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第3章 合法侵入のスキルを狙う刺客、キキーモラ
3-8 ヤンデレ雪女はプレゼントを喜んでくれたようです
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それからしばらくののち。
「きゃはははは! キキーモラさんって、そんな冒険してたの!?」
「ええ。あたしの『スキル吸収』は味方にも使えるのよ。それを利用して相手をはめたってわけ!」
「すごいや! 面白いな、そういう戦いって!」
スネコスリと一本だたらはそんな風に言いながら、楽しそうに彼女と食事をしていた。
なお『モンスターには、妖怪が醜く見えている』ということを知っているためか、スネコスリは彼女には擦りつかない。
「ねえ、キキーモラさん? また、あたしたちと遊んでくれる?」
「今度はさ! 一緒に花を摘みに行こうよ! 僕、冠作ってあげるから」
「ええ。……そうね、楽しみにしているわ?」
だが、彼女にとっては子どもは可愛い存在なのだろう。
表情は柔らかく、まるで保護者のような表情で彼らと食事を楽しんでいた。
手の目はその様子を見て、嬉しそうに笑いながら俺の肩をポンと叩く。
「これで、あいつとも仲良くやれそうだな……な、ナーリ?」
「ああ。この調子でトイシュとも和解できればいいんだけどな……」
「だな。それより、今はこっちが先だな?」
そんな様子を尻目にを見ながら、俺は手の目と一緒に氷室で買ってきた氷に細工を施すことにした。
「どうだ、手の目? 結構高かったけど、いい氷だろ?
「ああ、姉御の奴、喜ぶぞ?」
「……悪いな、手伝ってもらって」
手の目はのこぎりを使って氷を大雑把に切り出しながら尋ねる。
「なあ、ナーリ? ……ありがとうな……」
「なんだ? 礼を言うのはこっちのほうだろ」
「いや……姉御のことをこんな風に気にかけてくれたのが嬉しくてな」
「フレアを?」
「ああ。姉御はさ、口では『ナーリに尽くせるだけ幸せ』って言ってるけど……やっぱり、ナーリに気にかけては貰いたがっていたからさ」
「だよな……けど俺は……」
「分かってる。お前はまだ、姉御のことを好きかどうかわからないんだろ? けど……もし気持ちが決まってきたら、また教えてくれよ? 俺は、どっちでも応援するからさ」
手の目に言われる通り、まだ俺は彼女に異性としての好意を持てていない。
けど、このプレゼントを渡せば、少しは自分の気持ちがわかるような気がした。
「ああ……まあ、その前にハイクラー家の件を片づけないとな」
「……また、あいつらの国のことも背負うつもりか?」
「ああ。いっただろ? 俺は、この世界では誰もが幸せに生きられる世界を作りたいって思ってんだよ」
俺が元の世界でどんな生活を送ってきたかは手の目には教えている。
だからこそ、手の目は何も言わずにうなづいた。……恐らく彼も、この世界で色々と厳しい思いをしてきたのだろう。
「……この世界は俺にとってはファンタジーだからな。幻想の世界でくらい夢を見たっていいじゃねえか」
「……夢、か……」
そういうと手の目はフフ、と笑う。
「ならさ。もしもその夢が現実に負けそうになったら……」
「なったら、なんだよ?」
「俺の手でお前をぶん殴って、夢の世界に引き戻してやるよ。……だからお前は、思う存分理想を貫いてくれ」
「ああ……ありがとうな」
こういう話が出来るのは手の目だけだ。
やはり彼といると心強い。
そんな風に思っていると、氷細工が完成した。
あまり綺麗な形ではないが、それでも個人的にはよくできた気がする。
「よし、それじゃあ俺は姉御を呼んでくるからな!」
「ああ、ありがとう」
そういうと、手の目は氷室から出て雪女を呼びに行った。
それからしばらくして、雪女がやってきた。
