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第143話 ベネツィア祭
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試着場からボールルーム会場までは目と鼻の先で,
歩いて簡単にいくことができた。
会場あたりは通行止めになっていて、
警察なんかの誘導なども出ていたので、
かなり大きな祭りだと推測できた。
道行く人々は皆仮装をしていて、
顔の一部が隠れていたので、
もし知ってる人が紛れ込んでいても、
直ぐには分からないだろうなと思った。
ホテルのエレベーターで会った人達も、
今夜会場で会っても分からないだろう。
彼等から見ても僕たちの事はわからないと思う。
僕のつけた仮面は目の部分を覆うだけの物だったけど、
女装をしている分、更に誰にも僕だとは分からないはずだ。
ただ、佐々木先輩にだけは、きっと僕の匂いを嗅ぎ分けられる。
同じように、僕だけが先輩の匂いを嗅ぎ分けることが出来るように。
行き交う人々を見ながら僕はそんな風に考えていた。
「このお祭りはベネツィアという事は、
イタリアのお祭りなんですか?」
僕が先輩に尋ねた。
「ああ、ベネツィアでは普通は1月か2月頃に有るらしな」
「へ~ 最近は日本も外国の祭りが入ってきて結構派手になって来てますよね。
ハロウィーンにしろ、イースターにしろ
今では昔からあった様な感覚で皆楽しんでますよね」
「うーん、でも海外から入ってくる祭りは
まだ小さな町などでは定着してないんだよな。
でも、まだ日本に入って来て無い大きな祭りなどもあるから、
いつかは一緒に海外も回ろうな。
でも先ずは日本制覇だな」
「ですよね、僕、縁日屋台大好きで~
花火も大好きです。
各地で全国花火大会とかありますよね?
僕、一度行ってみたいです」
「ハハハ、屋台は日本祭りの醍醐味だな。
花火大会もいつか行こうな」
そう会話をしながら僕たちは会場に到着した。
今日の祭りには、僕の大好きな屋台こそ無かったけど、
会場にはいると、煌びやかなダンスホールには、
幾つもの豪華なシャンデリアがあって、
金色に塗られた支柱がギリシャの彫刻を思い浮かばせた。
僕は暫く入り口で佇んで、
今まで見た事もないような光景に見入っていた。
中ではノンアルコールのシャンパンやワインなどが振る舞われ、
一口サイズのオードブルやスイートなども用意されていた。
僕はダンスよりも食い気と言ったところで、
デザートのテーブルに直行した。
先輩は僕の食い気に呆れながらも、
「気をつけないと、コルセットのフックがはち切れるぞ」
と笑っていた。
そうなのだ、実はちょっと苦しくて、
本当は全てを味見したいのだが、とても出来そうにない。
先輩は会場を少し回って人々の会話に参加してくると、
食べ物にたかっている僕を置いて、
ホールの人だかりの方へと歩いて行った。
一口サイズのパイを口一杯に頬張った時、隣から声を掛けられた。
「貴方、こんな沢山の殿方がいらっしゃる前で
良くそんな大口開けて食べれるわね。
恥ずかしくないの?」
「エヘヘ、全然気にしません。
私、今日一緒に来たパートナー意外、
興味ありませんし、私のパートナーは
既に私のこの性格は把握していますので……」
そう言って、
“ん?”
堂々と先輩を恋人宣言出来るってこういう感覚なのか?
“癖になりそ~”
と思った。
「あら、じゃあ先程一緒にいた方が
貴方のパートナーなのかしら?」
「そうです。彼が私のパートナーです」
そう言った後、
“もっと聞いて~”
僕は心の中でそう叫んだ。
「彼、気品があるわね、
貴方、良い人を見つけたわね。
お幸せに。
でも此処ではお気を付けて……
素性が分からない分、
皆開放的になってますので。
気を抜くと、持ってる行かれますわよ」
そう言い残して、彼女は人の波の中へと消えて行った。
僕が彼女が消えた方を見ながらボーッとしていると、
「キャ、御免なさい!」
と、後ろからぶつかって来た人がいた。
ふりむくと、そこには数人の女の子たちのグループが
やはり僕と同じようにスイーツを手に雑談していた。
「大丈夫ですよ。
このスイーツ美味しいですね」
そう言って僕は声を掛けた。
「今日はお一人で?」
「いえ、パートナーがいるんですけど、
私がスイーツに夢中になってる間、
他の人と交流をしに……」
「じゃあ、今日は恋人と来たんだ!」
「はい! 恋人と来ました!」
僕はちょっとだけ、先輩の事を人前で恋人と呼べることに快感を覚え始めた。
「良いわね~
私たちは女の子だけで参加してるの。
あわよくば、誰か良い人見つからないかなって思ってるんだよね」
「え? でも皆仮面つけてるからどんな人かわからいですよね?」
「そこはいいのよ。
一夜のアバンチュールね。
気に入れば続くかもだし、そうじゃ無かったらそれでお終いってね。
最高のシチュエーションじゃない!」
ひ~ 今の人たちは何て大胆な!
