35 / 45
第六章
05
しおりを挟む
「なんか冷た~い。そう言えば、まだ名前聞いてなかったな?」
別に教えなくてもいいだろう。黙っていればその内飽きるはずだ。だいたい料理超初心者の僕がおしゃべりしながら作れる訳がない。
「ちょっと、黙れよ!」
感情を抑えようと丁寧に話したいけどギリギリで爆発してしまう。
「またまた、冷た~い」
「いい加減にしろよ!」
怒ったからか、肩をすぼませる。
黙ったまま料理を作り続ける僕に仕方ないななんて言いながら再びテレビを見始めた。何が面白いのかギャハギャハ笑う声も癇に障る。
今日はカレーとサラダ。まだ市販のルーを入れるものしか作れないけど、そのうちスパイスとか入れた本格的なカレーも作ってみたいな。
カレーが出来た頃、豊が帰ってきた。
「お帰…」
「つっちー、お帰り!」
僕より大きな声で叫び、豊に抱きつこうとする。豊はその腕を叩き落とした。
「隆、ただいま。悪かったな」
僕の方を向いて一瞬笑顔を見せてくれたけど、直ぐに苦り切った表情で西村を睨んだ。
「何度も言ってるだろ?もう、お前の事は何とも思ってない。迷惑なんだ帰ってくれよ!よく俺の前に顔出せるな?」
「え~、だってさ~泊まるとこないんだよね~。つっちー、泊めて?寂しいだろ?いいよ…俺が相手したげる」
本当に自分勝手だな。
豊の話を聞こうともしない。自分の言いたいことを言ってまた、豊に擦り寄ろうとする。勿論豊が西村を抱き寄せることはない。
「お前、一緒に住もうってここに越して来て、ちゃんと寝泊まりしてたの最初の数ヶ月だけだろ?後はフラフラして、二、三ヶ月に一度戻ってきてまた出て行く。俺がお前の荷物捨てても気付いてるのか知らないけど、何も言わなかったじゃないか!それってさ…どうでも良いってことだったんだろ?何度も鍵返せって言ったら…そうだ、失くしたって…お前失くしたって言ってただろ?何で持ってるんだよ!」
「失くしたって思ったんだ。そしたら俺の大事なものを仕舞っとく箱の中に入っててさ。それって凄くない?つっちーの事忘れてないってことだろ?」
意味がわからない。
「とにかく…お前を泊める部屋はない。帰れ!」
「俺はつっちーの隣でいいよ!ゆっくり寝られるかな~。それはつっちー次第だよ!久しぶりだし、一晩中…」
「いい加減にしろ!豊は今、僕の恋人なんだ。お前と寝る訳ないじゃないか!」
「えっ?そ、そうなの?」
他の誰かなら二人の仲をこんなにはっきり公表しないだろうけど、やんわりとか遠回しとかは天然なんだかアホだかわかんないこの男には絶対伝わらないと思う。
「俺が健介の事好きだったのは最初だけだよ」
「え~、そんなこと…」
「健介が一緒に住むからって親丸め込んで勝手にこの部屋に来て…そりゃ、最初は嬉しかったさ。でも、俺は…信じ切ることが出来なかった。
お前だって、俺の事は家出る口実くらいの軽い気持ちだったんだろ?わかってたさ。それでも、俺の事ちゃんと見てくれるって信じたかった。最初はな…。けど!お前は…」
「…っ……つっちー…」
迷惑男は渋々鍵を置いて出て行った。
「隆、ごめん…。同居してたって黙ってて…。忘れたかったんだ。…玄関の鍵変えよう?失くしたって言葉信じた俺が悪いんだ。隆が越してくる前に変えときゃ良かったよ」
「いいよ…返してもらったからもう来ないでしょう?」
「もし、合鍵とか作ってたら大変だから…変えよう?」
そうだな…。
鍵作ってるとかないとは思うけど、常識ある人ならこんなことにならなかったんだ。
「わかった」
同居してたことを言ってくれなかったのは少し寂しかったけど、豊も傷付いてたんだ。…忘れたいって気持ちはわかるからこれ以上言わないことにした。
あんなに僕を離さなかったのは、傷付いた過去を思い出してたのかな?僕が慰めてあげる。
そんな悲しい想いはもう二度とさせないよ。
別に教えなくてもいいだろう。黙っていればその内飽きるはずだ。だいたい料理超初心者の僕がおしゃべりしながら作れる訳がない。
「ちょっと、黙れよ!」
感情を抑えようと丁寧に話したいけどギリギリで爆発してしまう。
「またまた、冷た~い」
「いい加減にしろよ!」
怒ったからか、肩をすぼませる。
黙ったまま料理を作り続ける僕に仕方ないななんて言いながら再びテレビを見始めた。何が面白いのかギャハギャハ笑う声も癇に障る。
今日はカレーとサラダ。まだ市販のルーを入れるものしか作れないけど、そのうちスパイスとか入れた本格的なカレーも作ってみたいな。
カレーが出来た頃、豊が帰ってきた。
