上 下
12 / 17

魔王の果実Ⅱ朽ちてゆく者【第12話】

しおりを挟む

 「何を言ってる!ラナリュよ、お前は確かに魔導師としては凄い才能かもしれん、だがあの女のことは、全く知らないではないか…。後先考えず禁術を使うような女とお前を闘わせる訳にはいかん!」

 ベルルの叱責をさらりと流すラナリュ。

 「ふーん…。禁術ね…おばさん古すぎるんだよ。禁術、禁術って、いつ禁術になったんだい?そんな何千年前のこと、今じゃ昔話になってるよ。ミハエル様から聞いたけど、マドリアが唱えた死人還り“デスパレス”をおばさんが地獄の業火“メギドラ”で相殺したって…。俺なら…。術者を先に倒すけどなぁ」

 ラナリュの強引な言葉にベルルは。

 「お前もミハエルと同じゃな…。術者を倒して禁術が暴走したらどうするんじゃ」

 「しないかも知れないよね?おばさんはこの人間界のことを考えてたんだね…。そして出した答えが禁術相殺だった訳だ…」

 あっさりした答えに魔界の者に何を言っても無駄だと感じるベルル。

 「くっ…。魔界とは違うんじゃ…人間はわしらの様に魔術が使えるわけではない…。禁術がもし人間界で暴走したら、人間はあっと言う間に滅んでしまう…。儚い人間の命を計りにかけることなどはわしには…出来ん…」

 「綺麗ごとかい?暴走以前の問題だよ、おばさん!人間界が滅んでしまう前にマドリアが人間を危険にさらしてる事をわすれないでよ。もう実際に何人犠牲者が出てることか…」 

 「すまんなラナリュ…。だがお前一人をマドリアの元へはやる訳にはいかん」

 すっかり呆れ顔のラナリュ。

 「強情だなぁ…。」

 「…悪いか?」

 だが次の瞬間ラナリュの顔つきが変わる。

 「おばさん…。俺の足手まといにならないでよね…あのマドリアに情けは要らない。おばさんが危なくなったら…ま、そん時はそん時だ…」


そして3日後の夜が来た―

 「メヒストはまだ目が覚めん…。しかしわしが行かんと…」

 “ヒュン”

 ラナリュが店にやって来た。

 「おばさん、準備はいいかい?」

 「ラナリュ。行く前に2つだけ質問をさせてくれ。嫌なら答えなくてもいい」

 膨れっ面のラナリュ。

 「最初に言ったよね?俺、質問されるの嫌いなの…。でもいいよ、おばさんには短かかったけど世話になったし」

 「じゃまず、お主は何故その歳で魔導師の地位になれたのじゃ?」

 「うーん…そうだなぁ…。血統かな?言ってなかった?俺の叔父さん魔王だから…」

「な、魔王リベリス様の甥!?王家直属の方がなんで人間界などに…」

 「飽きたんだよね…魔界ってなんかつまんなくて…。そしたらミハエルが面白そうなおばさんの話をしてたから。ちょっと脅して…。だからここ人間界では…ミハエルさま。で、後ひとつって何?」

 「あの…次元再生魔法の事じゃが…どうやってあれを解いたんじゃ…?」

 「ああ、空間移動術ね…発想の転換かな?おばさんにも出来るよ絶対。逆転の発想でね」

 「逆転の…?」

 「じゃ質問の時間は終わり…。月が昇る…行くよ、おばさん!」

 「わかった…行こう。“メヒスト…。行ってくるぞ”」

“ヒュン”

 メヒストを後ろ目に二人でマドリアの指示した場所へ。

 しかしそこへ降りた二人が見た光景は。

第13話へ続く


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

死界、白黒の心霊写真にて

天倉永久
ホラー
暑い夏の日。一条夏美は気味の悪い商店街にいた。フラフラと立ち寄った古本屋で奇妙な本に挟まれた白黒の心霊写真を見つける…… 夏美は心霊写真に写る黒髪の少女に恋心を抱いたのかもしれない……

トランプデスゲーム

ホシヨノ クジラ
ホラー
暗闇の中、舞台は幕を開けた 恐怖のデスゲームが始まった 死にたい少女エルラ 元気な少女フジノ 強気な少女ツユキ しっかり者の少女ラン 4人は戦う、それぞれの目標を胸に 約束を果たすために デスゲームから明らかになる事実とは!?

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

茨城の首切場(くびきりば)

転生新語
ホラー
 へー、ご当地の怪談を取材してるの? なら、この家の近くで、そういう話があったよ。  ファミレスとかの飲食店が、必ず潰れる場所があってね。そこは首切場(くびきりば)があったんだ……  カクヨム、小説家になろうに投稿しています。  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330662331165883  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5202ij/

水難ノ相

砂詠 飛来
ホラー
「あんた、水難の相が出てる――3日後に死ぬよ」  予備校講師の赤井次晴は、水難の相が出ていると告げられる。  なんとか死を免れようと、生徒であり歳下の彼女である亜桜と見えないものに抗うが―― 専門学生時代に執筆したお話です。 誤字脱字のみをなおし、ほかはすべて当時のままの文章です。 いろいろとめちゃくちゃです。

黒薔薇

古郷智恵
ホラー
 引っ込み思案で大人しい少女は、その性格と家柄によって、学校で一人寂しく過ごしていた。そんな彼女の唯一の憩いの場は、家にある花園だった。  そして、不思議なことに、彼女には赤薔薇や白百合などの【お花の妖精】が見えていた。彼女は妖精たちと過ごし、心安らかに過ごしていた。  そんなある日、彼女の花園に、人知れず、不気味で不吉な【黒薔薇】が咲いていた。射殺すような瞳を持つ、恐ろしい黒薔薇の精は、彼女へ不気味な影響を与え始める…… ===== ※主人公の一人称形式です。 ※多少残虐な描写があります。 ※章を細かく分けました。煩わしかったら縮めます。

霊道開き

segakiyui
ホラー
私の部屋には「流れ」が通っている………日常の狭間に閃く異常の物語。

地獄の上司

マーベル4
ホラー
美希25歳は新しい就職先が決まりなんとなくホッとしていたが 一つ気になることがあった 短期間でやめてしまう人が多いということだった 美希が思っていたことはそうかるいことではなかった 「まさか上司しなわけないか」とつぶきやく 美希は前の職場で上司に悪口やなんとなく合わなかった のでやめたのだ そのせいか上司との関係にトラウマができてしまった その原因がわかるにつれ美希は残酷な被害に襲われる 一体なにが原因なのか... 次は私の番なのかもしれない 怖いのはお化けてはなく人間 人間関係の怖さを描いた短編ホラー小説

処理中です...