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第三章
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隣の部屋を見るとベッドがあった。
ドキンと心臓が跳ねた。
キスもしたことないし、男同士の準備もわからない。女の子と付き合ったこともなかった。
でも、ここで…。
そう思うと顔に熱が集まる。布団に潜り込み目を閉じた。
『あんたの母親は本当にロクでもない女だったさ。男をたぶらかして。友だちの車で事故なんかしてさ。焼身自殺なんかして大迷惑なんだよ』
「おい、郁己!起きろ」
夢を見た。ばあさんが母さんを罵倒する夢。
「そんなことない。お母さんはそんな人じゃない。お母さんが悪いんじゃない」
「郁己!」
「えっ?あっ…ここは」
あの人のベッドで寝てしまってた。凄く安心したんだ。これから…って思うとドキドキはしたけど、凄く落ち着けた。それなのに…。
「大丈夫か?」
「俺…」
「夢でも見たのか?送って行くよ」
「俺を買ってくれるんじゃなかったのかよ?」
家には帰りたくないんだ。腕を掴み抱きついた。離れたくない。温もりが欲しい。
「大人ぶったってキスもしたことないガキだろ?」
「じゃあ、教えてくれよ。貴方が…」
「俊一。俺の名前、永岡俊一」
「俊一さん…が教えてくれたら、大人になれる?」
「大人になってどうするんだ?」
「一人で稼いで、一人で生きていく」
あんな家にはいたくない。
俺の居場所なんかない。
「俺には?授業料でも払ってくれるのか?」
別に身体を売って生活したい訳じゃない。
俊一さんの温もりが欲しい。
「出世払いでいい?」
「ちゃんと学校行って勉強しろ!」
ばあさんを見返すために勉強は頑張ってるんだ。
「……誰でも…誰でも良かったんだろ?違う奴に頼め。俺に構うな。リビングに一万円置いてる。それ持って、出て行け」
誰でもいいわけない。
そんな悲しそうな顔しないで欲しい。俊一さんだから。強く抱きしめたまま顔を押し付た。
「…貴方だけだった。俺が公園にいる時、貴方だけが俺を見てくれた」
「俊一だよ」
キスしてくれた。
背中に腕を回し離れないようにする。
「俊一さん」
「郁己」
二度目のキス。俊一さんの舌が唇をなぞる。
「んっ…はぁ…」
緊張で歯を噛み締める。舌が歯に触れた。途端に離れる身体に不安になる。
「…続きは?」
「ここまでだ」
もっと触れたい。
「こんなの俺でもできるよ」
「今日は帰れ」
それって、心配してくれてるのか?
今日は…?明日は来ても良いの?そんな訳ないか…。
「誰も心配しないって言ってるだろ?」
「また、来たらいいから」
「えっ?」
良いの?
俺の心の声が届いたのかと思った。
「ここに、いつでも来たらいいから」
ドキンと心臓が跳ねた。
キスもしたことないし、男同士の準備もわからない。女の子と付き合ったこともなかった。
でも、ここで…。
そう思うと顔に熱が集まる。布団に潜り込み目を閉じた。
『あんたの母親は本当にロクでもない女だったさ。男をたぶらかして。友だちの車で事故なんかしてさ。焼身自殺なんかして大迷惑なんだよ』
「おい、郁己!起きろ」
夢を見た。ばあさんが母さんを罵倒する夢。
「そんなことない。お母さんはそんな人じゃない。お母さんが悪いんじゃない」
「郁己!」
「えっ?あっ…ここは」
あの人のベッドで寝てしまってた。凄く安心したんだ。これから…って思うとドキドキはしたけど、凄く落ち着けた。それなのに…。
「大丈夫か?」
「俺…」
「夢でも見たのか?送って行くよ」
「俺を買ってくれるんじゃなかったのかよ?」
家には帰りたくないんだ。腕を掴み抱きついた。離れたくない。温もりが欲しい。
「大人ぶったってキスもしたことないガキだろ?」
「じゃあ、教えてくれよ。貴方が…」
「俊一。俺の名前、永岡俊一」
「俊一さん…が教えてくれたら、大人になれる?」
「大人になってどうするんだ?」
「一人で稼いで、一人で生きていく」
あんな家にはいたくない。
俺の居場所なんかない。
「俺には?授業料でも払ってくれるのか?」
別に身体を売って生活したい訳じゃない。
俊一さんの温もりが欲しい。
「出世払いでいい?」
「ちゃんと学校行って勉強しろ!」
ばあさんを見返すために勉強は頑張ってるんだ。
「……誰でも…誰でも良かったんだろ?違う奴に頼め。俺に構うな。リビングに一万円置いてる。それ持って、出て行け」
誰でもいいわけない。
そんな悲しそうな顔しないで欲しい。俊一さんだから。強く抱きしめたまま顔を押し付た。
「…貴方だけだった。俺が公園にいる時、貴方だけが俺を見てくれた」
「俊一だよ」
キスしてくれた。
背中に腕を回し離れないようにする。
「俊一さん」
「郁己」
二度目のキス。俊一さんの舌が唇をなぞる。
「んっ…はぁ…」
緊張で歯を噛み締める。舌が歯に触れた。途端に離れる身体に不安になる。
「…続きは?」
「ここまでだ」
もっと触れたい。
「こんなの俺でもできるよ」
「今日は帰れ」
それって、心配してくれてるのか?
今日は…?明日は来ても良いの?そんな訳ないか…。
「誰も心配しないって言ってるだろ?」
「また、来たらいいから」
「えっ?」
良いの?
俺の心の声が届いたのかと思った。
「ここに、いつでも来たらいいから」
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