「お帰…」
「つっちー、お帰り!」
僕より大きな声で叫び、豊に抱きつこうとする。豊はその腕を叩き落とした。
「隆、ただいま。悪かったな」
僕の方を向いて一瞬笑顔を見せてくれたけど、直ぐに苦り切った表情で西村を睨んだ。
「何度も言ってるだろ?もう、お前の事は何とも思ってない。迷惑なんだ帰ってくれよ!よく俺の前に顔出せるな?」
「え~、だってさ~泊まるとこないんだよね~。つっちー、泊めて?寂しいだろ?いいよ…俺が相手したげる」
本当に自分勝手だな。
豊の話を聞こうともしない。自分の言いたいことを言ってまた、豊に擦り寄ろうとする。勿論豊が西村を抱き寄せることはない。
「お前、一緒に住もうってここに越して来て、ちゃんと寝泊まりしてたの最初の数ヶ月だけだろ?後はフラフラして、二、三ヶ月に一度戻ってきてまた出て行く。俺がお前の荷物捨てても気付いてるのか知らないけど、何も言わなかったじゃないか!それってさ…どうでも良いってことだったんだろ?何度も鍵返せって言ったら…そうだ、失くしたって…お前失くしたって言ってただろ?何で持ってるんだよ!」
「失くしたって思ったんだ。そしたら俺の大事なものを仕舞っとく箱の中に入っててさ。それって凄くない?つっちーの事忘れてないってことだろ?」
意味がわからない。
「とにかく…お前を泊める部屋はない。帰れ!」
「俺はつっちーの隣でいいよ!ゆっくり寝られるかな~。それはつっちー次第だよ!久しぶりだし、一晩中…」
「いい加減にしろ!豊は今、僕の恋人なんだ。お前と寝る訳ないじゃないか!」
「えっ?そ、そうなの?」
他の誰かなら二人の仲をこんなにはっきり公表しないだろうけど、やんわりとか遠回しとかは天然なんだかアホだかわかんないこの男には絶対伝わらないと思う。
「俺が健介の事好きだったのは最初だけだよ」
「え~、そんなこと…」
「健介が一緒に住むからって親丸め込んで勝手にこの部屋に来て…そりゃ、最初は嬉しかったさ。でも、俺は…信じ切ることが出来なかった。
お前だって、俺の事は家出る口実くらいの軽い気持ちだったんだろ?わかってたさ。それでも、俺の事ちゃんと見てくれるって信じたかった。最初はな…。けど!お前は…」
「…っ……つっちー…」
迷惑男は渋々鍵を置いて出て行った。
「隆、ごめん…。同居してたって黙ってて…。忘れたかったんだ。…玄関の鍵変えよう?失くしたって言葉信じた俺が悪いんだ。隆が越してくる前に変えときゃ良かったよ」
「いいよ…返してもらったからもう来ないでしょう?」
「もし、合鍵とか作ってたら大変だから…変えよう?」
そうだな…。
鍵作ってるとかないとは思うけど、常識ある人ならこんなことにならなかったんだ。
「わかった」
同居してたことを言ってくれなかったのは少し寂しかったけど、豊も傷付いてたんだ。…忘れたいって気持ちはわかるからこれ以上言わないことにした。
あんなに僕を離さなかったのは、傷付いた過去を思い出してたのかな?僕が慰めてあげる。
そんな悲しい想いはもう二度とさせないよ。
2
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
絶頂の快感にとろける男の子たち【2023年短編】
ゆめゆき
BL
2023年に書いたものを大体まとめました。セックスに夢中になっちゃう男の子たちの話
しっちゃかめっちゃかなシチュエーション。
個別に投稿していたものにお気に入り、しおりして下さった方、ありがとうございました!
童貞処女が闇オークションで公開絶頂したあと石油王に買われて初ハメ☆
はに丸
BL
闇の人身売買オークションで、ノゾムくんは競りにかけられることになった。
ノゾムくん18才は家族と海外旅行中にテロにあい、そのまま誘拐されて離れ離れ。転売の末子供を性商品として売る奴隷商人に買われ、あげくにオークション出品される。
そんなノゾムくんを買ったのは、イケメン石油王だった。
エネマグラ+尿道プラグの強制絶頂
ところてん
挿入中出し
ていどです。
闇BL企画さん参加作品。私の闇は、ぬるい。オークションと石油王、初めて書きました。
発情期がはじまったらαの兄に子作りセッされた話
よしゆき
BL
αの兄と二人で生活を送っているΩの弟。密かに兄に恋心を抱く弟が兄の留守中に発情期を迎え、一人で乗り切ろうとしていたら兄が帰ってきてめちゃくちゃにされる話。
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる