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黎明

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その日、馬に乗って本当の召喚者に会いに行った。

「尊の事を予言した人だ」

尊は親彬が呼んだのだと思っていたので、多少驚いた。それに、ちょっと残念に思った。二人を繋ぐ線が一本切れたような感覚。いや元から線などなかったのだろうか…。

懐にはリンを忍ばせて、乗馬の訓練が無駄にならなかったことに感動する。

「上手いじゃないか。尊の時代はみんな馬に乗れるのか?」
「ほとんど乗れないと思うよ。馬に触ったことない人は多いと思う。馬なんて、牧場とかに行かないと会えないからね。へへっ、僕は練習したんだ」
「……そうなのか…」

急に黙り込んだ親彬を不審に思ったけれど、尊は景色に目を奪われる。現代の京都なら、馬で街中を駆けることなんてできない。寂れたと云ってしまえばそれまでだが、自然がいっぱいと尊は思った。

こじんまりした屋敷だった。
好々爺…そんな言葉がぴったりな人が迎えてくれた。

「良くおいでくださった」
「は、はじめまして。賀茂尊です」
「ふぉっふぉっ…随分、可愛らしい子だのぉ、親彬」
「はい…」
「あの、あなたの事、何てお呼びしたら良いんですか?」
「儂か?そうだのぉ…尊殿は儂を見て、何と思った?」
「えっ?えっと、優しそうなお爺ちゃん?」
「おお!それは良い。お爺ちゃんと呼んでくれ!」
「ええっ!」
「翁?何を云ってるんですか?」
「良いではないか。尊殿、こちらの暮らしには馴染めそうかな?」
「はい。親彬くんが親切にしてくれて、昨日はぐっすり眠れました」
「して、儂に紹介してくれんかの?その懐の可愛い子は式鬼ではないようだな」

翁は何でもお見通しである。親彬にも知られている。問題ないだろうと思い、懐からリンを出す。

「リンと云います」
「ほぉ、こりゃ、めんこいのぉ。リン殿、よろしく頼みますぞ?」

リンは片手を上げて挨拶する。軽いものだ。ここに仕えているのは若い女の子一人。……多分式神だ。白湯とお菓子を出してくれた。

「尊殿、何かあったら儂に相談しておくれ。これを尊殿に渡しておくとしよう」

そう云って御札を数枚渡された。どうやら昨夜、森から屋敷に移動したのはこれを使ったと思われる。人前では決して使わないようにと云われた。わかってる。このはこちらでもではないのだ。
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