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蒼穹

05

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翌日には高倉たかくらの安成やすなりの屋敷に来ていた。

被害の順番では島田しまだの実視さねみよりも早かった。恐らく、都で貴族が狙われた最初の被害者だと思われる。

それなのに今まで面会が叶わなかったのは、安成の父君、高倉安相やすみが陰陽師に会うことをなかなか認めなかったからだ。許されたのはほとんど脅しのようなやり方だったが、仕方ない。




『協力して頂けないなら、致し方ないですな…』

安倍雅季は安相に、ため息交じりに頷いた。

『申し訳ない』
『いやいや、ところで…』
『なんですかな?』
『近々、三条邸で宴が催されるとか。安相殿も招待されておられますか?』
『はい。ですが、お断りしております。今回のこと、太政大臣さまも気にして下さって…』
『ああ、そうだね。わたしは出席させて貰うよ。しかし……その席で、わたしは深酒をして、うっかりご子息が〈氷の君〉の被害者だと漏らしてしまっても、恨まないで下さいね。何せ、宴は無礼講。なぁに、冬助殿も同情の声が多い。ご子息も槍玉に上がることはないと思うよ。いやぁ、酒は怖い。うっかりすることはあるからねぇ…』

完全に脅しだが、冬助にも会うことを告げ、既に一人面会を済ませた人物がいることを知らせると渋々応じた。




あまりに若い尊を怪し気に見ながら、安相は渡殿を先導して歩く。

尊は出仕するには早い年齢である。童顔と華奢な身体がさらに頼りなく見えてしまうのだろう。

安成はどこの姫かと思うほど厳重に囲われていた。御簾を上げると冬助に負けず劣らず、安成も妖艶な仕草で三人を迎えた。年の頃は親彬より少し下で、身体つきも頼りない。島田実視の被害がなければ、〈氷の君〉が狙うのは華奢な男だと結論づけてしまっただろう。

冬助と全く同じ質問をする。こちらも、これといった珍しいことはない。前日は、いつものように仕事に出かけ、主人の屋敷では北の方に清水寺への言伝を頼まれた。当日は、連れと二人で市に出掛け、被害に遭った。安成はさる一つ頃に、市の近くの空き家の庭で襲われた。

名前が上がらなかったのは、一緒に来ていた連れが見つけて、急いで、誰にも知られずに牛車に乗せて連れ出したからだ。どうしてその空き家に入ったかは、思い出せないらしい。連れとはほんの一瞬離れただけだった。

尊は安成の残留思念も見る。こちらもぼんやりしていたが、明らかに同じ男だ。蘇芳が印象的な衣装が同じだった。
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