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ハルに思う、その全てがカズ限りない気持ちだと
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家に帰り、風呂に入った。別れ際のはるちゃんの顔を思い浮かべながら抜いてしまったのは誰にも言えない。リビングに置いてあったスマホを見ると二分前に着信があった。母さんにご飯よと呼び止められたけど、大事な電話が掛かってきたと言って自室に戻った。入った途端電話が鳴る。
「もしもし…えっと…」
『何よ!わかるでしょ?』
「はい…菜月さんですよね?どうしたんすか?」
『春が今お風呂に入ってて、その間に電話したかったのよ』
「俺も風呂入ってたんです。電話、出なくてすみません」
『こちらこそ、ごめんなさいね』
「いいえ。それで…どんな用なんですか?」
俺の番号が菜月さんの携帯電話に残ってるから掛かってくるかもって言ってたけど、まさか本当に掛かってくるとは……。
あの時、はるちゃんの電話番号とメールアドレスは登録した。ガラケーなんだと恥ずかしそうにする。そんなの関係ないのに。一緒に菜月さんの番号にも名前を登録した。まさかとは思ったけど、知らない番号だと無視したりしたら怖そうだから。
『あんた、ホントに春の事好きなの?』
「はい。さっきも言ったじゃないですか」
『じゃあ、春の事守りなさいよね』
「えっ?」
『あの子、無自覚なのよ』
「はい、それは俺も思います」
『でしょ?学校での様子なんかも教えて欲しいんだけど』
「それは構いませんけど…そのこと、はるちゃんは知ってるんですか?」
『そんなの知ってるわけないじゃない。こんなことあんたに頼んだって知ったら、怒るわよ。だから、春がお風呂に入ってる間に電話したかったの』
「ああ、それで。いいですよ。でも…」
『何よ?』
「俺が守りますから、問題は起こらないと思います。だいたい、何かあってからの報告なんか聞きたくないんでしょ?」
『わかってるじゃない』
「毎日、何もなかったと報告するんですか?」
『そうね…、それはうっとおしいわね』
「何ですか、それ?自分が報告しろとか言っといて」
『悪かったわね。こんなこと春が知ったら……あっ、上がってくる。取り敢えず、二日か三日に一度くらいね。よろしく』
………慌ただしく電話は切れた。
一階に下りて、ご飯を食べる。やっぱり母さんの飯は美味い。
「どうだった?」
先に食べてるわよと言いながら、俺が下りてくるのを待っててくれたのか、母さんの前にはまだ箸をつけてないおかずが並んでいた。
今年中学に入った妹の麻里子は唐揚げを頬張りながら、テレビを見ている。兄の事なんか興味がないのだろう。父さんはまだ帰っていない。今年大学に入った兄の悠太もまだ帰っていないようだ。
我が家は三歳差で三人兄妹だ。自分で言うのもなんだけど、去年から今年の三月まで二人が受験生で大変だった。どうしてもピリピリした雰囲気になってしまう。入学に伴う費用も一度に三人分だ。
「それがさ!重大報告があるんだよ!」
「何よそれ?重大発表とは言うけど、報告?」
「そうなんだよ。驚くぞ~」
「何よ勿体ぶって」
「ほら、はるちゃんの事、覚えてるだろ?」
「ああ、一登の初恋の」
「そうそう!そのはるちゃんの名前がわかった」
「えっ?」
「同じ高校で…」
「同じ高校だったの?」
「そうそう!同じクラスでさ…」
「えっっ!そんな偶然!あるんだね。…でもさ、本当にはるちゃんなの?」
「間違いないよ。俺の事、かずくんって呼んだから」
「へっ~、…でも入学してからだいぶ経つのに、今更?」
「それがさ、色々あるんだよ」
「色々って何よ?」
「色々は色々だよ。内緒」
「教えてくれてもいいじゃない」
「ダメ!」
「仕方ないわね」
「ねえ、そのはるちゃんって男の子だったって言うかず兄の初恋の相手でしょ?物凄く可愛い子だったよね?」
「お前が覚えてるわけないだろ?」
俺だって写真が記憶を補っている。いや、補ってるどころか全てかもしれない。麻里子はまだ赤ん坊だったのだ。その頃の記憶が鮮明に残ってるなんてありえない。
「だって、わたし写真持ってるもん。わたしを抱いたかず兄とはるちゃんの写真」