「ねえ、貴方の恋人はどこ?
間違って声かけないようにしなきゃ」
「ハハハ、彼は私に夢中だから
声を掛けられても他の人になびくことは無いですよ?」
「あら、ご馳走様!
良いわね、仲が良くって。
でも、そんな素敵な彼氏さん、見てみたい気もするわね。
ねえ、どの人?」
「えーっと、今どこにいるのかな~」
そう言って僕は周りを見回した。
「あ、ほら、あの会話をしているグループの中央にいる……」
「あー あの一際目立って背が高い人?」
「そうです! あの帽子に大きな羽をつけた……」
「西端な顔立ちの人ね。
仮面つけてても格好良さが滲み出てるわね。
気をつけないと、直ぐに目を付けられちゃうわよ」
「やっぱり今日ってシングルの人多いんですか?」
「勿論大半がそうよ。
こんな良い機会ないからね。
こう言ったパーティーって割とα多いからね」
「え? そうなんですか?」
「そりゃそうよ。
こんなハイソサエティの遊びを心得てるのってαでないとね」
「それじゃ貴方たちもα?」
「私と彼女はαだけど彼女はオメガよ」
「え? 彼女Ω?」
僕は女性のΩに初めて会った、
と言うか、僕とお母さんと櫛田君以外のΩに初めて出会った。
良く見て見ると、
彼女は首にチョーカーをしていた。
「何? 貴方、Ωに対して差別意識でもあるの?」
彼女の表情が急に険しくなった。
「いえ、そうではなくて……
あまりΩに会ったこと無いのでビックリして……」
その時先輩が、
「もう友達できたのか?」
と後ろからやって来た。
「あ、先輩」
僕がそう言った途端、
「あら、貴方たち先輩、後輩の間なの?
学校が一緒とか?」
と彼女が鋭く訪ねて来た。
僕はどう答えていいか分からず、
先輩の顔を伺った。
「話せるところだけ正直に話したら?
折角の仮面なんだし」
その先輩の一声に、
「何?あなた達、秘密の関係なの?」
と彼女が鋭く突っ込んできた。
僕はコクンと頷くと、
「彼女がΩなので、僕も正直に話しますが、
内密でお願いします」
と話し始めた。
「何々? あなた自分の事、
今僕って言わなかった?」
「はい、僕、実は男で、
そしてそこにいる彼女と同じようにΩです」
「え~!!!!!」
彼女たちは3人共びっくりした様にして
お互いを見回した後僕を見た。
そして先輩をマジマジと眺めた後、
「あなたはαよね?
そう言うオーラをかんじるわ。
でも、私達も男のΩは初めて!
あなた、良く化けたわね~」
と興奮した様に言った。
「僕も先ほど言いましたが、
僕がびっくりしたのは、女性のΩに初めて会ったからです。
本当にΩって少ないんですね」
「まあ、Ωって自分から言う人ってそんなにいないからね~
貴方は自分の事公表してるの?」
「いえ、とても近い友達数人のみです……」
「でしょう?
