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side翔
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あの頃、和希は何かに悩んでいた。オレと付き合うことに躊躇いがあるのかと心配したけれど、キスを強請る可愛い和希にそれは違うのかと安心した。でも、何に悩んでいるかは相談してはくれなかった。
何かに焦り、何かに怯え、感情が揺らいでいた。
オレも就職活動で、今までと違う生活に戸惑いと疲れがあった。そして就職して余裕が無かったから、和希の事を後回しにしていた。
少し、時間を開けた方が良いのかと思っていた。
和希に触れられないのはオレにとっては辛い。和希を奪いたいと何度思ったことか。早く大人になってくれ。せめて高校生になったら…と自分勝手にそんな風に考えていた。
大切なんだ…。あの頃も今も。
和希の身体はまだ幼く、オレは気持ちを持て余していた。
誘われた…、魔が差した…、そんな言い訳は裏切られた和希には届かないだろう。和希に触れられないからと最低だ。
「どうして?」の言葉もないままオレの前からいなくなってしまった。
オレはどうして和希の手を離してしまったのだろう…。
どうして離してしまった手をもう一度掴む努力をしなかったのだろう…。
近くにいるのに、遠い。
どんなことがあっても、和希の幸せを望むけれど……出来ればオレが幸せにしてあげたい。
そう思うのはエゴなのか?
そう望んではいけないのか?
もう一度あの優しかった手を掴みたい。
◇◇◇◇◇
大学からの友人の永井から連絡があった。
永井の実家は遠く大学に入学してから下宿していて、就職もこの近くにしたため、オレの家で母さんの手料理を食べるのを楽しみにしている。
それでも大学の時はそんなに来なかったのに、就職してからはよく『行って良い?』と、メールが入る。
忙しい時は勿論断るけれど、オレが空いてる時に母さんの都合を聞いて、たまに一緒にご飯を食べる。
永井はお酒が強くないので、お酒で憂さ晴らし…は出来ないらしい。
お酒では余計辛くなると経験で分かったのか『飲みに行こ』よりも『行って良い?』となるのだ。
外で食べても良さそうだけど、一度食べてから母さんの手料理が時々無性に食べたくなるようだ。
その日も永井のお願いに母さんも『良いわよ~』と言ってくれた。
母さんは永井の事を自分の息子のように可愛がっている。
自分の料理をこんなに『食べたい』と『美味しい』と言ってくれるのは和希と永井くらいだ。
何かに焦り、何かに怯え、感情が揺らいでいた。
オレも就職活動で、今までと違う生活に戸惑いと疲れがあった。そして就職して余裕が無かったから、和希の事を後回しにしていた。
少し、時間を開けた方が良いのかと思っていた。
和希に触れられないのはオレにとっては辛い。和希を奪いたいと何度思ったことか。早く大人になってくれ。せめて高校生になったら…と自分勝手にそんな風に考えていた。
大切なんだ…。あの頃も今も。
和希の身体はまだ幼く、オレは気持ちを持て余していた。
誘われた…、魔が差した…、そんな言い訳は裏切られた和希には届かないだろう。和希に触れられないからと最低だ。
「どうして?」の言葉もないままオレの前からいなくなってしまった。
オレはどうして和希の手を離してしまったのだろう…。
どうして離してしまった手をもう一度掴む努力をしなかったのだろう…。
近くにいるのに、遠い。
どんなことがあっても、和希の幸せを望むけれど……出来ればオレが幸せにしてあげたい。
そう思うのはエゴなのか?
そう望んではいけないのか?
もう一度あの優しかった手を掴みたい。
◇◇◇◇◇
大学からの友人の永井から連絡があった。
永井の実家は遠く大学に入学してから下宿していて、就職もこの近くにしたため、オレの家で母さんの手料理を食べるのを楽しみにしている。
それでも大学の時はそんなに来なかったのに、就職してからはよく『行って良い?』と、メールが入る。
忙しい時は勿論断るけれど、オレが空いてる時に母さんの都合を聞いて、たまに一緒にご飯を食べる。
永井はお酒が強くないので、お酒で憂さ晴らし…は出来ないらしい。
お酒では余計辛くなると経験で分かったのか『飲みに行こ』よりも『行って良い?』となるのだ。
外で食べても良さそうだけど、一度食べてから母さんの手料理が時々無性に食べたくなるようだ。
その日も永井のお願いに母さんも『良いわよ~』と言ってくれた。
母さんは永井の事を自分の息子のように可愛がっている。
自分の料理をこんなに『食べたい』と『美味しい』と言ってくれるのは和希と永井くらいだ。
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