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第一章
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なんだかブツブツ言ってるけど、事故じゃないなら……そこまで考えてぶぁっと顔に熱が集まった。
じゃ、じゃあ…あれはキス?
「怒ってないみたいだし…でも、何も言わないからさ…」
「だって…話題にして欲しくないかなって思ってたから…」
「何か言ってくるかなって思ってたのに…『なんで、あんなことしたの?』って、さっきみたいにさ」
「『嫌なこと思い出させるな』とか言われたら辛いから…」
「それってさ『キスなら良かったのに』って、思ってくれてたってこと?」
そうなのかな?
そうかもしれない…。
「俺がなんで佐々城に写真、お願いしたかわかる?」
「背がお姉さんと同じくらいって…」
「そんなの、言い訳。佐々城だから頼んだの。佐々城、あの時言ったよな『女子に頼め』って」
「うん。誤解されるから嫌だって…」
「俺は、どこかでその写真を見たり、噂を聞いた佐々城に誤解されるのが嫌だったんだ。だいたい、男の着替えを喜んで手伝うっておかしいと思わなかったの?松本の着替え手伝うなんか、死んでも嫌だから」
そう言えば、セーラー服を着る時も脱ぐ時もやけに楽しそうな安達君に、からかわれていると思ってたから苦しかった。
でも…、
僕に触れることが嬉しかった?
僕だからあの写真を撮った?
あの触れた唇は僕だから?
あの触れた唇は…最初からそのつもりだった?
じっと見つめられたまま、胸の奥にしまい込んだあの時の唇の感触を思い出した。
僕の髪を安達君の手が梳いている。どうして良いかわからないから視線が段々下に向く。
顎を持たれて目線が合うと今まで梳いていた手は後頭部に固定され、空いている手で肩を持たれた。
ゆっくりとベッドに横になると直ぐそこに安達君の顔がある。
まるでスローモーションのようにゆっくりと顔が近ずいて、反らせず、瞬きすら出来ない僕は『嫌なら逃げて』と囁かれて、真剣なその眼差しに両腕を伸ばしてその背中に回した。
それが僕からの『キスして』って合図だったように直ぐに降りてくる唇。
チュっと触れて離れたけれど直ぐに唇に戻る。
「目…」
「えっ?」
「目、つむらないの?」
「だって…」
見ていたい。
「閉じた方が良いの?」
「どっちでも良いよ。見てたいの?」
「…うん」
「可愛いね」
そんな会話の間も絶え間なく安達君の唇が僕の唇にチュ、チュって触れてくる。
「好きだよ」
「僕も……」
背中に回した腕に力を入れて抱きつくと、二人の隙間が無くなった。
眼鏡を取られ、前髪を上げて額にキス。そこから段々下に下りてくる唇に目を開けていられない。
「ふふっ…」
「何?」
「やっと目、閉じた」
「嫌だった?」
「構わない。どんな佐々城でも…好きだよ」
囁かれる甘い台詞に、いつもとは違う近すぎる二人の距離に、恥ずかしさより嬉しさがこみ上げた。
じゃ、じゃあ…あれはキス?
「怒ってないみたいだし…でも、何も言わないからさ…」
「だって…話題にして欲しくないかなって思ってたから…」
「何か言ってくるかなって思ってたのに…『なんで、あんなことしたの?』って、さっきみたいにさ」
「『嫌なこと思い出させるな』とか言われたら辛いから…」
「それってさ『キスなら良かったのに』って、思ってくれてたってこと?」
そうなのかな?
そうかもしれない…。
「俺がなんで佐々城に写真、お願いしたかわかる?」
「背がお姉さんと同じくらいって…」
「そんなの、言い訳。佐々城だから頼んだの。佐々城、あの時言ったよな『女子に頼め』って」
「うん。誤解されるから嫌だって…」
「俺は、どこかでその写真を見たり、噂を聞いた佐々城に誤解されるのが嫌だったんだ。だいたい、男の着替えを喜んで手伝うっておかしいと思わなかったの?松本の着替え手伝うなんか、死んでも嫌だから」
そう言えば、セーラー服を着る時も脱ぐ時もやけに楽しそうな安達君に、からかわれていると思ってたから苦しかった。
でも…、
僕に触れることが嬉しかった?
僕だからあの写真を撮った?
あの触れた唇は僕だから?
あの触れた唇は…最初からそのつもりだった?
じっと見つめられたまま、胸の奥にしまい込んだあの時の唇の感触を思い出した。
僕の髪を安達君の手が梳いている。どうして良いかわからないから視線が段々下に向く。
顎を持たれて目線が合うと今まで梳いていた手は後頭部に固定され、空いている手で肩を持たれた。
ゆっくりとベッドに横になると直ぐそこに安達君の顔がある。
まるでスローモーションのようにゆっくりと顔が近ずいて、反らせず、瞬きすら出来ない僕は『嫌なら逃げて』と囁かれて、真剣なその眼差しに両腕を伸ばしてその背中に回した。
それが僕からの『キスして』って合図だったように直ぐに降りてくる唇。
チュっと触れて離れたけれど直ぐに唇に戻る。
「目…」
「えっ?」
「目、つむらないの?」
「だって…」
見ていたい。
「閉じた方が良いの?」
「どっちでも良いよ。見てたいの?」
「…うん」
「可愛いね」
そんな会話の間も絶え間なく安達君の唇が僕の唇にチュ、チュって触れてくる。
「好きだよ」
「僕も……」
背中に回した腕に力を入れて抱きつくと、二人の隙間が無くなった。
眼鏡を取られ、前髪を上げて額にキス。そこから段々下に下りてくる唇に目を開けていられない。
「ふふっ…」
「何?」
「やっと目、閉じた」
「嫌だった?」
「構わない。どんな佐々城でも…好きだよ」
囁かれる甘い台詞に、いつもとは違う近すぎる二人の距離に、恥ずかしさより嬉しさがこみ上げた。
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