多分、知らないだけでもっといると思うよ。
でも、あなた、女性のΩに初めて会ったって……
ご両親は? Ωじゃ無いの?」
「あ…そこは両親のプライバシーもあるので、
ノーコメントでお願いします……」
「あなたも訳ありなのね~
Ωって訳あり多いよね。
彼女もそうよね。
いえないけど……
でもあなた達、αとΩのカップルって事は……」
「まだ番じゃありませんよ。
でもいつかは……な?」
先輩がそう言うと、
僕は先輩を見つめて、
「はい!」
と元気よく返事をした。
歩いて簡単にいくことができた。
会場あたりは通行止めになっていて、
警察なんかの誘導なども出ていたので、
かなり大きな祭りだと推測できた。
道行く人々は皆仮装をしていて、
顔の一部が隠れていたので、
もし知ってる人が紛れ込んでいても、
直ぐには分からないだろうなと思った。
ホテルのエレベーターで会った人達も、
今夜会場で会っても分からないだろう。
彼等から見ても僕たちの事はわからないと思う。
僕のつけた仮面は目の部分を覆うだけの物だったけど、
女装をしている分、更に誰にも僕だとは分からないはずだ。
ただ、佐々木先輩にだけは、きっと僕の匂いを嗅ぎ分けられる。
同じように、僕だけが先輩の匂いを嗅ぎ分けることが出来るように。
行き交う人々を見ながら僕はそんな風に考えていた。
「このお祭りはベネツィアという事は、
イタリアのお祭りなんですか?」
僕が先輩に尋ねた。
「ああ、ベネツィアでは普通は1月か2月頃に有るらしな」
「へ~ 最近は日本も外国の祭りが入ってきて結構派手になって来てますよね。
ハロウィーンにしろ、イースターにしろ
今では昔からあった様な感覚で皆楽しんでますよね」
「うーん、でも海外から入ってくる祭りは
まだ小さな町などでは定着してないんだよな。
でも、まだ日本に入って来て無い大きな祭りなどもあるから、
いつかは一緒に海外も回ろうな。
でも先ずは日本制覇だな」
「ですよね、僕、縁日屋台大好きで~
花火も大好きです。
各地で全国花火大会とかありますよね?
僕、一度行ってみたいです」
「ハハハ、屋台は日本祭りの醍醐味だな。
花火大会もいつか行こうな」
そう会話をしながら僕たちは会場に到着した。
今日の祭りには、僕の大好きな屋台こそ無かったけど、
会場にはいると、煌びやかなダンスホールには、
幾つもの豪華なシャンデリアがあって、
金色に塗られた支柱がギリシャの彫刻を思い浮かばせた。
僕は暫く入り口で佇んで、
今まで見た事もないような光景に見入っていた。
中ではノンアルコールのシャンパンやワインなどが振る舞われ、
一口サイズのオードブルやスイートなども用意されていた。
僕はダンスよりも食い気と言ったところで、
デザートのテーブルに直行した。
先輩は僕の食い気に呆れながらも、
「気をつけないと、コルセットのフックがはち切れるぞ」
と笑っていた。
そうなのだ、実はちょっと苦しくて、
本当は全てを味見したいのだが、とても出来そうにない。
先輩は会場を少し回って人々の会話に参加してくると、
食べ物にたかっている僕を置いて、
ホールの人だかりの方へと歩いて行った。
一口サイズのパイを口一杯に頬張った時、隣から声を掛けられた。
「貴方、こんな沢山の殿方がいらっしゃる前で
良くそんな大口開けて食べれるわね。
恥ずかしくないの?」
「エヘヘ、全然気にしません。
私、今日一緒に来たパートナー意外、
興味ありませんし、私のパートナーは
既に私のこの性格は把握していますので……」
そう言って、
“ん?”
堂々と先輩を恋人宣言出来るってこういう感覚なのか?
“癖になりそ~”
と思った。
「あら、じゃあ先程一緒にいた方が
貴方のパートナーなのかしら?」
「そうです。彼が私のパートナーです」
そう言った後、
“もっと聞いて~”
僕は心の中でそう叫んだ。
「彼、気品があるわね、
貴方、良い人を見つけたわね。
お幸せに。
でも此処ではお気を付けて……
素性が分からない分、
皆開放的になってますので。
気を抜くと、持ってる行かれますわよ」
そう言い残して、彼女は人の波の中へと消えて行った。
僕が彼女が消えた方を見ながらボーッとしていると、
「キャ、御免なさい!」
と、後ろからぶつかって来た人がいた。
ふりむくと、そこには数人の女の子たちのグループが
やはり僕と同じようにスイーツを手に雑談していた。
「大丈夫ですよ。
このスイーツ美味しいですね」
そう言って僕は声を掛けた。
「今日はお一人で?」
「いえ、パートナーがいるんですけど、
私がスイーツに夢中になってる間、
他の人と交流をしに……」
「じゃあ、今日は恋人と来たんだ!」
「はい! 恋人と来ました!」
僕はちょっとだけ、先輩の事を人前で恋人と呼べることに快感を覚え始めた。
「良いわね~
私たちは女の子だけで参加してるの。
あわよくば、誰か良い人見つからないかなって思ってるんだよね」
「え? でも皆仮面つけてるからどんな人かわからいですよね?」
「そこはいいのよ。
一夜のアバンチュールね。
気に入れば続くかもだし、そうじゃ無かったらそれでお終いってね。
最高のシチュエーションじゃない!」
ひ~ 今の人たちは何て大胆な!