あまりキキーモラとは親しくなる気がないのか、集団の中で少し離れたところにいたところを手の目が呼んでくれたようだ。
「なに、ぬらりひょん?」
「ああ。……その、フレア。いつもいつも、俺に色々してくれただろ? 特にフリーナを従える時にはダンスの相手もしてもらってさ」
「あれは別に……。私だって、あなたと踊りたかったから……別に気にしないでいいわよ」
少し顔を赤らめる雪女に、俺は氷細工を渡す。
スネコスリをほうふつとさせる猫の形に作ったものだ。
「だからさ。……その……お礼になるかわからないけど……用意したんだ、これ……」
「え? ……これ……私に?」
「ああ。ハイクラー家の領地で買った奴だから、品質はいいと思うよ」
俺がそういうと、フレアは目を見開いておどろくような表情を見せた。
そして俺の顔を見て、
「ありがと……すっごい嬉しい。……愛してるわ、ナーリ?」
「ああ……俺も……」
「え?」
『俺も愛している』と一瞬言おうとしてやめた。
はまだ言える状況じゃないし、軽い気持ちでそれを言ったところで、手の目あたりに看破されるのが落ちだ。
……本気で相手を好きになれるまで、その言葉は封印しようと思った。
「俺も喜んでうれしいよ。……早速食べてくれる?」
「もちろんよ……いただきます」
フレアは早速、その氷細工をかじり始めた。
猫の耳の部分が彼女の小さい口に入り、かりかりと砕ける音が聞こえる。
……そして彼女は顔を上げ、俺に笑顔を見せてくれた。
「すっごい美味しい。……ありがと、ぬらりひょん。こんなに嬉しい気持ちになるの……初めてだから……」
「……あ、ああ……」
普段はクスクスと含み笑いばかりする彼女が満面の笑顔を見せてくれた。
それを見て、俺の心臓が一瞬だがトクン、と高鳴るような気がした。
(……なんだろうな、この気持ちは……)
その気持ちは興奮するような、それでいてどこか幸せな気持ちでもあった。
そんな余韻にひたっていると、彼女は心配そうに尋ねてきた。
「ねえ、ぬらりひょん……氷……高かったんじゃないの?」
「……まあな。けど、いつもフレアがしてくれることに比べたら安すぎるくらいだよ」
「そう……。ところで、なんでそんなに顔をそむけるの?」
氷を全部食べつくした彼女は、そういいながら俺の顔をぐい、と覗きこむ。
そしていつものような含み笑いを浮かべて尋ねる。
「分かった。私の魅力に気づいて、どぎまぎしてるんでしょ?」
いつもの『ナーリは自分のことが好き』と思い込むための、彼女の独り言にも似た軽口だ。
だが、俺はそれを否定できない。顔が真っ赤になっているのもわかる。
「……そう……かも……」
「え……?」
いつものように否定されると思っていたのだろうが、フレアはおどろいた表情を見せた。
そして彼女もまた、顔を赤くして目をそむけてきた。
「それ、本当に……?」
「……わからないけど……本当に、一瞬だったから……」
そう俺が答えると、おずおずとフレアは俺に一歩近づいて尋ねてきた。
「あ、あのさ、ぬらりひょん……?」
「な、なんだよフレア……」
「あなた、今度ハイクラー家に出向いて、お話をするんでしょ?」
「ああ……」
「確かあそこって、大きなバザールがあるわよね? ……それにね、手の目も一度行ってみたいって言ってたの……蛇骨さんもね」
「そうだったのか……」
「だから、その……」
そこまで言うと、フレアは顔をうつむけた。
……そうか、彼女は『自分が誘ったら、嫌な顔をするんじゃないか』ということを気にしているのかもしれない。
そう考えた俺は、自分から誘うべく口を開いた。
「そうだな。……今度ハイクラー家に行くときには……4人で行こうか? ……バザールでなにかいいものが見つかるといいな」
「そ、そうね……ありがと、ぬらりひょん……」
そうつぶやく彼女の顔は耳まで赤くなっており、とてもいとおしく感じた。
だが、先ほどのような気持ちの高揚感はもう感じない。
……やはり、あの一瞬感じた思いは恋愛感情だったのか?
