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第六章
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「えっ?鍵で開けたんだけど?」
「その鍵はどうしたんですか?盗んだんですか?警察呼びますよ?」
「ちょっ、つっちーに連絡してよ。あいつ、拗ねてさ…連絡先全部変えやがったから俺からはできないんだ。前に会社の前で待ち伏せしたら怒られたし…」
「今日は遅くなるそうです。今日のところはお引き取りください。あっ、鍵は置いていって下さいね」
「なんでだよ?鍵取られたら、俺もうここには入れないだろ?」
「あ、当たり前じゃないですか!さあ!」
手を出して受け取ろうとするも、不法侵入男は渡すつもりはないらしい。
「では、仕方ないですね」
携帯を取り出し警察に電話をかけようとしている僕に慌てた男が腕を掴む。
「つっちーに聞いてくれたらわかるから。俺、西村健介。聞いてみて?今日泊まるとこないんだ。連絡してよ」
帰ろうとしない男…西村に呆れる。どうして鍵を持っているのか?豊が渡したのだろうか?元彼なら持ってても可笑しくないけど…。
もしかしたら、以前同居していた?
豊はそんなこと言わなかったしな…。太田くんが言ってたのは、前は高校の同級生と住んでた…西村は高校の終わりから付き合ってた…。太田くんが二人の仲を友だちだと思っていても不思議はないから…。
やっぱり、僕の前の住人なのだろう。
でも何故鍵を返してもらわなかったんだろう?
嫌だな…。それでも鍵を返さないのはおかしいし…。鍵を持たれたまま帰られるのは困るので、豊に連絡した。
仕事中だったら出られないかもしれないと思ったけど、直ぐに電話に出てくれた。
『どうした?珍しいな電話かけてくるなんて』
「ごめん、仕事中に」
『ああ、今は大丈夫』
「今、帰ったら、西村って人が勝手に部屋に上がってて、鍵持ってるし、帰らないし…困ってるんだけど」
『健介が?』
「あの時の人だよね…?」
『鍵…あっ、そう言えば返してもらってなかった』
「なんか今日泊まるとこないからって、帰らないんだ」
『隆、悪い。俺もうちょっと帰れないんだ。仕事終わったら直ぐ帰るから。追い出せたら追い出しても構わない』
ため息しか出ない。
厄介なことにイライラする。
「つっちー、直ぐ帰るって言ったろ?」
「仕事がもう少しあるので直ぐには帰れないそうです。もう一度言いますが、鍵を置いて出て行って下さい」
「えー、つっちー帰るって言ったんだろ?俺に会いたいに決まってる」
「なんであなたに会いたいんですか?」
なんかこの人と話したくない。
「んー、つっちーは俺のこと好きだから」
それは前のこと。
今は僕のことが好きなはずだ。
この前も気持ちは僕のって言ってくれた。その言葉を信じたんだ。あの女の人の事はまだわからないけど、目の前のこの男はもう元彼でしかないんだ。
こんな不愉快な奴の相手はしたくないから、晩御飯の準備をしようと買ってきた食材を置いて、着替えに部屋に入った。
嫌だな~。
料理を始めると、「何作るの?」と無邪気に聞いてくる。
「お前の分は無いから。食べたかったら近くのコンビニでも行って…いや、ファミレスにでも行って食べてきたら。ついでにどっかホテルでも泊まってこいよ」
「その鍵はどうしたんですか?盗んだんですか?警察呼びますよ?」
「ちょっ、つっちーに連絡してよ。あいつ、拗ねてさ…連絡先全部変えやがったから俺からはできないんだ。前に会社の前で待ち伏せしたら怒られたし…」
「今日は遅くなるそうです。今日のところはお引き取りください。あっ、鍵は置いていって下さいね」
「なんでだよ?鍵取られたら、俺もうここには入れないだろ?」
「あ、当たり前じゃないですか!さあ!」
手を出して受け取ろうとするも、不法侵入男は渡すつもりはないらしい。
「では、仕方ないですね」
携帯を取り出し警察に電話をかけようとしている僕に慌てた男が腕を掴む。
「つっちーに聞いてくれたらわかるから。俺、西村健介。聞いてみて?今日泊まるとこないんだ。連絡してよ」
帰ろうとしない男…西村に呆れる。どうして鍵を持っているのか?豊が渡したのだろうか?元彼なら持ってても可笑しくないけど…。
もしかしたら、以前同居していた?
豊はそんなこと言わなかったしな…。太田くんが言ってたのは、前は高校の同級生と住んでた…西村は高校の終わりから付き合ってた…。太田くんが二人の仲を友だちだと思っていても不思議はないから…。
やっぱり、僕の前の住人なのだろう。
でも何故鍵を返してもらわなかったんだろう?
嫌だな…。それでも鍵を返さないのはおかしいし…。鍵を持たれたまま帰られるのは困るので、豊に連絡した。
仕事中だったら出られないかもしれないと思ったけど、直ぐに電話に出てくれた。
『どうした?珍しいな電話かけてくるなんて』
「ごめん、仕事中に」
『ああ、今は大丈夫』
「今、帰ったら、西村って人が勝手に部屋に上がってて、鍵持ってるし、帰らないし…困ってるんだけど」
『健介が?』
「あの時の人だよね…?」
『鍵…あっ、そう言えば返してもらってなかった』
「なんか今日泊まるとこないからって、帰らないんだ」
『隆、悪い。俺もうちょっと帰れないんだ。仕事終わったら直ぐ帰るから。追い出せたら追い出しても構わない』
ため息しか出ない。
厄介なことにイライラする。
「つっちー、直ぐ帰るって言ったろ?」
「仕事がもう少しあるので直ぐには帰れないそうです。もう一度言いますが、鍵を置いて出て行って下さい」
「えー、つっちー帰るって言ったんだろ?俺に会いたいに決まってる」
「なんであなたに会いたいんですか?」
なんかこの人と話したくない。
「んー、つっちーは俺のこと好きだから」
それは前のこと。
今は僕のことが好きなはずだ。
この前も気持ちは僕のって言ってくれた。その言葉を信じたんだ。あの女の人の事はまだわからないけど、目の前のこの男はもう元彼でしかないんだ。
こんな不愉快な奴の相手はしたくないから、晩御飯の準備をしようと買ってきた食材を置いて、着替えに部屋に入った。
嫌だな~。
料理を始めると、「何作るの?」と無邪気に聞いてくる。
「お前の分は無いから。食べたかったら近くのコンビニでも行って…いや、ファミレスにでも行って食べてきたら。ついでにどっかホテルでも泊まってこいよ」
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