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蒼穹
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翌日、雅季は『陽毬』から聞いたのか、その時間に、ちょうど出かけるところだったと尊に伝えた。
「その時、二人とはすれ違いましたか?」
「それがね…安成殿とは挨拶した覚えはあるよ。ただ、その日だったか、屋敷の前だったか、定かではないね」
確かに、高倉安成が襲われたのは大分前のことだ。会えば挨拶する相手なら、その時間にもし屋敷の前で遭遇していたならば、確実に挨拶はしていると云うことだ。
それにしても、その日のことを『陽毬』は覚えていたと云うことも驚きである。『陽毬』の事は気になるが今はそれではない。
「冬助さまとはどうですか?」
「冬助殿とは…どうだろうね。言葉を交わしてないと、思うのだがね…。でも、確かにどこかで会ったことがあるんだ。それがその時ではなかったと断言することも、できない」
そこまで思い出してくれたなら、十分だ。やはりと云う思いが深くなる。尊の確信は更に確かなものとなった。
「ねえ、親、実視さんにもこんな調書あるの?」
「あるぞ?えっと……ああ、これだ。でも、前日の行動までは聞かなかったな」
「僕も実視さんに、会いたいんだけど…」
「そうだな…安倍さまに聞いてみるよ」
二人が偶然でも、三人となると話は別。これは確かめておきたい。本当に偶然なら良い。でも、雅季に関係してるなら…。
親彬も云っていたが、どうして毎日顔を合わせている親彬は今も無事なのか?
初めてのって云うけど、その前からも仕事場では一緒だった。そもそも、その経験者は襲われないって云うのも、眉唾ものだと尊は思っている。現代人の尊には噂だけを信じることができなかった。その妖怪に聞いたのか?誰が聞いたのか?その噂のせいで、あんな経験を既にしてしまっている身ではある。流されてしまったのは否めない。
この陰陽寮や大内裏の中にいる人は立ち話くらいするだろうに、被害はない。つまり、雅季の屋敷の前を見てるってこと。あの気配があるのはそこだけ。都で被害が出るようになって、貴族ばかりが狙われる。それはつまり、雅季が外で話すのが貴族ばかりと云うことではないだろうか?〈氷の君〉が雅季の屋敷を見ていて、そして、雅季が誰かと話してるのを見ると、次の日に……。
「その時、二人とはすれ違いましたか?」
「それがね…安成殿とは挨拶した覚えはあるよ。ただ、その日だったか、屋敷の前だったか、定かではないね」
確かに、高倉安成が襲われたのは大分前のことだ。会えば挨拶する相手なら、その時間にもし屋敷の前で遭遇していたならば、確実に挨拶はしていると云うことだ。
それにしても、その日のことを『陽毬』は覚えていたと云うことも驚きである。『陽毬』の事は気になるが今はそれではない。
「冬助さまとはどうですか?」
「冬助殿とは…どうだろうね。言葉を交わしてないと、思うのだがね…。でも、確かにどこかで会ったことがあるんだ。それがその時ではなかったと断言することも、できない」
そこまで思い出してくれたなら、十分だ。やはりと云う思いが深くなる。尊の確信は更に確かなものとなった。
「ねえ、親、実視さんにもこんな調書あるの?」
「あるぞ?えっと……ああ、これだ。でも、前日の行動までは聞かなかったな」
「僕も実視さんに、会いたいんだけど…」
「そうだな…安倍さまに聞いてみるよ」
二人が偶然でも、三人となると話は別。これは確かめておきたい。本当に偶然なら良い。でも、雅季に関係してるなら…。
親彬も云っていたが、どうして毎日顔を合わせている親彬は今も無事なのか?
初めてのって云うけど、その前からも仕事場では一緒だった。そもそも、その経験者は襲われないって云うのも、眉唾ものだと尊は思っている。現代人の尊には噂だけを信じることができなかった。その妖怪に聞いたのか?誰が聞いたのか?その噂のせいで、あんな経験を既にしてしまっている身ではある。流されてしまったのは否めない。
この陰陽寮や大内裏の中にいる人は立ち話くらいするだろうに、被害はない。つまり、雅季の屋敷の前を見てるってこと。あの気配があるのはそこだけ。都で被害が出るようになって、貴族ばかりが狙われる。それはつまり、雅季が外で話すのが貴族ばかりと云うことではないだろうか?〈氷の君〉が雅季の屋敷を見ていて、そして、雅季が誰かと話してるのを見ると、次の日に……。
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