けど、今フレアの顔を見ていると、前とは違う感情が湧いてくるような気持ちになった。
「きゃはははは! キキーモラさんって、そんな冒険してたの!?」
「ええ。あたしの『スキル吸収』は味方にも使えるのよ。それを利用して相手をはめたってわけ!」
「すごいや! 面白いな、そういう戦いって!」
スネコスリと一本だたらはそんな風に言いながら、楽しそうに彼女と食事をしていた。
なお『モンスターには、妖怪が醜く見えている』ということを知っているためか、スネコスリは彼女には擦りつかない。
「ねえ、キキーモラさん? また、あたしたちと遊んでくれる?」
「今度はさ! 一緒に花を摘みに行こうよ! 僕、冠作ってあげるから」
「ええ。……そうね、楽しみにしているわ?」
だが、彼女にとっては子どもは可愛い存在なのだろう。
表情は柔らかく、まるで保護者のような表情で彼らと食事を楽しんでいた。
手の目はその様子を見て、嬉しそうに笑いながら俺の肩をポンと叩く。
「これで、あいつとも仲良くやれそうだな……な、ナーリ?」
「ああ。この調子でトイシュとも和解できればいいんだけどな……」
「だな。それより、今はこっちが先だな?」
そんな様子を尻目にを見ながら、俺は手の目と一緒に氷室で買ってきた氷に細工を施すことにした。
「どうだ、手の目? 結構高かったけど、いい氷だろ?
「ああ、姉御の奴、喜ぶぞ?」
「……悪いな、手伝ってもらって」
手の目はのこぎりを使って氷を大雑把に切り出しながら尋ねる。
「なあ、ナーリ? ……ありがとうな……」
「なんだ? 礼を言うのはこっちのほうだろ」
「いや……姉御のことをこんな風に気にかけてくれたのが嬉しくてな」
「フレアを?」
「ああ。姉御はさ、口では『ナーリに尽くせるだけ幸せ』って言ってるけど……やっぱり、ナーリに気にかけては貰いたがっていたからさ」
「だよな……けど俺は……」
「分かってる。お前はまだ、姉御のことを好きかどうかわからないんだろ? けど……もし気持ちが決まってきたら、また教えてくれよ? 俺は、どっちでも応援するからさ」
手の目に言われる通り、まだ俺は彼女に異性としての好意を持てていない。
けど、このプレゼントを渡せば、少しは自分の気持ちがわかるような気がした。
「ああ……まあ、その前にハイクラー家の件を片づけないとな」
「……また、あいつらの国のことも背負うつもりか?」
「ああ。いっただろ? 俺は、この世界では誰もが幸せに生きられる世界を作りたいって思ってんだよ」
俺が元の世界でどんな生活を送ってきたかは手の目には教えている。
だからこそ、手の目は何も言わずにうなづいた。……恐らく彼も、この世界で色々と厳しい思いをしてきたのだろう。
「……この世界は俺にとってはファンタジーだからな。幻想の世界でくらい夢を見たっていいじゃねえか」
「……夢、か……」
そういうと手の目はフフ、と笑う。
「ならさ。もしもその夢が現実に負けそうになったら……」
「なったら、なんだよ?」
「俺の手でお前をぶん殴って、夢の世界に引き戻してやるよ。……だからお前は、思う存分理想を貫いてくれ」
「ああ……ありがとうな」
こういう話が出来るのは手の目だけだ。
やはり彼といると心強い。
そんな風に思っていると、氷細工が完成した。
あまり綺麗な形ではないが、それでも個人的にはよくできた気がする。
「よし、それじゃあ俺は姉御を呼んでくるからな!」
「ああ、ありがとう」
そういうと、手の目は氷室から出て雪女を呼びに行った。
それからしばらくして、雪女がやってきた。
あまりキキーモラとは親しくなる気がないのか、集団の中で少し離れたところにいたところを手の目が呼んでくれたようだ。
「なに、ぬらりひょん?」
「ああ。……その、フレア。いつもいつも、俺に色々してくれただろ? 特にフリーナを従える時にはダンスの相手もしてもらってさ」
