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ヒューメニア戦争編
第102話 礎となる者 ー王女マリアー
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ヒューメニア連合軍と魔王国が戦争を開始して数時間。戦況は我が国が押していると聞く。
転生した勇者レオンハルトが魔王国を敵と謳い、侵略者と戦う……そんなシナリオで戦争は進行している。
だけど、このまま戦争へ勝利した時、それは全てレオンハルトの功績となる。そうなった時……この国は……。
思えば、レオンハルトはあの時から様子が変だった。兵士長と剣術の修行をしていたあの時から。
突然意識を失ったレオンハルト。彼は再び目覚めると剣士長を圧倒した。6歳の子供が……だ。
その後はその知識、剣術、全てに置いて一目置かれる存在となった。彼は王室の親類という立場から私達へと忠誠を誓い、国内をまとめた。
今思えばその裏で蠢いていたのだ。
我が国を、王座を奪う為に。だけど、それだけではないはずだ。あの話が本当ならば。
「マリア様」
扉からイルムの声が聞こえる。宣戦布告を受けてからこの塔の警備も手薄になり、私も外の情報を得ることができるようになった。
……時折大臣のトルコラが見せ付けるように国内情勢を語りに来ていたから多少は知っていたのだけど。
「どうだった?」
「マリア様の言っておられた通り、国外に他種族の者を捕える施設がありました。魔神竜の力の名残を使い、強力な傀儡兵士へと変異させていたようです」
やはり。レオンハルトには別の目的がある。このヒューメニアで実権を握る以外の目的が。
となれば、王室は奴の踏み台。ヒューメニアから外の世界を望んだ時、私達の存在は不要になるのは明白……。
彼女達の言っていた通りだった。
「イルム。私に着く者達の方は? 多少なりともおりますか?」
「はい。既にマリア様の救出準備は整っております。兵士に冒険者を合わせて2000ほど……前王様とマリア様のお人柄によるものです」
「ありがとう。作戦決行の時間は?」
「2時間後。陽動作戦からこの塔へ冒険者を送り込みます」
2時間後……か。もどかしい。心は今すぐにでも行動を開始したいのに。
「分かりましたわ。それともう1つ、頼みごとをしても?」
「もちろんです」
「今すぐ使い魔を飛ばして欲しいのです」
「どちらへ?」
「魔王の元へ」
「ま、魔王!? 今戦争中の相手ですよ!?」
「大丈夫。私が皆を守りましょう」
そう。これは保険。もし、レオンハルトが私欲に取り憑かれた男ならば……負けを認めるようなことは決してしないはず。この国の者を犠牲にしてでも勝利を掴みに行くはず。
私は、その可能性の為に動く。
「マリア様……」
「イルム。私の覚悟……汲んでくれる?」
「……分かりました。イルムはどんな時でも姫様の味方です」
扉越しにイルムの悲しげな声が聞こえて来る。
「それでは姫様、2時間後に」
「ええ。信じていますよ」
走って行く音が聞こえる。また私は1人になる。
……。
まさか、魔王国から使い魔を送って来るなんて。
私を利用するつもりなのは明らかだ。
だけど……彼らの言っていた人身売買や人体改造の話は間違い無い事実。
幼い頃、レオンハルトは一言だけ呟いたことがある。
「多種族の者は全て人に従うべきだ」……と。
あの言葉、今なら分かる。それが彼の本心。
きっとこの戦争に勝利しても、敗北しても、この国の行き着く先は……破滅。
……。
そんなことは私が許さない。
私が見据えていた未来は、もっと違う形のもの。
例え、私がどのような汚名を受けようとも。尊厳を失おうとも、民が生きてさえいれば国となる。
私達はそれを守り、愛する為の存在。レオンハルトは間違ってる。絶対に。
お父様……愚かな私をお許し下さい。
そして、私の愛しいアレクセイ。
どうか、どうか幸せでいて。
民達は任せましたよ。
転生した勇者レオンハルトが魔王国を敵と謳い、侵略者と戦う……そんなシナリオで戦争は進行している。
だけど、このまま戦争へ勝利した時、それは全てレオンハルトの功績となる。そうなった時……この国は……。
思えば、レオンハルトはあの時から様子が変だった。兵士長と剣術の修行をしていたあの時から。
突然意識を失ったレオンハルト。彼は再び目覚めると剣士長を圧倒した。6歳の子供が……だ。
その後はその知識、剣術、全てに置いて一目置かれる存在となった。彼は王室の親類という立場から私達へと忠誠を誓い、国内をまとめた。
今思えばその裏で蠢いていたのだ。
我が国を、王座を奪う為に。だけど、それだけではないはずだ。あの話が本当ならば。
「マリア様」
扉からイルムの声が聞こえる。宣戦布告を受けてからこの塔の警備も手薄になり、私も外の情報を得ることができるようになった。
……時折大臣のトルコラが見せ付けるように国内情勢を語りに来ていたから多少は知っていたのだけど。
「どうだった?」
「マリア様の言っておられた通り、国外に他種族の者を捕える施設がありました。魔神竜の力の名残を使い、強力な傀儡兵士へと変異させていたようです」
やはり。レオンハルトには別の目的がある。このヒューメニアで実権を握る以外の目的が。
となれば、王室は奴の踏み台。ヒューメニアから外の世界を望んだ時、私達の存在は不要になるのは明白……。
彼女達の言っていた通りだった。
「イルム。私に着く者達の方は? 多少なりともおりますか?」
「はい。既にマリア様の救出準備は整っております。兵士に冒険者を合わせて2000ほど……前王様とマリア様のお人柄によるものです」
「ありがとう。作戦決行の時間は?」
「2時間後。陽動作戦からこの塔へ冒険者を送り込みます」
2時間後……か。もどかしい。心は今すぐにでも行動を開始したいのに。
「分かりましたわ。それともう1つ、頼みごとをしても?」
「もちろんです」
「今すぐ使い魔を飛ばして欲しいのです」
「どちらへ?」
「魔王の元へ」
「ま、魔王!? 今戦争中の相手ですよ!?」
「大丈夫。私が皆を守りましょう」
そう。これは保険。もし、レオンハルトが私欲に取り憑かれた男ならば……負けを認めるようなことは決してしないはず。この国の者を犠牲にしてでも勝利を掴みに行くはず。
私は、その可能性の為に動く。
「マリア様……」
「イルム。私の覚悟……汲んでくれる?」
「……分かりました。イルムはどんな時でも姫様の味方です」
扉越しにイルムの悲しげな声が聞こえて来る。
「それでは姫様、2時間後に」
「ええ。信じていますよ」
走って行く音が聞こえる。また私は1人になる。
……。
まさか、魔王国から使い魔を送って来るなんて。
私を利用するつもりなのは明らかだ。
だけど……彼らの言っていた人身売買や人体改造の話は間違い無い事実。
幼い頃、レオンハルトは一言だけ呟いたことがある。
「多種族の者は全て人に従うべきだ」……と。
あの言葉、今なら分かる。それが彼の本心。
きっとこの戦争に勝利しても、敗北しても、この国の行き着く先は……破滅。
……。
そんなことは私が許さない。
私が見据えていた未来は、もっと違う形のもの。
例え、私がどのような汚名を受けようとも。尊厳を失おうとも、民が生きてさえいれば国となる。
私達はそれを守り、愛する為の存在。レオンハルトは間違ってる。絶対に。
お父様……愚かな私をお許し下さい。
そして、私の愛しいアレクセイ。
どうか、どうか幸せでいて。
民達は任せましたよ。
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