見ぃつけた。

茉莉花 香乃

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第一章

07

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寮の部屋はそれぞれの部屋の他に共用スペースとしてソファーの置いてあるリビングとキッチン、浴室、トイレがある。個室はありがたいけど、贅沢な造りだ。

荷解きをほぼ終えた僕は、夕方迎えに来てくれた碧空くんと牧野くんと一緒に寮の中を案内された。
一階に降りるとコンビニのような何でも置いてる売店があった。パンや果物、野菜に肉や魚まである。買う人はいるのか?そうか、食堂で食べない人もいるのか?大浴場やジムまである。
とにかく広い。高層マンションにちょっとしたショッピングモールがくっ付いてる感じ。美容院や薬局まである。

そうして、説明してくれる碧空くんはやはりモテるみたい。どこにいても声が掛かるし、遠巻きに見ている子もいる。あんなこと言ってたけど牧野くんもモテると思う。そりゃこんなにイケメンさんなんだ、モテるだろう。
さっきから凄く睨まれてる。寮に入った時はその意味がわからなかったけど、碧空くんと牧野くんと一緒にいることがそもそもダメなんじゃないか?

「あの…もうわかりましたから、後は食堂を教えて頂けたらもう…」

一緒にいるだけで睨まれては堪らない。避けたかった昔の知り合いには会ってしまって、おまけに喋ってしまったけれど虐められるのは本意ではない。

僕が姫宮あおいだと知ったらまた、碧空くんに意地悪されるかもしれない。

「そう?じゃあ、食堂行こうか?」

碧空くんは何故か笑顔だ。きっとその笑顔につられてみんなの視線も集まる。怒った顔をして欲しいわけじゃないけど、注目はされたくない。

ここだよと連れてこられたのは二階にある広い食堂だった。

「ありがとうございました」

お礼を言って離れようとしたけど、注文の仕方、わからないだろ?と言われ見回すと食券の販売機も並んでる人もいない。

結局一緒のテーブルで食事をすることになってしまった。席を見るとテーブルにタッチパネルが付いている。カードをかざして好きな料理にタッチする。すると番号が表示されるので、厨房からその番号の呼び出しがあれば取りに行く。そんなシステムらしい。
がっつりな定食から丼物やうどん、ラーメン、和菓子やケーキ、コーヒーなどのデザートもある。

それぞれ注文して番号が表示されたのを見て、料理を取りに行く。朝食は和食と洋食の二種類でそれぞれの窓口で、料理を受け取る時にカードを翳すのだそうだ。
朝は部屋で食べよう。帰りにパンを買っておけば良いだろう。緊張しながらの食事は辛かったけど、料理は美味しかった。

「コーヒーでも飲まない?奢るよ」

碧空そらくんが言ってくれたけど、睨まれるのが嫌でお礼だけ言ってそそくさと部屋に帰った。

一度一階に降りて売店に行く。
バンや牛乳、コーヒー、野菜、ハムなど朝食に必要な品を買い、急いで部屋に戻った。

「はぁ…」

緊張する。
好奇の目が凄い。睨む人ばかりじゃないけど、話しかけてこないのにヒソヒソと僕を見るのは気分の良いものではない。仕方ないか…。この学校は殆ど転入生がないらしいからね。
 
極力外に出ない生活をした。牧野くんが食事に誘ってくれたけど、彼と歩いていても睨まれるからあまり歓迎できない。かと言って一人でも目立つ。

牧野くんが新学期が始まればもう少し落ち着くんじゃないかと暖気に言って笑う。笑いごとじゃないって。別に友だちが欲しいわけじゃない。ただ、意味もなく睨まれるのが辛いんだ。
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