「えっ?そうなの?」
「うん。まあ、あの可愛さは女の子だよね。お目目クリクリ、髪の毛括って、おまけにスカート履いてたら誰だって間違うよ」
「それで、何て名前だったの?」
「藍川春彦」
「もしもし…えっと…」
『何よ!わかるでしょ?』
「はい…菜月さんですよね?どうしたんすか?」
『春が今お風呂に入ってて、その間に電話したかったのよ』
「俺も風呂入ってたんです。電話、出なくてすみません」
『こちらこそ、ごめんなさいね』
「いいえ。それで…どんな用なんですか?」
俺の番号が菜月さんの携帯電話に残ってるから掛かってくるかもって言ってたけど、まさか本当に掛かってくるとは……。
あの時、はるちゃんの電話番号とメールアドレスは登録した。ガラケーなんだと恥ずかしそうにする。そんなの関係ないのに。一緒に菜月さんの番号にも名前を登録した。まさかとは思ったけど、知らない番号だと無視したりしたら怖そうだから。
『あんた、ホントに春の事好きなの?』
「はい。さっきも言ったじゃないですか」
『じゃあ、春の事守りなさいよね』
「えっ?」
『あの子、無自覚なのよ』
「はい、それは俺も思います」
『でしょ?学校での様子なんかも教えて欲しいんだけど』
「それは構いませんけど…そのこと、はるちゃんは知ってるんですか?」
『そんなの知ってるわけないじゃない。こんなことあんたに頼んだって知ったら、怒るわよ。だから、春がお風呂に入ってる間に電話したかったの』
「ああ、それで。いいですよ。でも…」
『何よ?』
「俺が守りますから、問題は起こらないと思います。だいたい、何かあってからの報告なんか聞きたくないんでしょ?」
『わかってるじゃない』
「毎日、何もなかったと報告するんですか?」
『そうね…、それはうっとおしいわね』
「何ですか、それ?自分が報告しろとか言っといて」
『悪かったわね。こんなこと春が知ったら……あっ、上がってくる。取り敢えず、二日か三日に一度くらいね。よろしく』
………慌ただしく電話は切れた。
一階に下りて、ご飯を食べる。やっぱり母さんの飯は美味い。
「どうだった?」
先に食べてるわよと言いながら、俺が下りてくるのを待っててくれたのか、母さんの前にはまだ箸をつけてないおかずが並んでいた。
今年中学に入った妹の麻里子は唐揚げを頬張りながら、テレビを見ている。兄の事なんか興味がないのだろう。父さんはまだ帰っていない。今年大学に入った兄の悠太もまだ帰っていないようだ。
我が家は三歳差で三人兄妹だ。自分で言うのもなんだけど、去年から今年の三月まで二人が受験生で大変だった。どうしてもピリピリした雰囲気になってしまう。入学に伴う費用も一度に三人分だ。
「それがさ!重大報告があるんだよ!」
「何よそれ?重大発表とは言うけど、報告?」
「そうなんだよ。驚くぞ~」
「何よ勿体ぶって」
「ほら、はるちゃんの事、覚えてるだろ?」
「ああ、一登の初恋の」
「そうそう!そのはるちゃんの名前がわかった」
「えっ?」
「同じ高校で…」
「同じ高校だったの?」
「そうそう!同じクラスでさ…」
「えっっ!そんな偶然!あるんだね。…でもさ、本当にはるちゃんなの?」
「間違いないよ。俺の事、かずくんって呼んだから」
「へっ~、…でも入学してからだいぶ経つのに、今更?」
「それがさ、色々あるんだよ」
「色々って何よ?」
「色々は色々だよ。内緒」
「教えてくれてもいいじゃない」
「ダメ!」
「仕方ないわね」
「ねえ、そのはるちゃんって男の子だったって言うかず兄の初恋の相手でしょ?物凄く可愛い子だったよね?」
「お前が覚えてるわけないだろ?」
俺だって写真が記憶を補っている。いや、補ってるどころか全てかもしれない。麻里子はまだ赤ん坊だったのだ。その頃の記憶が鮮明に残ってるなんてありえない。
「だって、わたし写真持ってるもん。わたしを抱いたかず兄とはるちゃんの写真」
「えっ?そうなの?」
「うん。まあ、あの可愛さは女の子だよね。お目目クリクリ、髪の毛括って、おまけにスカート履いてたら誰だって間違うよ」
「それで、何て名前だったの?」
「藍川春彦」
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