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魔王の果実Ⅱ朽ちてゆく者【第13話】
しおりを挟む降り立った埠頭の光景に唖然とする二人。
「痛ぇ…助けて…くれ…」
あの老人ホームで見た暴力団の組員らしき男たちが、血だらけの状態で倒れていた。数にすれば4、50人。まさに戦場のような光景だった。
「な、なんじゃ…これは…」
するとその中からあの時の若頭らしき男が足を引きずりながらベルルに助けを求めてくる。
「た、助けてくれ!あんた、あの女の知り合いだったろ!あの女狂って…グワッ!“ブシュー!”」
頭から血しぶきをあげてこと切れる男。
するとラナリュがすぐに水銀灯の上のマドリアに反応する。
「おばさん!上!」
「誰が狂ってるだと…?薄汚れたブタが…言葉はわきまえて使わないとなぁ…」
対峙するベルル達とマドリア。
「マドリア…。おぬしなんということを…」
「来たか…ベルル…。今使えないゴミを始末していた所だ。それとこないだの小僧…。ちゃんとピスコの石は持って来たろうな…ハアァ!“グレイズ!”」
紫色の光弾がベルルとラナリュを襲う。即座に2方向へ飛びかわす。
「ラナリュ!グレイズは誘導弾じゃ!追ってくるぞ!」
「はいはい、こんなのは防御すりゃ、簡単でしょ…”シルド!“」
”ズバーン!”
ベルルもスサノオで弾きかえす。
「タァア!!」
“ダーン!”
「随分な挨拶だね…マドリアのおばさん、俺はそこのベルおばさん見たいに、やさしくないよ~そぉれ!“インパルス!”」
”バリバリ!!”
電磁力の波動がマドリアを襲う。
「ハァ!」
ラナリュの攻撃を素早くかわし地上へ降りるマドリア。
「やはりな…。ただの小僧ではないと思っていたが、その魔力、その魔術の素早さは…あんた王族だね…」
「へぇ…俺のインパルスをいとも簡単に交わしちゃうなんて。でも…これはやりすぎじゃない?…。いい加減にしないと…殺るよ」
ラナリュの魔力が蒸気の様に身体から立ち上る。
「腹の立つ小僧だ…。じゃまずは貴様から葬ってやる!天から授かりし…魂の息吹!ハアァ!“ビュラーマ!”」
”バシューン!!“
ラナリュに向けられた突風の刃。
「そうこなくちゃ…楽しませてくれよ!狂気の魔女狩りだぁ!凍てつく蒼光!ウリァア!”ブリーゼス!”」
“パキーン!”
二人の強大な魔力のぶつかり合い。ベルルは震えで動けずにいた。
「な、なんという闘いじゃ…あのマドリアの最高度魔法自体を凍らせるとは…。あれがラナリュの本当の力…。今のわしでは本当に足手まとい…」
そんなベルルの一瞬の心の隙をつかれニヤリと笑うマドリア。
「では、これはどうかな…?焔集えしこの掌に…そして弾けろ!“バストラーダ!”」
ラナリュへと思いきや咄嗟にベルルに向けられる最大爆裂魔法。
「しまった!ベルおばさん!逃げて!」
第14話へ続く
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