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魔王の果実Ⅱ朽ちてゆく者【第8話】

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 「キッシャー!!」

 瓦礫の下から黒い物体が飛び出してきた。それを見て腰を抜かすメヒスト。

 「ひゃああ!?何んだぁ!」

 「ウキキ、しまった!見つかった!」

 黒い物体を見たベルルは。

 「おぬしは使い魔か…その口にくわえてる…それは!?たしか…ピスコリング!メヒスト…わかったわい…あやつマドリアが何故ここを襲撃したか…。」

 「ウキキ…バレちゃ仕方ない…マドリア様の為にお前ら“死ね…。”」

 おののくメヒストに襲いかかる使い魔。

 「キッシャー!!」

 「ギャー!!やめてー!来ないでぇー!」

 だが急に空中で使い魔の動きが止まる。

 「ウガッ、ガッ…な、身体が動かない…。」

 使い魔の行動にも動じず詠唱を始めるベルル。

 「丁度よい…スサノオの力を試させて貰うぞ。リリラウア…リリラウア…グロリアス…グラカレス…剛なる雷よ、主の導きと従い天の裁きを!ハァアア!“ボルティス!!”」

 雷鳴を轟かせ雷が使い魔を貫く。

“ピシャッ!ズバーン!”

 「ウギャァアア!!」

 一撃で消し炭となる使い魔。

 突然のことに呆気にとられてるミハエル。

 「なんと…。流石だな…ベルル。」

 「このスサノオのおかげじゃ…使い魔の動きを簡単に止められたわい…。だが…あの女狐の考えそうなことじゃ…。使い魔くらいの手下はいて当たり前とは思っておったが…。人間に正体がバレたうえの策であろう…。やれやれ…。あのピスコリングが目的だったとはな…。」

 メヒストがピスコリングをベルルに手渡す。

 「ベル様、このリングがデロッサの壺に繋がる鍵なんですか?」

 「なんじゃメヒスト、今日はいつになく冴えとるのぅ…。そうじゃ…。ピスコリングはデロッサの壺のありかを示す鍵…。世界に6つ存在し、六芒星の星の先に位置し、その六芒星の中心にデロッサが眠る…。遥か2000年前の昔に葬られた召喚魔法をどこで…あの馬鹿女は…そんなことまで知っていたのか…。」

 ミハエルもベルルの話に驚きを隠せずにいた。

 「2000年前じゃと?我らが知らないのも無理はない。魔神などいくら魔界の者でも太刀打ちなど出来はせん。神を相手にだと?あり得ん。」

 ベルルの目つきが変わる。

 「あり得なくても事実は事実じゃメヒスト、帰って特訓じゃ…。お前には赤の魔法陣を覚えて貰うぞ…。」

 「赤の魔法陣?」

 「そうじゃ…。今までお前に書かせていたのは“白の魔法陣”…。赤の魔法陣とは魔力の増幅と攻撃力の倍加をする魔法陣じゃ。成形する為には今までの倍の時間がかかる…。」

 「しっかたないなぁ~私がベル様の頼みを断る訳ないじゃないですかぁ~。」

 メヒストの思惑などお見通しのベルルだが。

 「ぬかせ…。報酬はタダ飯1週間というところか。」

 「そんなぁ…。ちょっと飯代浮かせる為な訳じゃ…。」

 「そうなのか?」

 「やっぱ1ヶ月でしょ!最近あまりいいもの食べてなくて…。」

 「い!?たわけ!最近ずっとわしのところでタダ飯食いおって!いいもの食ってないだと?ふざけるなぁ!」

 「いいのかなぁ~魔神が復活しても…。」

 ベルルの思惑よりメヒストの方が一枚上手だった。

 「な、くっ…。わかったわい、1ヶ月じゃな…。だがメヒスト…。赤の魔法陣は一筋縄ではいかんぞ、お前自らパワーアップせんといかん…。頼んだぞ。」

 「プレッシャーだけどアイアイサー!」

 暫くして避難していた久美と合流した。

 「おばさまぁ!大丈夫ですか?」

 「久美ちゃん、わしは大丈夫だ…。ただホームがこうなってしまったからな…。さてこれからどうするか…。うーん…そうじゃ!」

 おもむろにバックの中からナイフを出すベルル。

 「このリングの宝石をこじ開けてと…。」

 ピスコリングから宝石を取り出しリングを久美へ手渡す。

 「久美ちゃん、この装飾リングを売りに出すのじゃ。まぁこの老人ホーム1軒くらいは建てられる…。こっちの宝石はわしが使うんでな…。」

 その言葉に目を丸くして聞くメヒスト。

 「スゴッ!ベル様、今の本当ですか?リングが超高価だって。」

 「馬鹿もんが、だからあの女がヤクザどもに声をかけたんじゃ…。高価の宝をやると言ってな…。」

 困惑する久美。

 「こんな高価な物受け取れません、おばさまの大事なものなんでしょ?」

 「すまんのぅ…。久美ちゃん…ここを襲撃した輩の中に、かつてのわしの教え子がいてな…。その女のせいなんじゃ…。ここが灰になってしまったのは…。だから受け取ってくれ…。わしの友達たちの為に使っておくれな。」

 ベルルの優しさに涙ぐむ久美。

 「おばさまぁ~“ぐすん”ありがとう。」

 「さて…行くか…。メヒスト。またなミハエル。」

 「ほーい!」

 「うむ…。」

 ミハエルはベルルの優しさに気づいていた。ピスコリングを売れば魔界に納金でき、自分の刑期を短く出来るのに、あえて老人ホームの為に、自分の友達だと言う老人たちの為に、それをしなかった事を。

第9話へ続く

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