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魔王の果実Ⅱ朽ちてゆく者【第12話】
しおりを挟む「何を言ってる!ラナリュよ、お前は確かに魔導師としては凄い才能かもしれん、だがあの女のことは、全く知らないではないか…。後先考えず禁術を使うような女とお前を闘わせる訳にはいかん!」
ベルルの叱責をさらりと流すラナリュ。
「ふーん…。禁術ね…おばさん古すぎるんだよ。禁術、禁術って、いつ禁術になったんだい?そんな何千年前のこと、今じゃ昔話になってるよ。ミハエル様から聞いたけど、マドリアが唱えた死人還り“デスパレス”をおばさんが地獄の業火“メギドラ”で相殺したって…。俺なら…。術者を先に倒すけどなぁ」
ラナリュの強引な言葉にベルルは。
「お前もミハエルと同じゃな…。術者を倒して禁術が暴走したらどうするんじゃ」
「しないかも知れないよね?おばさんはこの人間界のことを考えてたんだね…。そして出した答えが禁術相殺だった訳だ…」
あっさりした答えに魔界の者に何を言っても無駄だと感じるベルル。
「くっ…。魔界とは違うんじゃ…人間はわしらの様に魔術が使えるわけではない…。禁術がもし人間界で暴走したら、人間はあっと言う間に滅んでしまう…。儚い人間の命を計りにかけることなどはわしには…出来ん…」
「綺麗ごとかい?暴走以前の問題だよ、おばさん!人間界が滅んでしまう前にマドリアが人間を危険にさらしてる事をわすれないでよ。もう実際に何人犠牲者が出てることか…」
「すまんなラナリュ…。だがお前一人をマドリアの元へはやる訳にはいかん」
すっかり呆れ顔のラナリュ。
「強情だなぁ…。」
「…悪いか?」
だが次の瞬間ラナリュの顔つきが変わる。
「おばさん…。俺の足手まといにならないでよね…あのマドリアに情けは要らない。おばさんが危なくなったら…ま、そん時はそん時だ…」
そして3日後の夜が来た―
「メヒストはまだ目が覚めん…。しかしわしが行かんと…」
“ヒュン”
ラナリュが店にやって来た。
「おばさん、準備はいいかい?」
「ラナリュ。行く前に2つだけ質問をさせてくれ。嫌なら答えなくてもいい」
膨れっ面のラナリュ。
「最初に言ったよね?俺、質問されるの嫌いなの…。でもいいよ、おばさんには短かかったけど世話になったし」
「じゃまず、お主は何故その歳で魔導師の地位になれたのじゃ?」
「うーん…そうだなぁ…。血統かな?言ってなかった?俺の叔父さん魔王だから…」
「な、魔王リベリス様の甥!?王家直属の方がなんで人間界などに…」
「飽きたんだよね…魔界ってなんかつまんなくて…。そしたらミハエルが面白そうなおばさんの話をしてたから。ちょっと脅して…。だからここ人間界では…ミハエルさま。で、後ひとつって何?」
「あの…次元再生魔法の事じゃが…どうやってあれを解いたんじゃ…?」
「ああ、空間移動術ね…発想の転換かな?おばさんにも出来るよ絶対。逆転の発想でね」
「逆転の…?」
「じゃ質問の時間は終わり…。月が昇る…行くよ、おばさん!」
「わかった…行こう。“メヒスト…。行ってくるぞ”」
“ヒュン”
メヒストを後ろ目に二人でマドリアの指示した場所へ。
しかしそこへ降りた二人が見た光景は。
第13話へ続く
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