撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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番外編ー参 藤壺の女御の疑問

03

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「女御さま、主上は女御さまが男だとは思ってらっしゃらないんじゃないかしら。だから、そんなに悩まれなくてもよろしいかと思いますよ?」
「…?…どう云うこと?わたしは…」
「なんか変よ右近さん」
「いや、だから…主上は女御さまがお好きなのであって、そこに男とか女とか関係ないんじゃないかしら」
「でも…」

ではどうしてこのところ夜にいらして下さる回数が減ったのか?

…そうなのだ。

夜に飛香舎にいらっしゃるようになった最初の頃は空いて四日。五日も開けずにいらして下さった。一日開けてという時もあった。

それが今では七日空いてしまうのは当たり前である。

所謂倦怠期なのだろうか?

姫さまの母君も三条さまを待っておいでになった。
世の女性はいつも男性の訪れをひたすら待つのだ。文を受け取るまでは女が優位だが、一度通うと男の気まぐれに泣かされるのか。
勿論、立場が違うけれど…。

わたしには…辛い。
ただ、お側にいられればそれだけで良いのに…。

「わたしも桔梗に付いて行けばよかったな」

そうすれば、気分転換になったのに。帝が許して下さらなかった。

自分は気の向いた時に抱きに来て、わたしが好きにすることは出来ない。

しかし、愛する人と肌を触れ合わせることは喜びを感じる。いらして下さった時は優しく、ぐずぐずに蕩けるまでどこまでも甘やかして下さるから帝の訪れを待っている。

そうすることしか出来ないのだけれど…。

女御たちでないなら、思う女房か女官がいるのだろう。

わたしは男だ。
柔らかな胸はなく、ふくよかな抱き心地の良い身体もない。抱くのにも準備が必要で…。それでもこちらにいらっしゃるのは…何故だろう?

『もう要らぬ』と云って突然足が遠のくことは……覚悟が必要だろう。

辛くとも耐えなければ…。

帝が飛香舎にいらして下さる間、他の女御たちは一人寝なのだ。自分のことばかり嘆いていてほかの方のことまで今まで気が回らなかった。

少し前から女御に宛てて文を出している。弘徽殿こきでんの女御は兄上の北の方の妹姫なので後宮に上がってからすぐに文を出したけれど、やはり新参者には警戒しておられて素っ気ないお付き合いしか出来なかった。
ほかの方もあまり好意的なお返事は頂けていない。
わたしが後宮に出仕したばかりの頃は敵情視察とばかりに絵合せや、宴とお誘いがあったけれど、近頃はそれもない。
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