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第一章
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「その前はどこに?」
「その前?」
「そう、公園の前」
「公園の前は…ファミレスとかスーパーとかコンビ……」
まずい!
これ以上嘘をついて、土屋くんを怒らせるのが嫌で誘導尋問のような質問に素直に答えていたら…全部喋ってた。
ずっと避けてたのバレバレですか?恐る恐る土屋くんを見ると怒った顔ではなく何故か泣きそうな顔だった。
「あ、あの…」
「俺のせいか?ルームシェアが嫌なら出て行くか?頼むからそんなとこで一人で時間潰すなよ。特に公園なんて危ない!…襲われるぞ」
いくら僕が華奢だからと言って、スーツ姿の男が襲われるなんて…ないない。
ああ、カツアゲとか?それも今まで経験ない。腕力には全然自信がないから襲われたらひとたまりもないだろうけど。
自分が同性しか好きにならないと自覚してからも誰にも言えずにいた。
好きになるだけの恋愛は出口がない。告って振られて次の人。そんな気楽に考えられないし告ることもないから色んなものが蓄積されて不安定な気持ちに押し潰されそうになった。
大学の時に一度だけゲイの人たちが集まる店に行ったことがある。自分の気持ちから逃げ出して発散したかったのかもしれない。
店に入ると一人の人が近づいてきた。背が高くがっちりとした体格で、ちょっと見強面のお兄さんが笑顔で話しかけてくる。
「誰かと待ち合わせ?それとも一人?」
一人だと答えると、一緒に飲もうと誘われた。お酒は好きじゃないけど、少し付き合うくらいならいいかと頷くと手を握られた。その人は飲もうと誘ったのにすぐにでもその店を出て多分…ホテルに行きたかったんだろう、手を引いて出口に向かう。
でも僕が嫌がったら、じゃあって個室に連れて行かれた。
抱きしめられ、キスされて、怖くなってその人を突き飛ばして逃げてしまった。
多分僕がそんな抵抗をするなんて思ってなかったんだろう。普通なら力尽くで突き飛ばしたってビクともしなさそうな逞しい身体だったから、逃げないようにするなんて簡単なことだったと思う。していることとは裏腹な優しげな声で「何だよ恥ずかしいのか?」なんて聞いてくる間に逃げ出した。
でも、普通に生活していれば、いくら平均より低い身長で、筋肉の付いていない細く頼りない身体の僕でも襲われそうになったことはない。
なんだか泣きそうな土屋くんに申し訳なさでいっぱいになった。
「ごめんね。違うんだ…ここはとっても気に入ってる。通勤にも便利だし、家賃もとっても満足してるんだ。土屋さえ良ければこれからもここにいたいんだけど…」
後は自分の問題だし。
いや…後も先も自分の問題しかないんだけど…。
「理由を聞いても良い?」
「……」
それは流石に言えないよ。
口を開けない僕に、「じゃあさ…」と提案をする。
「これからはまっすぐ帰って来て。絶対に公園であんなふうに時間潰さないで。後、……できたら…嫌、いい」
「わかった。ごめん」
土屋くんが何を言いたかったのかわからないけど、本人は僕の答えに満足したのか椅子から立ち上がり、僕の頭に手を置いてまるで『よしよし』と撫でるようにしてシャワーを浴びに浴室へと消えた。
「ふっ~…」
深く息を吐く。
酸欠になりそうなほど息を詰めてたのか?
なんだったんだ?まあ、そりゃ嫌かもしれない。自分を避けるようにされたら僕だって嫌な気持ちになる。いつ気付いたのかわからないけど、最初からと思われてたら期間も長いし、心配もされてたからもっと詰られたって文句は言えなかった。
失敗したな。
土屋くんに悪いことした。
「その前?」
「そう、公園の前」
「公園の前は…ファミレスとかスーパーとかコンビ……」
まずい!
これ以上嘘をついて、土屋くんを怒らせるのが嫌で誘導尋問のような質問に素直に答えていたら…全部喋ってた。
ずっと避けてたのバレバレですか?恐る恐る土屋くんを見ると怒った顔ではなく何故か泣きそうな顔だった。
「あ、あの…」
「俺のせいか?ルームシェアが嫌なら出て行くか?頼むからそんなとこで一人で時間潰すなよ。特に公園なんて危ない!…襲われるぞ」
いくら僕が華奢だからと言って、スーツ姿の男が襲われるなんて…ないない。
ああ、カツアゲとか?それも今まで経験ない。腕力には全然自信がないから襲われたらひとたまりもないだろうけど。
自分が同性しか好きにならないと自覚してからも誰にも言えずにいた。
好きになるだけの恋愛は出口がない。告って振られて次の人。そんな気楽に考えられないし告ることもないから色んなものが蓄積されて不安定な気持ちに押し潰されそうになった。
大学の時に一度だけゲイの人たちが集まる店に行ったことがある。自分の気持ちから逃げ出して発散したかったのかもしれない。
店に入ると一人の人が近づいてきた。背が高くがっちりとした体格で、ちょっと見強面のお兄さんが笑顔で話しかけてくる。
「誰かと待ち合わせ?それとも一人?」
一人だと答えると、一緒に飲もうと誘われた。お酒は好きじゃないけど、少し付き合うくらいならいいかと頷くと手を握られた。その人は飲もうと誘ったのにすぐにでもその店を出て多分…ホテルに行きたかったんだろう、手を引いて出口に向かう。
でも僕が嫌がったら、じゃあって個室に連れて行かれた。
抱きしめられ、キスされて、怖くなってその人を突き飛ばして逃げてしまった。
多分僕がそんな抵抗をするなんて思ってなかったんだろう。普通なら力尽くで突き飛ばしたってビクともしなさそうな逞しい身体だったから、逃げないようにするなんて簡単なことだったと思う。していることとは裏腹な優しげな声で「何だよ恥ずかしいのか?」なんて聞いてくる間に逃げ出した。
でも、普通に生活していれば、いくら平均より低い身長で、筋肉の付いていない細く頼りない身体の僕でも襲われそうになったことはない。
なんだか泣きそうな土屋くんに申し訳なさでいっぱいになった。
「ごめんね。違うんだ…ここはとっても気に入ってる。通勤にも便利だし、家賃もとっても満足してるんだ。土屋さえ良ければこれからもここにいたいんだけど…」
後は自分の問題だし。
いや…後も先も自分の問題しかないんだけど…。
「理由を聞いても良い?」
「……」
それは流石に言えないよ。
口を開けない僕に、「じゃあさ…」と提案をする。
「これからはまっすぐ帰って来て。絶対に公園であんなふうに時間潰さないで。後、……できたら…嫌、いい」
「わかった。ごめん」
土屋くんが何を言いたかったのかわからないけど、本人は僕の答えに満足したのか椅子から立ち上がり、僕の頭に手を置いてまるで『よしよし』と撫でるようにしてシャワーを浴びに浴室へと消えた。
「ふっ~…」
深く息を吐く。
酸欠になりそうなほど息を詰めてたのか?
なんだったんだ?まあ、そりゃ嫌かもしれない。自分を避けるようにされたら僕だって嫌な気持ちになる。いつ気付いたのかわからないけど、最初からと思われてたら期間も長いし、心配もされてたからもっと詰られたって文句は言えなかった。
失敗したな。
土屋くんに悪いことした。
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