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魔王の果実【最終話】
しおりを挟む「これで…あなたは私のもの…。」
篤志が見た顔は満足げに微笑みを浮かべた以前の梨華子の顔だった。
「お、お前…。」
だがその顔が見る間に肉が削げ、髪が抜け、目玉が落ち、ミイラから白骨へと変貌する。
「あ…り…が…ど…う…。」
その恐怖のあまり、篤志は捕まえていたコンクリートの端を手放してしまった。
「ぎゃあああああ!…。」
暗闇の中に響きわたる悲鳴。吸い込まれて行くように橋の下へ消えて行った。二人一緒に…。
そして2日後の朝-
「ふぁああ…。よく眠ったわい…。どれ、コーヒーでもいれようか…それと~ウフッ…昨日手に入れたライ麦パンを味わうとするかのぅ…。」
“カラン、カラン”
「おっはよーございま~す!」
「な、あの声は?」
匂いにつられて居間に上がり込んできたメヒスト。
「いや~まだ朝食前だったんですかぁ?奇遇だなぁ~私も…まだなんですよ…ウフフ。」
「な~にがウフフじゃ!気味の悪い笑いを浮かべおって!最初から朝飯が目当てだったくせに…。」
「あり?変だなぁ…なんでわかったんだろぅ…。アハハ…。」
「そんなもん見え見えじゃ!…。ふっ、まあよい。お前の分のコーヒーも…。って…おい!勝手にそのパンを食うなぁ!」
「いただきま~ハグッ“モグモグ”おいひいですよ~ベル様。ついでにテレビもポチッと…。」
「貴様ぁ!」
「あ!?ベル様、テレビ、テレビ。」
テレビのニュースが目に入ってきた。
“今朝、都内某所の河川敷で男性の溺死体が発見されました…男性の身元は遺留品から都内の無職、鈴木篤志さん25歳とおもわれ、警察の調べでは死後1日が経過していて上流での自殺と事故の両面で捜査している模様ですが…遺体は不思議なことに既に白骨化した女性の遺体と一緒に発見され、女性の死を苦に自殺したのではないかとの事、女性の死因は病死の模様で、身元は不明…次のニュース。”
「…。時がすべてでは無い…。人であるがゆえ、時に苛まれて生きるが運命ではない…。死ぬのが運命である以上人は時に苛まれず、もがき苦しみ時の流れに逆らい生きていかなければ…。」
「ですね…。モグモグ…。あ~おいしかった!」
「メヒスト!あぁ~?!全部食いやがって~!貴様ぁ!そこへなおれ!成敗してくれる~!」
“娘…これで良かったのか?…今度生まれ変わったら必ず幸せになるんじゃぞ…リリラウア…リリラウア…。”
終わり
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