「ねえ、貴方の恋人はどこ?
間違って声かけないようにしなきゃ」
「ハハハ、彼は私に夢中だから
声を掛けられても他の人になびくことは無いですよ?」
「あら、ご馳走様!
良いわね、仲が良くって。
でも、そんな素敵な彼氏さん、見てみたい気もするわね。
ねえ、どの人?」
「えーっと、今どこにいるのかな~」
そう言って僕は周りを見回した。
「あ、ほら、あの会話をしているグループの中央にいる……」
「あー あの一際目立って背が高い人?」
「そうです! あの帽子に大きな羽をつけた……」
「西端な顔立ちの人ね。
仮面つけてても格好良さが滲み出てるわね。
気をつけないと、直ぐに目を付けられちゃうわよ」
「やっぱり今日ってシングルの人多いんですか?」
「勿論大半がそうよ。
こんな良い機会ないからね。
こう言ったパーティーって割とα多いからね」
「え? そうなんですか?」
「そりゃそうよ。
こんなハイソサエティの遊びを心得てるのってαでないとね」
「それじゃ貴方たちもα?」
「私と彼女はαだけど彼女はオメガよ」
「え? 彼女Ω?」
僕は女性のΩに初めて会った、
と言うか、僕とお母さんと櫛田君以外のΩに初めて出会った。
良く見て見ると、
彼女は首にチョーカーをしていた。
「何? 貴方、Ωに対して差別意識でもあるの?」
彼女の表情が急に険しくなった。
「いえ、そうではなくて……
あまりΩに会ったこと無いのでビックリして……」
その時先輩が、
「もう友達できたのか?」
と後ろからやって来た。
「あ、先輩」
僕がそう言った途端、
「あら、貴方たち先輩、後輩の間なの?
学校が一緒とか?」
と彼女が鋭く訪ねて来た。
僕はどう答えていいか分からず、
先輩の顔を伺った。
「話せるところだけ正直に話したら?
折角の仮面なんだし」
その先輩の一声に、
「何?あなた達、秘密の関係なの?」
と彼女が鋭く突っ込んできた。
僕はコクンと頷くと、
「彼女がΩなので、僕も正直に話しますが、
内密でお願いします」
と話し始めた。
「何々? あなた自分の事、
今僕って言わなかった?」
「はい、僕、実は男で、
そしてそこにいる彼女と同じようにΩです」
「え~!!!!!」
彼女たちは3人共びっくりした様にして
お互いを見回した後僕を見た。
そして先輩をマジマジと眺めた後、
「あなたはαよね?
そう言うオーラをかんじるわ。
でも、私達も男のΩは初めて!
あなた、良く化けたわね~」
と興奮した様に言った。
「僕も先ほど言いましたが、
僕がびっくりしたのは、女性のΩに初めて会ったからです。
本当にΩって少ないんですね」
「まあ、Ωって自分から言う人ってそんなにいないからね~
貴方は自分の事公表してるの?」
「いえ、とても近い友達数人のみです……」
「でしょう?
多分、知らないだけでもっといると思うよ。
でも、あなた、女性のΩに初めて会ったって……
ご両親は? Ωじゃ無いの?」
「あ…そこは両親のプライバシーもあるので、
ノーコメントでお願いします……」
「あなたも訳ありなのね~
Ωって訳あり多いよね。
彼女もそうよね。
いえないけど……
でもあなた達、αとΩのカップルって事は……」
「まだ番じゃありませんよ。
でもいつかは……な?」
先輩がそう言うと、
僕は先輩を見つめて、
「はい!」
と元気よく返事をした。
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