1 / 4
1
しおりを挟む
ノアは霧のかかった森の中で迷っていた。足は痛く疲れて、酷く疲弊していた。まったく森の出口が見えず、ただただ白い霧だけが広がっている。そんななか、ひとつの明るい光が見えた。
「誰がいるんですか?」
「あの、迷ってどこからなら出れますか?」
霧から見えてきたのは、タートルネックの黒い服を着て、白いロングスカートを着た綺麗な女性だった。彼女は淡い光を放つランプを持ち、立っていた。
「今日はもう日が暮れましたし、家で泊まっていってくださいな」
女性はにっこりと笑って、森の中にある、トンネルを指さした。
「こんなところにトンネルなんかあったのか」
「すぐ家には着きますよ」
女性の後ろをついてトンネルを通っていくと、すっかりと霧が晴れて、空には綺麗な星空が見えた。
「こんなところがあったなんて…」
近くから川の音が聞こえてくると、大きな、レンガ造りの家が見えてきた。つたがからまり、窓が沢山あった。その前には川が流れ、小さな橋があった。
「もうみんな寝てますから、お静かにお願いしますね」
女性は口の前に人差し指を立て、ニコッと笑った。家の中に入ると、暖炉があり、ソファが囲むように並んでいた。
「そういえば、名前を聞いていませんでしたね。私はジゼルです。あなたは?」
「ノアです」
「そう、いい名前ね。好きなソファに座ってください。ココアでもどうですか?」
ノアは言われた通りソファに座った。ジゼルは暖炉に薪を入れて、その薪の隙間に新聞紙を詰めた。そしてそこに火をつけた。
「すごく大きな家ですけど、どんな仕事を」
「仕事はしてないですよ。人から譲り受けた家です。ここで子供達と暮らしています」
「お子さんが?」
ジゼルはノアの前にココアを差し出した。
「病気のある子供達を引き取って育てています」
ノアは飲んでいたココアのカップから口を離して、ジゼルを見た。
「病気?」
「獣病、知りませんか?イングランド都心では流行ってきている奇病ですけど」
ノアをみるみるうちに目を丸くして、カップを落としてしまった。
「獣病の者は処刑されるはずじゃ…」
ジゼルがパチンと指を鳴らすと、ほうきとちりとりがやってきて、カップの破片を片付けた。そして雑巾でココアを拭き取った。
ノアはそれを見て目を丸くする。
「私は子供たちを放って置けないんです」
「…あなた何をしているか分かっているのですか、大罪人ですよ」
「今は違いますよ。悪いことはしませんし。怖がらないでください」
ジゼルは優しく笑って、入れ直したココアを入れると、2階の方から誰かが降りてくる足音がしてきた。
「ジゼル…怖い夢見たァ…」
「ルイーズ、どうぞいらっしゃい」
降りてきたのはうさぎの耳を持った小さな少女だった。真っ黒な目をうるうるとさせていた。そしてぴょんと高く飛ぶとジゼルの膝に乗っかった。ジゼルは優しくルイーズの頭を撫でた。
「この子のような獣病の子供がここに住んでいます」
「ジゼル、このひと誰?」
「森に迷ったそうなので、今日泊めようかと思って連れてきました」
ルイーズは「ふーん」と言い、ジゼルに頭を撫でられ、すぐに眠ってしまった。
「もう眠いでしょう?ベッドへ案内しますよ」
ジゼルはルイーズを抱き抱えたまま、階段を登った。階段の壁には絵が飾られていて、2階には部屋が沢山あった。ジゼルは1番奥の部屋で足を止めて、部屋のドアを開けた。
「ここで寝てくださいね。いつも掃除しているから綺麗です」
部屋にはベッドと、机がひとつあった。机の上にはランプが置いてあった。
「テーブルの引き出しにマッチが入ってます。あかりが恋しくなったらそのランプをつけてくださいね」
「分かりました」
その夜ノアはその部屋で眠りについた。
「誰がいるんですか?」
「あの、迷ってどこからなら出れますか?」
霧から見えてきたのは、タートルネックの黒い服を着て、白いロングスカートを着た綺麗な女性だった。彼女は淡い光を放つランプを持ち、立っていた。
「今日はもう日が暮れましたし、家で泊まっていってくださいな」
女性はにっこりと笑って、森の中にある、トンネルを指さした。
「こんなところにトンネルなんかあったのか」
「すぐ家には着きますよ」
女性の後ろをついてトンネルを通っていくと、すっかりと霧が晴れて、空には綺麗な星空が見えた。
