介して貰ったんだけどな。もう、別れたのかな?
「あの人は?」
聞いちゃいけなかったかな。誰だって触れてほしくない過去話なんて一つや二つはある。
「ご、ごめんなさい。いいです…」
「いや、構わない。別れたよ」
「喧嘩したんですか?」
「まあ、そんな感じ。どっちみち会えないからな」
「ああ、確か二つ上でしたよね?」
「だから、付き合ってよ」
「そんなこと、できるわけないじゃないですか!」
「俺の恋人の振りだよ」
「振り…?」
「そうだよ。守りやすくなる。姫宮の姉さんにも『碧に何かあったら許さないから』って脅されてるしな」
「姉さんが?…でも…」
碧空くんが知ったらどう思うだろう。いくら振りだって変な誤解はして欲しくない。碧空くんに恋人がいても、ハイエナが腕に絡みついていても僕には関係ない。それに、僕に恋人がいてもいなくても碧空くんは興味もないだろう。
でも…嫌だな…。
八城さんは本当に恋人と別れたのかな?
「考えといて」
「はい」
一つドアを通り過ぎて二つ目のドアを開け僕を招き入れた会長はゆっくりとドアを閉め……カチャっと鍵を掛けた。
えっ…鍵?
その部屋はベッドと三人掛けのカウチソファーとテーブルが置いてある。カーテンが半分閉まっていて少し暗いこの部屋は、鍵が掛けられ密室になったのだろうか?
「そんなに怖がらなくていい」
「はい、でも…」
未だに手を離してくれない会長はそのままベットに座った。ソファーにしようよ!どうせ隣に座るけど、ソファーがあるのにどうしてベッド?手を引かれて仕方なく隣に座る。
「ウィッグ取って?」
やっぱり…そんなことじゃないかなとは思ったんだ。
「あの…」
「何?」
「あと誰が知ってるのでしょうか?」
理事長は秘密を楽しむようにウインクして誰に教えたかは言ってくれなかった。僕にとっては切実な問題なのに…。
「校長と紺野先生と鴻志さんと俺かな」
「そうですか…」
「碧空には知られてないよな?」
「!……はい」
「何だよ今の驚きと間は?」
「いえ…何でもないです」
仕方ないので、眼鏡とウィッグとコンタクトを取った。最初怖かったコンタクトにもだいぶ慣れた。
「会長は…」
「八城篤人、篤人でいい」
「そんなの呼べません」
「呼んでくれよ。俺は碧って呼んでいいか?」
いつの間にか会長…やっぱり呼べないよね…の腕は僕の肩に回り、強く抱き寄せられていた。
「俺と付き合わない?」
「えっ?」
ウィッグを取れと言われるんじゃないかと思ったから、碧空くんの前ではできないと思いここまでついてきた。けれど、こんなことを言われるとは思わなかった。
「会長は…」
「……まあ、いいか」
「八城貿易の…」
「そうだよ」
「じゃあ僕たち、今日が初対面じゃないですよね?」
「まあ、そうだな…覚えてたのか?」
「はい。それはもう!しっかりと」
僕は三年経っても多分そんなに変わってない。けれど、会長は随分変わった。体育館で見たときは、直ぐに思い出せないくらい大人っぽくてわからなかった。
中学生の時だった。
僕には十歳離れた姉がいるんだけど、無理やりパーティに連れ出された。華やかな所が大好きな姉は、僕にエスコート役を言いつけた。嫌だったけど、当時欲しかったゲームか何かで釣られてしまったんだ。
勿論、中学生の僕はお酒も飲めないし、知り合いもいない。姉は僕をほっぽらかして男友だちを見つけ話に夢中だ。
そんな時に声を掛けてくれたのが会長…八城さんだった。一つしか違わないのに落ち着いてて、とても頼りになるお兄さんって感じで凄く安心したのを覚えてる。その時に恋人を紹介して貰ったんだけどな。もう、別れたのかな?
「あの人は?」
聞いちゃいけなかったかな。誰だって触れてほしくない過去話なんて一つや二つはある。
「ご、ごめんなさい。いいです…」
「いや、構わない。別れたよ」
「喧嘩したんですか?」
「まあ、そんな感じ。どっちみち会えないからな」
「ああ、確か二つ上でしたよね?」
「だから、付き合ってよ」
「そんなこと、できるわけないじゃないですか!」
「俺の恋人の振りだよ」
「振り…?」
「そうだよ。守りやすくなる。姫宮の姉さんにも『碧に何かあったら許さないから』って脅されてるしな」
「姉さんが?…でも…」
碧空くんが知ったらどう思うだろう。いくら振りだって変な誤解はして欲しくない。碧空くんに恋人がいても、ハイエナが腕に絡みついていても僕には関係ない。それに、僕に恋人がいてもいなくても碧空くんは興味もないだろう。
でも…嫌だな…。
八城さんは本当に恋人と別れたのかな?
「考えといて」
「はい」
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