8 / 17
魔王の果実Ⅱ朽ちてゆく者【第8話】
しおりを挟む「キッシャー!!」
瓦礫の下から黒い物体が飛び出してきた。それを見て腰を抜かすメヒスト。
「ひゃああ!?何んだぁ!」
「ウキキ、しまった!見つかった!」
黒い物体を見たベルルは。
「おぬしは使い魔か…その口にくわえてる…それは!?たしか…ピスコリング!メヒスト…わかったわい…あやつマドリアが何故ここを襲撃したか…。」
「ウキキ…バレちゃ仕方ない…マドリア様の為にお前ら“死ね…。”」
おののくメヒストに襲いかかる使い魔。
「キッシャー!!」
「ギャー!!やめてー!来ないでぇー!」
だが急に空中で使い魔の動きが止まる。
「ウガッ、ガッ…な、身体が動かない…。」
使い魔の行動にも動じず詠唱を始めるベルル。
「丁度よい…スサノオの力を試させて貰うぞ。リリラウア…リリラウア…グロリアス…グラカレス…剛なる雷よ、主の導きと従い天の裁きを!ハァアア!“ボルティス!!”」
雷鳴を轟かせ雷が使い魔を貫く。
“ピシャッ!ズバーン!”
「ウギャァアア!!」
一撃で消し炭となる使い魔。
突然のことに呆気にとられてるミハエル。
「なんと…。流石だな…ベルル。」
「このスサノオのおかげじゃ…使い魔の動きを簡単に止められたわい…。だが…あの女狐の考えそうなことじゃ…。使い魔くらいの手下はいて当たり前とは思っておったが…。人間に正体がバレたうえの策であろう…。やれやれ…。あのピスコリングが目的だったとはな…。」
メヒストがピスコリングをベルルに手渡す。
「ベル様、このリングがデロッサの壺に繋がる鍵なんですか?」
「なんじゃメヒスト、今日はいつになく冴えとるのぅ…。そうじゃ…。ピスコリングはデロッサの壺のありかを示す鍵…。世界に6つ存在し、六芒星の星の先に位置し、その六芒星の中心にデロッサが眠る…。遥か2000年前の昔に葬られた召喚魔法をどこで…あの馬鹿女は…そんなことまで知っていたのか…。」
ミハエルもベルルの話に驚きを隠せずにいた。
「2000年前じゃと?我らが知らないのも無理はない。魔神などいくら魔界の者でも太刀打ちなど出来はせん。神を相手にだと?あり得ん。」
ベルルの目つきが変わる。
「あり得なくても事実は事実じゃメヒスト、帰って特訓じゃ…。お前には赤の魔法陣を覚えて貰うぞ…。」
「赤の魔法陣?」
「そうじゃ…。今までお前に書かせていたのは“白の魔法陣”…。赤の魔法陣とは魔力の増幅と攻撃力の倍加をする魔法陣じゃ。成形する為には今までの倍の時間がかかる…。」
「しっかたないなぁ~私がベル様の頼みを断る訳ないじゃないですかぁ~。」
メヒストの思惑などお見通しのベルルだが。
「ぬかせ…。報酬はタダ飯1週間というところか。」
「そんなぁ…。ちょっと飯代浮かせる為な訳じゃ…。」
「そうなのか?」
「やっぱ1ヶ月でしょ!最近あまりいいもの食べてなくて…。」
「い!?たわけ!最近ずっとわしのところでタダ飯食いおって!いいもの食ってないだと?ふざけるなぁ!」
「いいのかなぁ~魔神が復活しても…。」
ベルルの思惑よりメヒストの方が一枚上手だった。
「な、くっ…。わかったわい、1ヶ月じゃな…。だがメヒスト…。赤の魔法陣は一筋縄ではいかんぞ、お前自らパワーアップせんといかん…。頼んだぞ。」
「プレッシャーだけどアイアイサー!」
暫くして避難していた久美と合流した。
「おばさまぁ!大丈夫ですか?」
「久美ちゃん、わしは大丈夫だ…。ただホームがこうなってしまったからな…。さてこれからどうするか…。うーん…そうじゃ!」
おもむろにバックの中からナイフを出すベルル。
「このリングの宝石をこじ開けてと…。」
ピスコリングから宝石を取り出しリングを久美へ手渡す。
「久美ちゃん、この装飾リングを売りに出すのじゃ。まぁこの老人ホーム1軒くらいは建てられる…。こっちの宝石はわしが使うんでな…。」
その言葉に目を丸くして聞くメヒスト。
「スゴッ!ベル様、今の本当ですか?リングが超高価だって。」
「馬鹿もんが、だからあの女がヤクザどもに声をかけたんじゃ…。高価の宝をやると言ってな…。」
困惑する久美。
「こんな高価な物受け取れません、おばさまの大事なものなんでしょ?」
「すまんのぅ…。久美ちゃん…ここを襲撃した輩の中に、かつてのわしの教え子がいてな…。その女のせいなんじゃ…。ここが灰になってしまったのは…。だから受け取ってくれ…。わしの友達たちの為に使っておくれな。」
ベルルの優しさに涙ぐむ久美。
「おばさまぁ~“ぐすん”ありがとう。」
「さて…行くか…。メヒスト。またなミハエル。」
「ほーい!」
「うむ…。」
ミハエルはベルルの優しさに気づいていた。ピスコリングを売れば魔界に納金でき、自分の刑期を短く出来るのに、あえて老人ホームの為に、自分の友達だと言う老人たちの為に、それをしなかった事を。
第9話へ続く
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
花の檻
蒼琉璃
ホラー
東京で連続して起きる、通称『連続種死殺人事件』は人々を恐怖のどん底に落としていた。
それが明るみになったのは、桜井鳴海の死が白昼堂々渋谷のスクランブル交差点で公開処刑されたからだ。
唯一の身内を、心身とも殺された高階葵(たかしなあおい)による、異能復讐物語。
刑事鬼頭と犯罪心理学者佐伯との攻防の末にある、葵の未来とは………。
Illustrator がんそん様 Suico様
※ホラーミステリー大賞作品。
※グロテスク・スプラッター要素あり。
※シリアス。
※ホラーミステリー。
※犯罪描写などがありますが、それらは悪として書いています。
キューピッド様
流風
ホラー
ラジオから流れてくる投稿話。
その中の一つに亡くなった飼い犬に会いたいと願った女子高生の話があった。
俺も先日、飼い猫のコタロウと死別したばかり。気持ちがわかると思いながら聞いていたが……。
死別したペットとの向き合い方、会いたい気持ちが強すぎて起こった恐怖体験。
会いたい気持ちが強すぎた結果……
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……
【お願い】この『村』を探して下さい
案内人
ホラー
全ては、とあるネット掲示板の書き込みから始まりました。『この村を探して下さい』。『村』の真相を求めたどり着く先は……?
◇
貴方は今、欲しいものがありますか?
地位、財産、理想の容姿、人望から、愛まで。縁日では何でも手に入ります。
今回は『縁日』の素晴らしさを広めるため、お客様の体験談や、『村』に関連する資料を集めました。心ゆくまでお楽しみ下さい。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
裏アカウント
夢咲はるか
ホラー
――貴方は、その人達を信じますか?――。
近藤広子、蓮本美里、滝島奈々、飯田由香。彼女達は、いつも仲良しな4人組。
ですが――。由香は知らない、残りの3人だけによる世界が存在していたのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる