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あの家の子爵の貴族牢には、国の官吏が訪れていた。

「あなたの爵位は剥奪されることになりました。
家の取り潰しではないので、もし後継者がいる場合はその方に継承権が移りますが、どなたかいらっしゃいますか?
もちろん同罪の奥様にも継承権はありません。」

子爵家の実の子供は幼少期に亡くなり、子爵の血が入っている者は年老いた伯母しか残っていない。
伯母はとても性格が悪く、幼い頃の子爵を散々虐めていたため、継承なんて絶対に避けたい。

残るは養女として受け入れた者のうち、生きている者か。
確かミリアムは実家に帰ったから既に籍はないはず。
マリーナな何もせずに追放したから、まだ籍があるはずだ!

そうか、マリーナに引き継がせて、言うことを聞かせればよいのだな!
子爵はそう考えると、笑いを堪えるように咳払いをし、返事をした。

「爵位は養女のマリーナに継承します。
我々が至らぬばかりに追い出してしまったせめてもの罪滅ぼしに。」

これで反省しているように見えるだろう!

「分かりました。手続きを進めます。」

「マリーナに、今度は仲良く暮らそう、と伝えてください。」

「。。。伝言は承りました。では失礼いたします。」

子爵は牢から解放されたら、家に戻り、マリーナに言うことを聞かせて暮らすつもりである。
やはりマリーナの気持ちは露ほども考えていないのであった。

ーーーーー

官吏は子爵の継承者のことを王家に報告すると、護衛2人と共にマリーナの元に向かった。
カイン殿下とナイトハルト殿下の通信手段を利用して、事前にマリーナの元に向かうことを隣国に伝えておいた。

ーーーーー

事前連絡を受け取ったナイトハルトは、悩んでいた。

「マリーナは、子爵になったら帰ってしまうのだろうか。。。
彼女は大切な人だ。我が国で功績を上げてもらい、いずれ貴族籍を与えようと思っていたのだが。。」
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