「あれは別に……。私だって、あなたと踊りたかったから……別に気にしないでいいわよ」
少し顔を赤らめる雪女に、俺は氷細工を渡す。
スネコスリをほうふつとさせる猫の形に作ったものだ。
「だからさ。……その……お礼になるかわからないけど……用意したんだ、これ……」
「え? ……これ……私に?」
「ああ。ハイクラー家の領地で買った奴だから、品質はいいと思うよ」
俺がそういうと、フレアは目を見開いておどろくような表情を見せた。
そして俺の顔を見て、
「ありがと……すっごい嬉しい。……愛してるわ、ナーリ?」
「ああ……俺も……」
「え?」
『俺も愛している』と一瞬言おうとしてやめた。
はまだ言える状況じゃないし、軽い気持ちでそれを言ったところで、手の目あたりに看破されるのが落ちだ。
……本気で相手を好きになれるまで、その言葉は封印しようと思った。
「俺も喜んでうれしいよ。……早速食べてくれる?」
「もちろんよ……いただきます」
フレアは早速、その氷細工をかじり始めた。
猫の耳の部分が彼女の小さい口に入り、かりかりと砕ける音が聞こえる。
……そして彼女は顔を上げ、俺に笑顔を見せてくれた。
「すっごい美味しい。……ありがと、ぬらりひょん。こんなに嬉しい気持ちになるの……初めてだから……」
「……あ、ああ……」
普段はクスクスと含み笑いばかりする彼女が満面の笑顔を見せてくれた。
それを見て、俺の心臓が一瞬だがトクン、と高鳴るような気がした。
(……なんだろうな、この気持ちは……)
その気持ちは興奮するような、それでいてどこか幸せな気持ちでもあった。
そんな余韻にひたっていると、彼女は心配そうに尋ねてきた。
「ねえ、ぬらりひょん……氷……高かったんじゃないの?」
「……まあな。けど、いつもフレアがしてくれることに比べたら安すぎるくらいだよ」
「そう……。ところで、なんでそんなに顔をそむけるの?」
氷を全部食べつくした彼女は、そういいながら俺の顔をぐい、と覗きこむ。
そしていつものような含み笑いを浮かべて尋ねる。
「分かった。私の魅力に気づいて、どぎまぎしてるんでしょ?」
いつもの『ナーリは自分のことが好き』と思い込むための、彼女の独り言にも似た軽口だ。
だが、俺はそれを否定できない。顔が真っ赤になっているのもわかる。
「……そう……かも……」
「え……?」
いつものように否定されると思っていたのだろうが、フレアはおどろいた表情を見せた。
そして彼女もまた、顔を赤くして目をそむけてきた。
「それ、本当に……?」
「……わからないけど……本当に、一瞬だったから……」
そう俺が答えると、おずおずとフレアは俺に一歩近づいて尋ねてきた。
「あ、あのさ、ぬらりひょん……?」
「な、なんだよフレア……」
「あなた、今度ハイクラー家に出向いて、お話をするんでしょ?」
「ああ……」
「確かあそこって、大きなバザールがあるわよね? ……それにね、手の目も一度行ってみたいって言ってたの……蛇骨さんもね」
「そうだったのか……」
「だから、その……」
そこまで言うと、フレアは顔をうつむけた。
……そうか、彼女は『自分が誘ったら、嫌な顔をするんじゃないか』ということを気にしているのかもしれない。
そう考えた俺は、自分から誘うべく口を開いた。
「そうだな。……今度ハイクラー家に行くときには……4人で行こうか? ……バザールでなにかいいものが見つかるといいな」
「そ、そうね……ありがと、ぬらりひょん……」
そうつぶやく彼女の顔は耳まで赤くなっており、とてもいとおしく感じた。
だが、先ほどのような気持ちの高揚感はもう感じない。
……やはり、あの一瞬感じた思いは恋愛感情だったのか?
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