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魔王の果実【第6話】
しおりを挟むその頃、梨華子を置き去りにして逃げた篤志は仲間が待つ店に戻っていた。
「ハー…ハー…っんぐ。」
真っ青な顔をして戻って来た篤志を見て不思議そうな仲間は。
「ん?どうした~篤志、そんなに血相変えて。幽霊でも見たか?」
「ひぃ!ば、馬鹿なこと言うんじゃねえ!」
マジな篤志のリアクションに呆気にとられる仲間。
「じょ、冗談だろ、何マジって怒ってんだ?まさか…金ヅルに逃げられた…?なんて…お前じゃ有り得ないけど…。」
憮然としてソファーに腰をおろす篤志。
「…。酒だ!酒!」
「お、おう…。みんな~大蔵省のご帰還だぜ~」
「ヒャッホー!!」
暫くの間、飲めど酔わない酒をひたすら煽る篤志。脳裏から梨華子の死を消せないでいたが、時間が経つにつれ落ち着きを取り戻した。仲間も篤志の顔色が落ち着いたの安心していた。
「うぃ~結構飲んだな~そろそろ次行っか~お~い、みんな~2次会いくぞ~!」
「ウース!!」
「篤志~勘定頼むな~うぃっ。」
「ああ、わかった、任せとけ。」
仲間を送り出し会計へ向かう篤志だったが悪酔いも覚める光景が。
「54,300円になります。」
「なっ…人の金だと思って…限度ってものの知らねぇヤツらだな。」
ポケットからさっき梨華子から受け取った金を支払う。
「1…2…3…。えっ“!?”な、なんだ?…。」
背中ごしに身も凍るような視線を感じる篤志。振り返る様子を見て不思議がる店員。
「ん?どうかしましたか?別に…後ろには誰もいませんけど?。」
「い、いや…後いくら?」
「あと2万と4千3百円です。」
改めて手元のお札を見て篤志はギョッと驚いた。篤志が数えていたお札にべっとりと血がついていた。
「じゃ…これ…。ひ、ひぃいいい!か、金に血、血が!ひぃい!」
「えっ、血?どこに?お客様?お客様!」
店員には普通の紙幣しか見えないのに突然言い出した篤志の言葉に動揺する店員。
「ぜ、全部やる!ひぃいいい!」
金を放り出して全力で店を出る篤志。
「お客様!困りますよ!って…あ~あ…行っちゃったよ。どこに血がついてるんだぁ?飲み過ぎで幻覚でも見たかのな?アル中っほど酔ってる風じゃなかったよな?…。」
首をかしげお札を拾う店員の後ろを女性の影がスーッと動き出す。
「ひぃいい!ひぃいい!俺は、俺は悪くない!あいつが、あいつがぁああ!!」
仲間の横を狂ったように駆けていく篤志。
「お、おい!篤志!篤志ー!なんだ?あの野郎…。どこに行く気だ?」
「女だ、女。ほっとけ、ほっとけ。その内連絡来るだろ~いくぞ~。」
仲間とはぐれ何処をどう来たのか分からないまま篤志が着いた所は。
「ハー…ハー…んぐ…もう…走れねぇ…。あれ?…“!”こ、ここは…?さっきの公園!?」
気持ちを落ち着かせようと水飲み場へ顔を洗いに向かう。
“ジャー…バシャバシャ!”
「んぐ…んぐ…ハー…。んぐ…。」
水を飲む篤志の後ろに人影が。
「おぬし…そんなに美味しいか?新鮮な血の味はさぞ旨かろう?…。」
“!!”
第7話へ続く
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