「こんなところがあったなんて…」
近くから川の音が聞こえてくると、大きな、レンガ造りの家が見えてきた。つたがからまり、窓が沢山あった。その前には川が流れ、小さな橋があった。
「もうみんな寝てますから、お静かにお願いしますね」
女性は口の前に人差し指を立て、ニコッと笑った。家の中に入ると、暖炉があり、ソファが囲むように並んでいた。
「そういえば、名前を聞いていませんでしたね。私はジゼルです。あなたは?」
「ノアです」
「そう、いい名前ね。好きなソファに座ってください。ココアでもどうですか?」
ノアは言われた通りソファに座った。ジゼルは暖炉に薪を入れて、その薪の隙間に新聞紙を詰めた。そしてそこに火をつけた。
「すごく大きな家ですけど、どんな仕事を」
「仕事はしてないですよ。人から譲り受けた家です。ここで子供達と暮らしています」
「お子さんが?」
ジゼルはノアの前にココアを差し出した。
「病気のある子供達を引き取って育てています」
ノアは飲んでいたココアのカップから口を離して、ジゼルを見た。
「病気?」
「獣病、知りませんか?イングランド都心では流行ってきている奇病ですけど」
ノアをみるみるうちに目を丸くして、カップを落としてしまった。
「獣病の者は処刑されるはずじゃ…」
ジゼルがパチンと指を鳴らすと、ほうきとちりとりがやってきて、カップの破片を片付けた。そして雑巾でココアを拭き取った。
ノアはそれを見て目を丸くする。
「私は子供たちを放って置けないんです」
「…あなた何をしているか分かっているのですか、大罪人ですよ」
「今は違いますよ。悪いことはしませんし。怖がらないでください」
ジゼルは優しく笑って、入れ直したココアを入れると、2階の方から誰かが降りてくる足音がしてきた。
「ジゼル…怖い夢見たァ…」
「ルイーズ、どうぞいらっしゃい」
降りてきたのはうさぎの耳を持った小さな少女だった。真っ黒な目をうるうるとさせていた。そしてぴょんと高く飛ぶとジゼルの膝に乗っかった。ジゼルは優しくルイーズの頭を撫でた。
「この子のような獣病の子供がここに住んでいます」
「ジゼル、このひと誰?」
「森に迷ったそうなので、今日泊めようかと思って連れてきました」
ルイーズは「ふーん」と言い、ジゼルに頭を撫でられ、すぐに眠ってしまった。
「もう眠いでしょう?ベッドへ案内しますよ」
ジゼルはルイーズを抱き抱えたまま、階段を登った。階段の壁には絵が飾られていて、2階には部屋が沢山あった。ジゼルは1番奥の部屋で足を止めて、部屋のドアを開けた。
「ここで寝てくださいね。いつも掃除しているから綺麗です」
部屋にはベッドと、机がひとつあった。机の上にはランプが置いてあった。
「テーブルの引き出しにマッチが入ってます。あかりが恋しくなったらそのランプをつけてくださいね」
「分かりました」
その夜ノアはその部屋で眠りについた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
チュートリアル場所でLv9999になっちゃいました。
ss
ファンタジー
これは、ひょんなことから異世界へと飛ばされた青年の物語である。
高校三年生の竹林 健(たけばやし たける)を含めた地球人100名がなんらかの力により異世界で過ごすことを要求される。
そんな中、安全地帯と呼ばれている最初のリスポーン地点の「チュートリアル場所」で主人公 健はあるスキルによりレベルがMAXまで到達した。
そして、チュートリアル場所で出会った一人の青年 相斗と一緒に異世界へと身を乗り出す。
弱体した異世界を救うために二人は立ち上がる。
※基本的には毎日7時投稿です。作者は気まぐれなのであくまで目安くらいに思ってください。設定はかなりガバガバしようですので、暖かい目で見てくれたら嬉しいです。
※コメントはあんまり見れないかもしれません。ランキングが上がっていたら、報告していただいたら嬉しいです。
Hotランキング 1位
ファンタジーランキング 1位
人気ランキング 2位
100000Pt達成!!
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる